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【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第23回 飲食店のパワハラについて考える③パワハラとの向き合い方とセクハラ

【連載】飲食店に届けたい労務コラム|第23回 飲食店のパワハラについて考える③パワハラとの向き合い方とセクハラ

社会保険労務士で(株)リーガル・リテラシー代表取締役社長の黒部得善氏がお届けする、飲食店経営にフォーカスした労務コラム連載。

スタッフを雇用する店舗経営に欠かせない業務のひとつである労務管理。特にコロナ禍以降の外食業界は深刻な人材不足に悩まされ、「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「そもそも応募が来ない」といった悩みのほかに、アルバイトがSNSを使ったトラブルを起こす事例もたびたび耳にするようになり、安定経営とリスク回避という二つの側面で労務管理の重要性が高まっています。

第23回は、『飲食店のパワハラについて考える』シリーズの第3弾。「パワハラとの向き合い方とセクハラ」をテーマにお届けします。

「それってハラスメントじゃないですか?」と言われたら

前回・前々回と、パワハラの加害者にならないために、

・罪を犯さないこと
・無意識に当事者にならないようにすること
・性格由来で当事者にならないよう気を付けること
・まじめすぎるがゆえに当事者にならないようにすること

という話をしました。

今回は、「それってパワハラじゃないですか?」と言われて身動きが取れない時の向き合い方について取り上げます。
前々回にも書きましたが、いわゆるハラハラ――ハラスメントハラスメント。私はパワハラと言われることが問題なのではなく、正しい向き合い方を知ることが大切だと考えています。

飲食店は指揮命令の頻度がとても多い職場

飲食店はとても指揮命令の頻度が多い職場です。だから、相手が指示内容に納得できない中、「とりあえず早くやって」と強引に進めようとしてしまい、「納得できないことを押し付けるのはパワハラですよ」と言われるシーンが起こってしまいがちです。これって、本当にパワハラですか?連載の中で何度も伝えてきたように、労務とは、「会社が指揮命令する権利を買って対価として給与を支払う」という契約です。納得できないから仕事しなくてもよい、という契約はないのです。

パワハラ防止法ってなんだ?

2020年にパワハラ防止法ができた、と報道されました。しかし実際にはそんな名前の法律はありません。2020年6月1日に「労働施策総合推進法」が改正され、パワーハラスメントを防止することが企業に義務付けられただけです。
ではその中でパワハラをどのように定義しているのでしょうか。法律施行にあたっての指針の中で「優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。これをそのまんま読んでもよくわからないので3つに分解して考えてみましょう。

1. 優越的な関係を背景とした言動であって
2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
3. 労働者の就業環境が害されるもの

の3つに分解できます。

まず①の優越的な関係とは、上司から部下、だけではなく、「部下としての地位を優越的に使う」ことも含まれます。ハラハラは部下としての地位を利用した言動です。
そして②が一番のポイントとなることですが「業務上必要かつ相当範囲を超えてはダメ」ということです。業務上で必要である範囲を超えた場合にダメとされています。つまり、必要な範囲内であればパワハラには該当しないのです。もちろん、言い方も大切ですが。
③は職場環境が悪くなるような方法を問題としています。
まとめると、業務上必要なことであり、前回・前々回でお話したような一方的な進め方をしないかぎり最低限大丈夫です。さらに言い方を相手にあわせてアレンジできれば完璧です。

セクハラも理解しておく

飲食店は人間関係密度が濃い職場です。リモートワークなどという概念がない、お店にいること自体が仕事だからこそ、人との距離も近いため、最後にセクハラにも触れておきます。
セクハラについても、たびたび軽い言葉で扱われていますがそもそもセクハラでなく犯罪です。

罪名条文解説
強姦罪177条13歳以上の女子に対する暴行・脅迫による姦淫および13歳未満の女子に対する姦淫。
強制わいせつ罪176条13歳以上の男女に対する暴行・脅迫によるわいせつな行為および13歳未満の男女に対するわいせつな行為。
準強制わいせつ罪178条人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、または心神喪失・抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者に成立する罪。
わいせつな行為とはキスをする行為も該当します。
公然わいせつ罪174条不特定多数の人の目に触れるような場所で公然とわいせつな行為をする罪。
つきまとい行為等の禁止東京都迷惑防止条例
5条の2
特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足させる目的での次に掲げる行為を禁止する。
・つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り等
・著しく粗野または乱暴な言動をすること。
・連続して無言電話を掛けたり、拒まれたにも関わらず連続して電話、ファックス、メール送信をすること。
・汚物、動物の死体等著しく不快又は嫌悪の情を催させるようなものを送付すること。
・名誉を害すること
・性的羞恥心を害する文書等を送付すること。

パワハラ対策と同じく当たり前ですが、まず犯罪はしないことです。
それをふまえて、飲食店においてセクハラをどのよう対応するべきか、というときに私は以下の3つの判断軸を使います。
1. その行為、お店の外でやっても捕まらない行為ですか?
2. その行為や言動、自分の配偶者や子供、兄弟姉妹などの身内がされたらキレませんか?
3. その行為や言動、お店のすべてのスタッフにきちんと説明がつきますか?

飲食店は多くの人が一つの場所で働く職場です。人間関係も濃い職場です。だからこそ、同じ屋根の下感覚が生まれ、慣れから行き過ぎた行為や言動が起こりやすいのです。その行為や言動を客観的に見た際に正しいのか、業務上必要なのか、きちんと考えることでセクハラをなくしていくことが大切です。

今回のキーワード:業務上の必要性を軸に判断する

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