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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
適正価格なのにコスパが悪い?
先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある沖縄料理店から、最近リニューアルしたメニューに関するご報告をいただいた。それを高く評価してくれるお客さんと、「コスパが悪い」と断じてしまうお客さんとがいらっしゃるという。
同店では最近、定番メニューであるゴーヤーチャンプルーをリニューアルした。使う食材を変えたのだ。実は、多くの店のゴーヤーチャンプルーには沖縄県産でなく、海外産食材が使われている。なぜかといえば、価格の問題。沖縄県産の半額以下なのだ。しかし元々沖縄が好きで始めたこの店。店主は今回のコロナ禍で改めて沖縄食材の素晴らしさを再認識したと言い、ならば定番メニューのゴーヤーチャンプルーこそ、こだわりの沖縄県産食材を使い、「究極のゴーヤーチャンプルー」を作り、提供したい。そこでリニューアルに踏み切った。
食材を吟味し、究極のメニューは完成。メニューにはゴーヤーをはじめ、卵、アグー豚、島豆腐など、すべてどこのどういうものか、由来を書いた。そうなると、問題は価格だ。これまでと同じ価格では原価が高くなり過ぎる。これまでワクワク系を学び活用し、メニューを見直し、ときに開発し、そこに適正価格をつけることを行い、顧客に支持されながら客単価を上げてきた店主、今回も適正価格として「1500円」の値をつけた。
するとある日来店客から、ネットに次のような感想が寄せられた。「コロナ前はよく利用していたこの店に久しぶりに行くと、コロナで厳しいせいか、価格が激変。コスパが悪くなったので、残念ながらもう行かないでしょう」。
価値をどう認識するかで、「適正」と感じる価格は変わる
店主は考えた。コロナ後、価格を大きく変えたメニューは1つだけ。それはこの究極のゴーヤーチャンプルーだ。実際このメニューも、リニューアル後も好評でコスパは気にしていなかったが、メニューに「自分たちがなぜこのようなゴーヤーチャンプルーを出すことにしたのか」は書いていない。そういう作り手の主張は敬遠される原因になるかもとも思ったが、この出来事以降、積極的に伝えることにしている。
このメニューはコスパが良いのか悪いのか。その判断の前に考えてほしい重要なことの1つは、価値を伝えることの大切さだ。実は人というものは価値をどう認識するかで、「適正」と感じる価格は変わる。価格そのものよりも、価値の伝え方と内容が問題なのだ。そこでは見落としやすいことがある。この続きは次回に。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。- NEW最新記事
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