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飲食店などの駐車場で事故、お店側に賠償責任は発生するのか?

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日本損害保険協会の調査によると、全国の交通事故のうち、実に3割が駐車場内で起きているそうです。一般道に比べてスピードを出さないため、軽い接触事故などが大半を占めますが、人身事故による死亡事故が発生する可能性も十分にあり得ます。AT車が普及したこともあり、駐車時のアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故も増加。自身の経営する店舗の駐車場で、事故が発生する可能性は十分に考えられます。その際、店舗側に責任は発生するのでしょうか。

飲食店の駐車場とはどういう場所か?

飲食店を経営する際は、駐車場を確保するかどうか考える必要があります。飲食店の場所が駅から近いなど、アクセスが良いのであれば、駐車場を確保する必要はないと言えますが、駅から離れている、幹線道路などの交通量の多い道路沿いに面しているといった場合には、駐車場が必須と言えるでしょう。
駐車場が必須の飲食店は、駐車場の有無が売り上げに直結しているとも言えます。しかし、駐車場があればあるほどいいというわけではなく、無駄に駐車場が広くても店舗の広さが狭くなってしまうほか、無断使用などのトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
アクセスがそこまで悪くない飲食店の場合には、客席数の5分の1程度の駐車場の台数を確保しておけば十分な場合が多いです。アクセスが悪く車を使っての来店が基本的である場合には、客席数の2分の1程度の駐車場の台数を確保しておく必要があると言えます。この台数はあくまでもお客さんを対象とした駐車場の数です。従業員を多く抱える場合は、従業員用の駐車場も確保する必要があるため、よく考えた上で駐車場を設置するようにしましょう。

駐車場は事故が起きやすい場所

駐車場の大きさは店舗の規模や土地の広さによってさまざまですが、店舗によっては駐車エリアや通路が異常に狭く、十分なスペースが確保できていない場合もあります。駐車場内では通路が交差する場所も多く、出会い頭の接触事故が発生しやすいです。また、駐車している自動車の影など、死角になりやすい場所も多く、飛び出した歩行者と接触する人身事故も起こっています。駐車場は普通の道路に比べ、注意すべきポイントが多いため、低速で走行していても危険が至る所にあります。
空いている駐車スペースを探すなど、別のことに集中してしまい事故が起きるということもあるのです。

店舗側に賠償責任は発生しない

屋内外に関わらず、基本的に駐車場での事故に対して、店舗側に責任が発生することはありません。駐車場は厳密に言えば道路ではありませんが、道路に隣接した不特定多数が出入りする場所。そのため駐車場は法律上、「道路」とみなされ、道路交通法が適用されることになるのです。駐車場での事故は、道路で事故を起こした場合と同じく、当事者同士や事故を起こした当人に過失や責任が発生します。そのため、店舗側に事故の賠償責任は発生せず、警察を交えたのち、当事者どうしで解決してもらうことになります。

事故によって店舗の設備が壊れた場合

ひとつ注意すべきなのは、お客様が起こした物損事故によって店舗の設備が壊れてしまった場合です。この際、道路での事故と同じように警察を呼んで事故処理をしなければ保険が適用されません。事故の大小に関わらず駐車場内での物損事故の場合は、警察を必ず呼ぶようにしましょう。

店舗側に責任が発生するケース

基本的に駐車場での事故に責任は発生しませんが、もちろん例外があります。駐車場内の樹木が倒れていた、看板など店舗の設置物が落下したといったような、駐車場を管理する側に落ち度がある場合です。駐車場の所有者は、事故を起こす可能性のあるものへの対策を講じる必要があります。
また、駐車場の無断使用の防止や休業日における駐車場の有効利用の観点から、無料駐車場ではなく有料駐車場に切り替える飲食店もあります。有料駐車場だった場合には、駐車場の利用者と飲食店との間で賃貸借契約が成立し、飲食店が管理責任を怠ったという理由から責任追及される可能性があります。これらのトラブルを防ぐためにも、防犯カメラの設置や警備員の配置などの対策が重要になってくると言えるでしょう。

駐車場での事故によるクレームの防止策

いくら責任がないとはいえ、頻繁に駐車場で事故が起こるのは避けたいもの。お客様の安全のためにも、可能な範囲で事故防止への取り組みを行いましょう。まず、駐車場内に店舗を利用する目的以外で、不特定多数の車両や通行人がむやみに出入りできないようにします。近所の人が駐車場を抜け道として利用しているなら、入口以外にフェンスを設置することで無用な人の立ち入りや人身事故の予防になります。また、お客様が夜間も駐車場を利用されるなら、暗くなる場所に常夜灯を設置することで見通しもよくなります。
駐車場内には使用ルールやお店側からのお願いなどと併せて、「駐車場内での事故に対する責任は負いません」と明記した案内板をわかりやすく設置しておくことが重要です。しかし、これらを明記していても、店舗側に責任があると判断された場合には責任を負わなければなりません。例えば、駐車場の管理や駐車場に設置した工作物(コンクリート、ブロック塀、自動販売機等)に問題があって、それが原因で事故が発生した場合は、駐車場設置者として、または駐車場管理者として責任を問われることになるので注意しましょう。

どうしても賠償に応じる必要がある場合

さまざまな対策を講じたとしても、駐車場で事故が起きてしまうことは十分に考えられます。そのなかには店舗側に責任があり、お客様からの請求に応じなければならない場合もあるかもしれません。そのような場合は誠意をもって対応し、解決に向けて努力しましょう。賠償の際には、何らかの形で「この件に関する賠償は完了し、以後は請求をしない」という念書をもらうようにしましょう。これは、あとになって事実関係が分からなくなった事に対するクレームを防ぐ意味があります。

駐車場を設置する際は飲酒運転にも注意

飲酒運転が原因による事故が発生するケースが増えてきたこともあり、現在は飲酒運転に対する厳罰化がなされています。今まではドライバー本人の罪であったものの、飲酒運転を誘発した原因を作った人たちも責任追及されるようになりました。関連する法令は以下の通りです。
【道路交通法第65条】
1項:何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない
3項:何人も、第一項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない
この3項の規定は、飲食店の経営者や店を任されている責任者などを想定しているもので、単に指示を受けた従業員などは対象外と考えるのが一般的です。
飲酒を提供した運転手が酒酔い運転の場合には三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金、酒気帯び運転の場合には二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金となります。
実際に酒類を提供した飲食店に対して懲役2年(執行猶予5年)が言い渡されたケースや免許取消(欠格期間3年)の行政処分が言い渡されたケースもあります。「車で来ているかどうかを知らなかった」と言っても、お酒を提供する立場としての意識が低いと判断されてしまうと、このように罰則が適用されることになります。飲食店に駐車場を設置する際には駐車場での事故に注意するだけでなく、お客さんの飲酒運転にも注意しましょう。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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