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個人店の「キャラクターパン」は著作権法違反になるのか?

個人店の「キャラクターパン」は著作権侵害になるのか?_記事画像

テレビアニメや漫画などでお馴染みのキャラクターをパンで再現した「キャラクターパン」。

子どもが喜ぶパンとして、親御さんが手づくりの自信作をSNSに投稿された写真を見かけた方もいるかもしれません。
なかには完成度の高いモノから、愛嬌たっぷりで微笑ましい出来栄えのキャラクターパンを販売しているベーカリーショップも。

しかし、実際に製造・販売となると話はまた別。ここで注意しなければいけないのが、キャラクターの「著作権」です。

キャラクターパンの販売は著作権侵害に該当する可能性はあるのか?

アニメや漫画など公表されたキャラクターには著作権があります。
そもそも無許可でキャラクターの名前を使うことは著作権法違反となり、たとえ名前を使用していなくても、明らかにそのキャラクターとわかるものであれば、著作権法上の複製権の侵害にあたります。
本物そっくりのぬいぐるみを勝手につくり販売したら違法、というのがわかりやすい例ですが、それはパンであっても同じです。

キャラクターを模倣したパンは複製に該当し、著作権の侵害行為と判断される恐れがあります。

著作権法違反の厳罰

著作権に侵害したと判断されると、重い刑事罰が課せられます。
著作権侵害に対する刑罰は、10年以下の懲役、又は1,000万円以下の罰金です。
また、著作者人格権の侵害などについては、5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金などが定められています。

これは窃盗罪や詐欺罪と同じくらい厳しい罰です。

街のお店のキャラクター商品は問題あり?なし?

このように著作権侵害には厳しい罰則があるものです。

そもそもキャラクターなどの著作物を使う場合は、まず著作権者が誰なのか調べて、許可を取らなければいけません。
たとえば、テレビアニメのキャラクターであれば、放映されているテレビ局だったり作者、出版化されていればその版元に問い合わせるなど、著作権者を捜す方法はさまざまです。
その際、注意しなければならないのが、必ずしも著作者=著作権者ではないということ。
著作者が著作権を組織や人に譲り渡している場合もあるのです。
さらに、著作権者を見つけるのが困難な場合に相談に応じてくれる、公益社団法人著作権情報センター(CRI)という組織もあります。

そもそも、キャラクターパンを製造・販売している規模の小さなベーカリーショップでは、著作権者を捜し、許可を取っているのでしょうか。

おそらく、ほとんどが「NO」ではないかと考えられています。
では、なぜキャラクターパンを販売できているのか。
著作権侵害は、原則として親告罪(被害者が告訴しなければ、起訴することができない罪のこと)なのです。
仮に個人経営のベーカリーショップが、人気キャラクターを模倣したパンを製造・販売していても、著作権者が告訴しない限り問題にはならないのです。

個々の告訴についてもそうですが、無許可のキャラクターパンの取締りを全国的に強化するといった話は聞いたことがありません。
著作権者側からすると、確かに著作権の侵害行為ではあっても、たくさんの方が喜んでくれて、そのキャラクターを好きになってくれるのであれば、ある意味宣伝効果と捉えるかもしれません。
それに個人店を訴えたとしても得られる利益はごくわずか。
逆に、弱い者いじめのように思われたり、印象を悪くしてしまう恐れがあります。
このような理由もあってか、ベーカリーショップのキャラクターパンのほとんどはお咎めなし。
著作権者側が黙認しているのが実情といえるでしょう。

※キャラクター商品の製造・販売を推奨する記事ではありません。
キャラクター商品の製造・販売は個人店でも著作権の侵害にあたる可能性があります。

度が過ぎれば訴えられる可能性もある(書類送検された実例)

一方で、無許可にも関わらす大々的に販売してキャラクターパンで多額の利益を得ているなど、度が過ぎる場合は訴えられる可能性もあります。
書類送検された実例をご紹介しましょう。

2020年、人気アニメ「それいけ!アンパンマン」のキャラクターをかたどった人形焼を無断で販売していたとして、岐阜県の男性露天商ら男女4人が、著作権法違反の疑いなどで書類送検されました。
この4人は、以前から祭り会場などでアンパンマンの人形焼きを販売していましたが、新型コロナウイルスの影響で仕事が激減。
そこでインスタグラムで宣伝しながら移動販売をするようになりましたが、その宣伝投稿をアニメ制作会社が見つけたことで発覚しました。

報道によると、4人は、販売日時をSNSで告知して販売する形で、約3カ月間で約360万円を売り上げていたそうです。
また、移動販売のトラックにアンパンマンが描かれた広告を出し、アンパンマンが描かれた包装袋に人形焼を入れて販売していたとか。
これらについても、自分たちで模倣・製作したものであれば著作権法の複製権の侵害となり、人形焼をこの包装袋に入れて販売した行為については著作権法の譲渡権の侵害にあたるとのことです。

つまり、さまざまな著作権侵害行為を行っていたというわけですが、人形焼きだけでなく、商売ツールとしてアンパンマンを用いていた岐阜の例は悪質なケースと言わざるを得ません。

著作権に対する意識は年々高まっています。2018年12月30日からTPP(環太平洋経済パートナシップ協定)関連法案に含まれる形で著作権は親告罪から非親告罪化となりました。

これは主に映画や小説、漫画などの海賊版廃止を目的としたものですが、いずれにしても、著作権侵害に向けられている目が、厳しくなりつつあることは確かなようです。

キャラクターを使う方法はあるの?

このようにキャラクターを無断で使用することは違法ですが、著作権を持つ人や組織に許可をもらえば、堂々とキャラクターパンを製造・販売することができます。
ただし、個人で著作権者を捜し、交渉・契約までを行うのは時間を要する上に法律の知識なども必要になってくるので、専門家にサポートをお願いして行う方がスムーズです。

そして、使用にはライセンス料が発生します。
これは著作者と期間を設けたライセンス契約を行い、使用期間に応じてライセンス契約料を支払うというもので、契約満了後に更新するのであれば、その都度契約料を納めるというシステムです。
なお、ご当地キャラクターなどの中には著作権使用料がかからないものもあります(使用許可は必要)。
一般的には、大手の有名人気キャラクターほど高額になる傾向があると言われています。

なお、キャラクターパンを家でつくりたい、家族や友達に振る舞いたいという場合は、著作権の侵害にはあたらず私的使用として認められています。
営利目的ではないから著作権者の利益を害することはないという判断です。
ただし、家族で食べるためのキャラクターパンであっても、SNSなどネットで配信する行為は著作権法の公衆送信権の侵害にあたります。
キャラクターケーキやキャラ弁などについても同様ですので、ご注意ください。

人気キャラクターを模したパンの販売は著作権の侵害行為にあたるものの、黙認されている状況ですが、違法行為であることには変わりありません。
子どもの心を掴むパンを販売したいという気持ちがあるようなら、キャラクターでなくても動物や乗り物、チョコペンでお絵描きできるパンなど、方法はいろいろあります。

思い切って、お店オリジナルのキャラクターパンで勝負してみるのもいいかもしれません。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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