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【小阪裕司コラム】第199回:声のかけ方を変えただけでも

【小阪裕司コラム】第199回:声のかけ方を変えただけでも

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

お客様目線での訊き方に変更

 前回名簿作りのための日本料理店の工夫をお伝えしたが、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるサービス業の方から、名簿作りの別の工夫をご報告いただいた。続いてご紹介しよう。
 この店でも既存客とのコミュニケーションを重視しており、名簿作りには一年前から取り組んでいた。そうしてすでに四〇〇名以上の名簿が出来上がりニューズレター(以下、NL)を送っていたのだが、ここ数ヶ月はペースダウンしていた。というのも、これまでは「名簿にご記入いただけましたか?」と訊ねて記入をお願いしていたのだが、名簿作りが進んできた現在では、来店客のなかに記入済みの方とそうでない方がいて、判別がつかなくなってきたからだ。今までのやり方では記入済みのお客さんに再度訊いてしまう恐れもあり、店頭のスタッフにとっては、それがペースダウンの一因にもなっていた。
 そこで店主は考えた。名簿に記入済みで既にNLを送っている方とそうでない方がいるのであれば、「名簿にご記入頂けましたか?」と訊くのではなく、「お手紙(NL)は届いていますか?」と訊いてみたらどうだろう。そうすれば返答で記入済みかどうかが分かるのではないかと。
 そこで実際にお客さんとの会話の中でさりげなく「手紙届いてます?」「読んでいただいてますか?」と訊ねてみると、思った通り「いつも楽しく読ませていただいてますよ」か「えっ?何ですかそれ?」の二種類の返事しか返ってこない。そこで、未記入の方にはこれまで通り記入をお願いすることにした。こうした結果、再びペース良く名簿作りが進んだのである。

少しの気づきと工夫が大きな商売の資産を生む

 店頭での声かけを少し変えるだけで、お客さんにもスタッフにも無理のない状況が作れる。また店主はスタッフが訊ねることを忘れないようにこのセリフを紙に書いてレジ横に貼っておいたのだが、こうしたことも効を奏している。前回、前々回の事例もそうだが、こうしたちょっとした気づきと工夫が、大きな商売の資産を生むのである。
 ところで、今回ご紹介した事例は20年ほど前にいただいたものだ。「ああ、それでNLね。今なら、SNSかLINEでいいよね」という意見もあると思うが、実際には逆で、近年寄せられる会員の現場報告を見ると、手紙やハガキには、20年前よりずっと熱い喜びの反応が寄せられるようだ。もちろん、どんな手紙・ハガキを送るかによるが、今この時代に改めて捉え直したい点である。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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