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【小阪裕司コラム】第197回:人を惹きつける看板の「一言」とは

【小阪裕司コラム】第197回:人を惹きつける看板の「一言」とは

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

手書きのA看板を集客に活用

 今回は、誰もが簡単にできる店頭の看板活用のお話。そこに書く言葉をあるものに変えただけで、次々とお客さんが来店したというものだ。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある居酒屋からのご報告。
 同店では、店頭にA型看板を設置している。ちなみにA型看板とは、折りたたみ式で、開くとAの形になる、店先でよく見る立て看板のこと。同店のA型看板はホワイトボードになっており、メッセージが書き込める。店主はここに毎日異なるメッセージを書いているが、なかなか骨が折れるとのこと。ではなぜそんなことをやるかといえば、道行く人に同店の存在に気づいてもらい、ふらっと立ち寄ってほしいからだ。
 これまで書かれたメッセージは、「熱中症にお気をつけください」といったご挨拶的なものから、「花火と同じくらい美しくてうまいビール注いでます」「夏野菜の揚げ浸し、好評だったのでまた作りました!ビールや日本酒と一緒にどうぞ」といった料理などのアピールまで多種多様。読んでもらいたいのは店先を通る通行人ゆえ、数秒で読める文章を毎日ひねり出しているとのこと。その甲斐あって、多くの方がA型看板をチラ見していくのだそうだ。

人を惹きつける言葉が生まれた

 そんなある日のこと。一人で歩いていた若い女性が、この看板をチラ見して通り過ぎていった。そして数十秒後に戻ってきて店内に入ってきた。お客さんとしてだ。そのとき看板に書いていた言葉はこうだ。「迷ったら餃子を食べよう。ビールもね」。
 同店は餃子居酒屋。文字通り餃子が売りだ。その女性は明らかに一旦通り過ぎた後、戻ってきて入店した。何を食べようか迷っていて、この看板の一言に押されて入店したのか本人に確認するタイミングがなく真相は不明。そこで店主は検証してみることにした。
 言葉はより短くして「迷ったら餃子にしよう!」。設置後、検証には1週間くらいかかるだろうと思っていたが、結果は初日に出た。店内に入ってきたのは一人客の男性。こちらから聞くまでもなく、「一旦通り過ぎたんだけど、あの看板みたら戻ってきちゃいましたよ」と苦笑いしながら言ったそうだ。
 こうして今、この一言は同店のポスターにも使われ、店のキャッチフレーズとなった。「毎日書き換えることは大変ではありますが、何気なく書いたフレーズが人の行動を変えると思うと面白くて止められませんね」とは店主の談だが、これこそがここでの秘訣。人を惹きつける「一言」とはこうして生み出されるものなのである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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