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【小阪裕司コラム】第193回:お客さんが真に買っているものとは②

【小阪裕司コラム】第193回:お客さんが真に買っているものとは②

全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

4人家族なのに注文は2つだけ?

 今回は、前回の続き。現代の商売におけるとても重要な本質に関わること、「お客さんが真に買っているものは何か?」についてだ。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、牡蠣養殖業を営む会社でのこと。
 前回、同社が今年本格的に牡蠣オーナー制度の募集を行ったとき、「最高で100個以上の収穫も狙えます!」と訴求したが、それが逆効果だった話をした。同社三代目は、その反応に驚いた。なぜならお客さんらは、「牡蠣オーナー制度には参加したかった」、しかし「牡蠣はそんなにいらない」と言ったのだ。普段牡蠣の収穫量の増大を図り、御取引先との商談においては常に価格が的となる(つまり、相手はできるだけ安い価格で多くの量を得ようとする)ことが日常になっている自分たちにとっては思いもよらないこと。ではお客さんらは何に魅力を感じて「牡蠣オーナー制度に参加したい」と思ったのか。
 そして本年度の牡蠣オーナー制度が始まると、さらに驚くことがあった。家族4人でファミリーコースに入会したお客さん。入会前から、ギフトでもよく牡蠣を購入してくれていた方だ。そのご家族が1回目のカルチをイカダに吊り下げるイベントに来たときのこと、家族揃って大いに楽しみ、「楽しかったです!」「また次回も楽しみです!」と盛り上がっていたそのご家族のお父さんが「今ここで牡蠣を食べたいんですが、買えますか?」と尋ねるので、三代目は「もちろんです。お幾つですか?」と返すと、返って来た言葉は「じゃあ、2つ」。家族4人で来ているのに2つ?と疑問に思い訊くと、衝撃的な言葉が返って来た。「僕以外、家族は牡蠣を食べられないんです」。これを聞いて三代目は考え込んだ。ではなぜ彼らは家族で牡蠣オーナー制度に参加しているのか。

この家族が真に買っているもの

 彼らが真に買っているものは何だろうか?あなたも、このエピソードを題材に考えてみてほしい。私は、97年の著書(第一作目)に、今後日本(および消費先進国)ではこういう消費が主役になっていくと説いたが、30年近く経ち今まさにそうなった。そして、これからもよりそうなっていくだろう。牡蠣を食べられない人が買う牡蠣オーナー制度。そこで「お客さんが真に買っているもの」のために、サービスの送り手は何をすればいいだろう?何がお客さんにとっての価値を上げていくだろう?三代目の会社では、早速皆でこのアイデアを出し合っているとのことである。

この記事の執筆

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者_小阪裕司

博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者

小阪裕司

1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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