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【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第8回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか③

 【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第8回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか③

社会保険労務士で(株)リーガル・リテラシー代表取締役社長の黒部得善氏がお届けする、飲食店経営にフォーカスした労務コラム連載。

スタッフを雇用する店舗経営に欠かせない業務のひとつである労務管理。
特にコロナ禍以降の外食業界は深刻な人材不足に悩まされ、「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「そもそも応募が来ない」といった悩みのほかに、アルバイトがSNSを使ったトラブルを起こす事例もたびたび耳にするようになり、安定経営とリスク回避という二つの側面で労務管理の重要性が高まっています。

第8回は、「人手不足なのか人が辞めすぎなのか」というテーマのPart3として、雇って8週目の新人スタッフのモチベーションを維持するために必要な「やる気のもと」についてお届けします。

前回の振り返り

 前回、3か月以内に退職の理由は3回変わるという、「1・4・8週の退職理由」について、1週目と4週目の退職理由と離職防止の方法についてお話しました。今回は、マンネリを生まないために8週目にやるべき具体的な方法について話をします。

前回のコラム 第7回 人手不足なのか人が辞めすぎなのか②

みんなが知っている「モチベーション」という言葉

 みなさんモチベーションという言葉は知っていますか?おそらく多くの方が知っていることでしょう。日本語では「やる気」と訳される言葉です。
モチベーションは動機付けとも呼ばれますが、具体的に説明すると「人間の行動を喚起し、方向づけ、統合する内部的要因を動機といい、動機の状態になること、またはもたらすことをいう(人事・労務用語辞典:日本経団連出版)」という意味です。つまり店舗に置き換えると、お店の共通の目標に向かってみんなでやる気を高めて頑張ろう!とお店のスタッフ全員が高いレベルで仕事をしているような状態
です。
では、モチベーションとはもっと具体的にいうとどういうことなのでしょうか。

“やる気のもと”―モチベーションを高めるきっかけがある

 “僕のやる気スイッチどこだろう?”と少年がつぶやく学習塾のCMを見たことがある方も多いのではないでしょうか。あのCMは理論的に正しいと思います。やる気スイッチ、つまりモチベーションを高めるきっかけになる“やる気のもと”は9つあります。


Typeやる気のもと指向性傾向
A適職適職指向仕事自体が好きかどうかを重視する傾向が強い
Bプライベートマイペース指向家族や親しい人からの仕事への理解と余暇のバランスなどを重視
C自己表現アイデア指向仕事を通じて自分の考え・発想・個性が表現できることを重視
D環境適応サバイバル指向状況の変化に自己を適応させ、困難や手買いを乗り越えることがやりがい
E環境整備マニュアル・整理整頓指向仕事を進めるうえで手順が明確であることや会社の設備立地といった職場環境を大事にする
F人間関係協調指向人間関係が円滑で、協調性がある組織にいることを求める
G業務遂行バリバリやりぬく指向業務遂行を重視し、目標達成に邁進できる
H期待・評価優等生指向職場で、上司や周りから寄せられる期待、信頼、評価がやる気につながる
I職務管理スペシャリスト指向職務内容への理解度を高め、仕事を進めるうえでの主導権を持ちたがる


人それぞれ、やる気のもとは違いますし、一人一つでもありません。たくさんある人もいます。そのような人は、一つが満たされていなくても他のやる気のもとで満たされているので、メンタルが強めの人とも言えます。

8週目で安心するにはまだ早い

前回、1・4・8週の中で1週目と4週目の退職は、「不安を取り除くことができないことが原因だ」と書きました。8週目まで続いている人はそれまでの不安を取り除いてもらい、やっと落ち着いた時期。
そして、希望をもって職場を見つめはじめる時期です。その時に、「なんか同じことの繰り返しだな」「もっといろいろとアイデアを出してみたいのに」「もっとみんなと仲良くなりたい」など、仕事や店舗環境の楽しみ方を考える時期です。しかし、雇用主がそれに気づかず「やっと慣れてきたな」と安心していたら、8週目に起こりがちな「マンネリの退職」を生み出します。不安が払しょくされたあとは、いま働いているお店への“期待”を持ち始める時期が始まるのです。お店としては、新人の期待に応える時期ともいえるでしょう。

やる気のもとを見つけ出しネタにする努力

 それではお店はどのようにして期待に応えればよいのでしょうか。
それは、いろいろな仕事を通じてコミュニケーションを取ることです。まずは新人がどのような“やる気のもと”を持っているのかを観察することです。相手のことを知らずにコミュニケーションは生み出せません。
「曖昧な指示に戸惑っていないか?」「新しい仕事を振ってみると目がキラキラしている」「とにかくお客様と話をしているときは楽しそうだな」など、そのスタッフが楽しそうな瞬間を見つけましょう。きちんとじっくりと観察するというよりは、どこに楽しさを感じているかを観察することが大切です。
そして、観察して見つけた多くの可能性を“やる気のもと”にあてはめて、新人スタッフの「楽しそう」を見つけ出しましょう。“やる気のもと”の存在を知っていることが大きな武器なのです。

今回のキーワード:慣れてきたら新人の“やる気のもと”に関心をもとう

この記事の執筆

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長_黒部 得善

㈱リーガル・リテラシー 代表取締役社長

黒部 得善

1974年名古屋市生まれ。1997年明治学院大学法学部法律学科卒業。同年社会保険労務士合格。
大野実(現:全国社会保険労務士会連合会会長)事務所で修業後、㈱日立国際ビジネスにてSAP・R3のHRモジュールのコンサルを経て、2002年9月㈱リーガル・リテラシー創業。
飲食店の「長時間労働だから人が辞めるのか、人が辞めるから長時間労働なのか」を解決すべく、労務を“見える化”するためのフレームワーク手法”労務マトリクス“開発や、労務AI技術の開発をおこない、労務環境改善に奮闘。

<主な著書・論文>
「お店のバイトはなぜ1週間で辞めるのか」(日経BP社)
「就業規則がお店を滅ぼす」(日経BP社)
「勤怠データのデータマイニングを通じた労働集約性の高い飲食業の労働環境の改善」(日本マネジメント学会誌経営教育研究vol.25no.1)

<公式サイト>
(株)リーガル・リテラシー

<労務AI 公式サイト>
労務AI

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