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【小阪裕司コラム】第3回:緊急事態宣言下で前年比150%!大切なのは顧客とのつながり

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全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

予約の取れないレストランが緊急事態宣言で予約ゼロに…

 今日は一昨年、最初に緊急事態宣言が発出された頃に、あるレストラン店主からいただいた報告を題材に商売について考えよう。
 当時要請に応え、午後8時までの営業状態だったにも関わらず、前年比150%の売上を作り出した事例だ。果たして彼は何をやったのか。
 私が主宰しているワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践するお店、会社、ビジネスパーソンの会)には一昨年から、コロナ情勢下での各店の成果報告が続々寄せられており、同店からのものもそのひとつだが、この店は、おまかせコース料理のみの完全予約制のレストラン。そもそもディナーが勝負の店だ。「予約が取れない店」として名をはせていたのだが、緊急事態宣言以降キャンセルが続々と入り、先々の予約がゼロになった。そのときの心境は、そのレポートの冒頭部分にこうある。「金融公庫に融資の申請などしていたものの、『ここまで減ると何ヶ月持ち堪えられるか?』と焦りました」。

前年比売上150%増の原動力は超高級弁当

 しかし彼は動いた。緊急事態宣言中、当会がほぼ毎日開いていたオンラインミーティングに参加し、同じ実践会員の同業者とも意見交換しながら「『落ち込んでてもしょうがない、やれることをやろう』と前向きな気持ちに」。
 そして、10日間ほどじっくり商品を練って、1個3千円、8千円という超高級弁当を開発。主に既存客に向けて販売を開始したところ、この売れ行きが爆発、前年比150%の売上の原動力となったのである。

売上増の本質は高級弁当ではなく、“顧客とのつながり”を強化したこと

 ところで、この成果のポイントは、高級弁当を作り、売ったことだろうか? あの頃、巷の飲食店では、テイクアウトやデリバリーなどで急変した状況をしのいでいたところが多かったが、それさえすれば、売上が前年を上回り、5割も伸びただろうか? この成果の源は、同店が10日間かけてじっくり練った商品(しかも高額)に、「待ってました!」とばかり反応してくれる“顧客”がいたことだ。
 ワクワク系では「絆顧客」「ファン顧客」と呼ぶが、同店はそれまで地道にそういう顧客を育ててきた。私は一昨年3月3日の緊急ウェビナー以降、事あるごとに、「顧客とのつながりを強化せよ!」と発信し続けていたが、彼は単に高級弁当を開発し発売しただけでなく、発売に至るまでの期間も、SNSや動画などを通じ顧客とのつながりを強化し、開発過程も共有していた。こういうことがすべて生きて、あの爆発的な結果となったのである。
 店主は言う。あの結果は、顧客が何を求めているか、あの情勢下と自社のリソースでどんな形ならそれを提供できるかを考えたゆえだと。またあのとき、「助けたいから」購入してくださった方もたくさんいて、ありがたい限りと思ったと。
 どんなときも、商いに収益をもたらしてくれるのは顧客、そしてそのつながりなのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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