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飲食店におけるカーボンニュートラルの取り組みとは?どんな事例がある?

飲食店におけるカーボンニュートラルの取り組みとは?どんな事例がある?

地球温暖化や気候変動問題に関連する言葉として、近年よく耳にするようになった「カーボンニュートラル」という言葉。自動車業界で盛んに使われているイメージが強いかもしれませんが、実は、カーボンニュートラルは飲食業界にとっても重要なキーワードです。
地球温暖化を食い止め、私たちの未来と地球環境を守るために、どんなことが必要とされているのでしょうか?この記事では、飲食店におけるカーボンニュートラルへの取り組みを中心に、詳しく解説します。

カーボンニュートラルとは?

カーボンは「炭素」、ニュートラルは「中立」を意味し、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。すなわち、温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いた全体の排出量を実質的にゼロにすることです。

2015年12月、フランス・パリで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)において、「パリ協定」が採択されました。
パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みで、世界共通の長期目標として以下を掲げました。

・世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする。
・21世紀後半に、カーボンニュートラルの達成を目指す。

日本では2020年10月、菅内閣総理大臣(当時)が「2050年までにカーボンニュートラルを達成し、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。
世界でも、現在120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」の目標を掲げ、取り組みを進めています。これらの国と地域が世界全体の二酸化炭素排出量に占める割合は約37%。2060年までにカーボンニュートラルを実現すると表明した中国も含めると、全世界の約3分の2に及ぶ計算です。

カーボンニュートラルの実現が必要な理由

そもそも、二酸化炭素やメタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスといった温室効果ガスは、地球の気候を安定化させるために必要不可欠なものです。しかし、大気中の温室効果ガスの濃度が高まりすぎると、気候のバランスが崩れ、地球の表面気温が過度に上昇してしまいます。これが地球温暖化の大きな要因の一つです。
地球温暖化の影響を受けて世界中で自然災害が発生しており、その頻度も被害も増加しています。豪雨や猛暑などの自然災害は、自然の生態系や産業・経済活動にも影響を及ぼし、私たちの生存基盤を揺るがしかねません。
私たちの日々の生活を守り、ひいては地球環境を守るために、カーボンニュートラルの実現が不可欠なのです。

温室効果ガスの多くは、私たちの日常生活から排出されており、国や自治体、企業だけの問題ではありません。未来の世代も安心して暮らせる持続可能な社会を作るため、カーボンニュートラルの達成に向けて、一人ひとりが主体的に取り組む必要があります。

飲食店におけるカーボンニュートラルとは?

EUの共同研究センターが主導した調査によると、世界で排出される温室効果ガスの3分の1は「食」に関係していると言われています。一口に食といっても、食料の生産から加工、流通、調理、消費に至るまで幅広いですが、飲食店が取り組めることとして以下が挙げられます。

地産地消に取り組む

その地域で生産された地元食材や地域内で加工された食品を使用すること(=地産地消)は、輸送時の二酸化酸素の排出量削減につながります。さらに、食材を自家栽培してしまえば、フードマイレージ(食料の輸送距離)はゼロに近くなります。
また、旬の食材を新鮮なうちに提供することは、消費者にとって嬉しいのはもちろん、食材の保存に使われるエネルギーの削減にも役立ちます。食の地産地消・旬産旬消に取り組むことは、消費者、飲食店、地球にとってプラスになる「三方よし」な行動と言えるのです。

環境に配慮した食材の使用

オーガニック食品など、環境に配慮した食材を使用することは、生態系の保全および温室効果ガスの削減につながります。
化学肥料や農薬を使った農業を行うと、地中に存在するカビや細菌などの微生物、ミミズなどの生物が死んでしまいます。その結果として土壌破壊が進み、農作物も必要な養分を得られなくなり、十分育たなくなってしまうのです。
有機肥料を使ったオーガニック食品を選ぶことは、自身の健康のためだけでなく、土壌を長期的に保全し、健全な食物連鎖を守ることにつながります。

また、サステナブル・シーフードの認証を受けた食材など、持続可能な食材を使用することも有効です。
サステナブル・シーフードとは、持続可能な漁業・水産業で獲られた魚介類、またはそれらを原料に加工された食べ物のこと。サステナブル・シーフードには「天然」と「養殖」の2種類があり、どちらも乱獲や海洋汚染による海の生態系破壊を引き起こさないよう配慮されています。
一見、地球温暖化とは関係がないように思えるかもしれませんが、海洋は、大気中の熱や二酸化炭素を吸収する大きな役目を担っています。海の環境を守り、そのための取り組みに賛同することは、気候変動や地球温暖化の抑制に結びつくのです。

食品廃棄量の削減

飲食店での食べ残しを減らすことは、ゴミの量や温室効果ガスの削減につながります。
環境省の公表資料によると、日本の食品ロスは2018年度の推計で約600万トン。そのうちの半分以上にあたる324万トンは食品関連事業者から、残る276万トンは家庭から発生しています。食べ残しを減らし、食品廃棄量を削減するために、以下のような取り組みが挙げられます。

・食べきれる量を注文してもらう工夫を行う(白ご飯の量を選べるようにする、料理のボリューム感をメニューに明記するなど)
・食べきれなかった料理をテイクアウトできる体制を整える
・野菜などの皮を出汁に使ったり、生ゴミをコンポスト(堆肥)化する

ガスや電力の使用量削減

熱伝導の良い調理器具に切り替えて厨房でのガス使用量を削減したり、省エネ効果の高いエアコンやLED照明の導入で電力使用量を抑えたり。そういった店舗内の設備を見直すことも、カーボンニュートラルの実現につながる取り組みの一つです。
設備投資の余裕があれば、太陽光や風力、バイオマスといった再生可能エネルギーを導入する手もあります。

カーボンオフセットという選択肢も

カーボンニュートラルに向けた取り組みへの参画が難しい場合には、「カーボンオフセット」という選択肢もあります。
カーボンは「炭素」、オフセットは「埋め合わせる」を意味します。他者が実現した温室効果ガスの排出削減量・吸収量をクレジットという形で購入し、自身の排出量を相殺する仕組みです。また、自らが植林などの環境保護活動に参加・投資をすることで、クレジットを得る方法もあります。
カーボンクレジットを売買している自治体や企業は数多く存在し、クレジット付きの商品・サービスが販売されるなど、個人でも参画できるようになってきています。

個人でも企業でも気軽に取り組める地球温暖化対策の一つとして期待されているカーボンオフセット。実際に温室効果ガスを削減しているわけではないため、信頼性などに課題はあるものの、今後さらに重要視される取り組みであると言えます。
未来の世代と地球のために、まずは一歩、私たちができることからアクションを起こす姿勢が求められています。

ライター:上田はるか(フリーライター)

大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。

この記事の監修

株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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