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今だからできるロングテールビジネスを考える|潰れそうで潰れない店

潰れそうで潰れない店の秘密とは?…今だからできるロングテールビジネスを考える_記事画像

街を歩いていると、「このお店、まだやっているの?」と思うようなお店に出合うことはありませんか?
陳列されている商品は最低限しかないし、特に繁盛している様子もないのに、ずっと昔から変わらず続いているのが不思議なお店。
そんなお店の経営の秘密を探っていきます。

そもそも潰れそうで潰れない店って?

例えば、流行を無視した洋服を置いている昔ながらの商店街の“ブティック“や創業年の古さでは群を抜く和菓子店などがあります。
金物店、文具店、自転車店もしぶとく商売を続けている店のひとつでしょう。
いずれも「単価が低い」「いきなり市場が広がることがない」といった利益を出しづらい商品を扱っている上、宣伝力のある大型店の進出や安い通販商品などに押されてしまっているはずなのに、なぜか潰れないのです。
その理由は何なのでしょうか?

独特なビジネスモデルによるロングテールとは?

潰れないということは、どこかにその商品やサービスを必要とするお客様がいて、売り上げがあるということ。
つまり、その商品やサービスがほかとは違うため、生き残っていると考えられます。
実は、こうしたやり方は「ロングテール戦略」と呼ばれる、最先端のビジネスモデルなんです。
古びた商店街のお店がなにゆえ最先端なのかを解説します。

ロングテールって何?

ロングテール戦略とは、他店と違う商品やサービスを扱うことですが、もう少し詳しく言いえば、「世の中の人気商品に頼らず、特定のニーズしかなく競争が少ないニッチな商品の販売でその小規模市場を独占する、または大量販売で売り上げを確保する方法」です。
大手ネットショッピングサイト、例えば「Amazon」や「Yahoo」も、実はヒット商品があるわけではなく、販売数は少なくても必要な人が必ずいる商品を多数扱っているから成功していると言われています。
同じようなことが、つぶれそうで潰れない店でも起きています。
ただ、こうした実店舗の状況を調べていくと、お客様は1年間でせいぜい数十人、それで全体の利益の90%以上を占めるという店が多く見られます。
つまり、それだけ“客単価”を高める方法をとっているということが言えます。

商品が高くても選ばれるのはなぜ?

客単価が高い、つまり商品が高いという状況でも、なぜ、お客様が来てくれるのでしょうか?
その背景のひとつには、競争相手が少ないことがあげられます。
例えば、東京都内のとある商店街にある帽子店は、品ぞろえが多いことで有名。
そのサービスのレベルも含め、「関東で3店しかない」と言われています。
珍しい商品も多いことから、北海道などの遠方からもマニアが訪れるということ。
その数は、計算すると1日たったの3人しかいないのですが、マニアは多少高くても商品を買ってくれます。
平均単価が約3万円の帽子が確実に売れるというのは驚きですね。

また、この店が選ばれるもうひとつの理由は、ここでしか受けられないサービス、「帽子のサイズ調整やかぶり方の指導」が受けられことがあげられます。
最近の既製品の帽子はフリーサイズが多く、「1センチ単位でサイズを合わせ、かぶり方を決める必要がある」という帽子の本来のニーズを満たしていません。
フィッティングができる知識をもった店員を置き、お客様の状況に応じて大量の在庫が必要になりますから、消費型の大型店は真似ができないのです。

有料サービスで客単価を上げる

ニッチな市場へ独自の商品を提供しているお店の例では、ほかにも福岡県で昭和30年代から続いている希少な「ボタン専門店」があります。
常時在庫は1万種類以上あり、東京からも洋裁をしているお客様が買いにくるのだとか。
数十年前の貴重なボタンもあるということで、マニア心がくすぐられます。
ボタンということで帽子ほど商品単価は高くありませんが、その利益を補っているのが、ボタンホールを作る「穴かがり」などの特殊な技術の提供。
顧客が多く通う洋裁教室などを訪問し、一般の人には難しい作業を請け負うことで、販売以上の利益を生んでいます。

先述の商店街の“ブティック”も、お茶を出すなどして長期的につき合える顧客を作る一方、ズボンなどを購入したときの裾上げや、破れた服の修理、サイズ調整などの「お直し」を請け負うことで、利益を確保しているのです。
お客様は他の専門業者に頼む手間が省けますので、ワンストップで要件が済むのなら、割高になっても満足度は高くなりますね。

自転車店の場合は、パンクなどの修理サービスがこれに当たります。
穴を塞ぐ材料と接着剤の原価はわずか数十円ですが、修理代として1000円は取れます。
最近はパンクだけでなく、需要が増えている電動アシスト自転車の定期的な点検や整備の依頼が増えてきました。
作業自体は数分で終わるのに、1台数千円の利益が上がります。

限られた顧客に対する「痒い所に手が届く」サービス

ここまでは、市場が小さいニッチな商品やサービスを提供するお店を見てきましたが、逆に市場が大きい商品を扱っているのにもかかわらず、意図的に顧客数を狭めて成功した例をみてみます。

家電量販店が台頭してきた20年前、安売りビジネスに追随することをやめ、その後、21期連続で黒字を達成した小さな電気店があります。
東京郊外にあるこの店では、約3万世帯あった顧客を約1万世帯に減らし、値引きしない代わりに十分なサービスを提供する商売に切り替えたのです。
顧客の数は、営業担当者1人当たりが、1カ月1回訪問することができる数、約400世帯を基準に考えられました。
ただ単にお客さんを減らすわけではなく、購買頻度と累計購入額のデータを基に絞り込んで上客を割り出し、動画や写真を使って、これまで以上に丁寧に接客することを可能にしたのです。

そうした接客により、家族構成や趣味などの情報を詳しく収集できれば、顧客の好みに合った新しい商品の提案ができますし、例えば、進学で一人暮らしを始める子どもにあつらえる家電一式を請け負うなどのケースもでてくるでしょう。
こうして確実に商品を買ってもらうことができれば、お客さんの数が減っても、むしろ利益率は増えます。

また、この店では「無料会員制度」を作り、「即日訪問修理」「修理中の代替品提供」「リモコンの電池交換」といった無期限の無料サービスをそろえました。
こうしたサービスを通じて訪問の機会をさらに増やし、直接家電製品の調子を確認できれば、提案のタイミングを逃すこともなくなります。
さらに、毎週末に店頭で実施するイベントに顧客のみを招待し、鹿肉やサンマを焼いて振る舞ったり、景品をプレゼントしたりしています。こうして店の“ファン”を獲得しているというわけです。

タバコ屋が潰れない理由

潰れないお店のひとつに、忘れてはならないのがタバコ屋。
それこそ、おばあちゃんがひとりで店番をしているような、基本的にお客様の姿が見えない店が多いですよね。
最近はコンビニや自動販売機で買えますし、ニーズはないように思えますが、潰れないのはどうしてでしょうか。

実は、タバコ屋が特殊なのは、「ライバルが増えないように法律で守られている」という点にあります。
タバコの販売には免許が必要であり、さらにタバコ事業法によって、後発店は既存店から規定の距離をとった場所でしか営業ができないことになっています。
繁華街であれば25メートル、市街地なら100メートル、住宅街であれば200~300メートル以上となり、もちろんコンビニにも適応されます。

また、タバコの自動販売機も、実はこうしたお店が多数管理しているのだとか。
こちらの売上は年に数千万単位に上ることもあるので、タバコにかかる高い税金を引いたとしても十分にやっていけるというわけです。

「顧客は誰か」を徹底的に考える

ロングテールビジネスについてみてきましたが、どれにも共通するのが徹底的に「顧客」を見据えているという点です。

お店を経営していると、どこかで必ず低迷期がやってきます。
これは、例えば、大手のGMS(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア…イオンやイトーヨーカドーなど、あらゆる商品を扱い小売店のこと)や、チェーンの飲食店などでも起こることです。
つまり、マーケティング力が強くない個人経営の飲食店で起こっても、不思議なことではありません。

低迷する理由はいろいろありますが、そんなときに「顧客」を振り返るのは長期的な施策であり、必ず経営を維持するミッションとなります。
低迷期こそ、顧客を振り返り、ロングテールビジネスに通じる「提供物」を考えることが重要なのです。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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