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カフェと喫茶の違いと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
店の雰囲気や客層の違い?それともメニュー?ただ単にフランス語と日本語の違い?本来、カフェと喫茶は同義語ですが、営業許可の種類で明確な線引きがされていました。
しかし、法改正によってその解釈が変わることになったのです。
この記事では、法改正によって一体、何が変わったのかを分かりやすく説明していきます。
目次
「喫茶店営業」は2021年5月31日をもって終了
これまでカフェや喫茶店を開業する際には「飲食店営業」の許可、もしくは「喫茶店営業」の許可を取得する必要がありました。
これを定めていたのは食品衛生法の関連法令である食品衛生法施行令第35条です。
しかし、2021年5月31日を最後に、改正された食品衛生法が完全施行されたため「喫茶店営業」という営業許可の業種がなくなったのです。
そもそも「飲食店営業」と「喫茶店営業」に違いはあるのか?
改正前の食品衛生法施行令第35条では、「飲食店営業」を<一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフェ、バー、キヤバレーその他食品を調理し、または設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号に該当する営業を除く>としていました。
その次号に該当するのが「喫茶店営業」で、定義を<喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう>としていました。
つまり、喫茶店営業で可能なサービスは、アルコール以外の飲み物と茶菓を提供することまでで、それ以上のサービスを提供するには「飲食店営業」の許可がないとできませんでした。
どこまでを「茶菓」とするかについては、全国一律の定義はありませんが、例えば島根県では調理や製造行為のないものを茶菓として、喫茶店営業の範疇で提供できる食べ物はトーストまでとし、アイスクリームの小分け販売や、かき氷も喫茶店営業の範疇と公表しています。
では、ナポリタンやサンドウィッチなど、明らかに茶菓とは言えないようなメニューを出している昔ながらの喫茶店は、無許可で営業しているということなのでしょうか?
いいえ、これらの店は、「飲食店営業」の許可を得て、営業しているだけです。
「喫茶店営業」の許可を取得した店だけが喫茶店の看板を掲げることができる、というわけではないのです。そもそも法律上の営業許可と店の名前は関係なく、「カフェ〇〇」と名乗っていても「喫茶店営業」の許可しか取得していなければ、アルコールや調理を必要とするメニューは提供できないのです。
新体制では「喫茶店営業」と「飲食店営業」は統合へ
改正食品衛生法の完全施行によって、「喫茶店営業」は「飲食店営業」に統合されることになりました。では、これから喫茶店を開業したい人はどうすればよいのでしょうか。
どう変わる?「飲食店営業」の新制度
2021年6年1日に改正食品衛生法が完全施行されたことは、喫茶店を営む人、これから開業しようと思っている人に大きく影響します。
そもそも今回の法改正で大きく変わったポイントは2つ。
1つ目は、「HACCPに沿った衛生管理の制度化」です。HACCP(ハサップ)とは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の頭文字をとったもので厚生労働省では次のように説明しています。
<食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)をあらかじめ把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至るすべての工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法>。
つまり、原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施が義務付けられたのです。
「飲食店営業」に統合された「喫茶店営業」
2つ目のポイントは「営業許可業種の見直し」です。
これまでの食品衛生法では、食品の製造や調理などに関わる34の「要許可業種」と、食品輸入業や瓶詰・缶詰販売業などを対象とした「要許可業種以外」に分かれていました。
しかし、1972年から見直されておらず、実態にあっていなかったことから、食中毒のリスクなどを考慮して、今回、新たに32の「要許可業種」と「要届出業種」、「届出対象外」に見直されました。
この結果、34の要許可業種のひとつだった「喫茶店営業」は、カフェと同じ「飲食店営業」、と新たに作られた「調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業」に分けられました。
ちなみに「調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業」の一例が、これまで「喫茶店営業」の許可が必要だったオフィスなどで見かける「コップ式自動販売機」です。
このうち屋内で自動洗浄機能を備えているなど食中毒リスクが低いものは「営業届出」で済むようになりました。また、「営業許可業種の見直し」は、「原則、一施設一許可」となるように行われました。
今まで、飲食店が店内で作ったケーキをテイクアウトする際は、「菓子製造業」、また麺をテイクアウトする際は「めん類製造業」のそれぞれの許可が必要でしたが、これからは「飲食店営業」の許可だけで対応可能に。露店や自動車で、ベビーカステラなど菓子の製造・提供を行う際も「菓子製造業」、ジュースやかき氷の提供には「喫茶店営業」の許可が必要でしたが、こちらも「飲食店営業」の許可の取得だけで済むことになります。「喫茶店営業」の許可しかない既存店の今後の営業はどうなる?
では、これまで「喫茶店営業」の許可だけで営業していたお店はどうなるのでしょう。
営業許可業種が「飲食店営業」に統合されたからといって、アルコールや調理が必要なフードメニューを提供できるということではありません。今回の制度改正では、経過措置が設けられ、従来の許可の有効期限内であれば、新たに「飲食店営業」の許可を取得しなくても営業することはできます。ただし、経過措置期間は、今までの喫茶店の範囲のサービスしか提供できません。
「喫茶店営業」で開業した店が、アルコールや料理を提供するには、「飲食店営業」の許可を取り直す必要があるのです。しかし、場合によっては簡単ではないかもしれません。それは施設基準が違うからです。基準は都道府県ごとに異なりますが、「喫茶店営業」では、建物を清潔にしていることや、衛生的に保管できる場所があること、給水や汚物処理がしっかり分けられていることなど、許可取得のハードルはさほど高くありませんでした。ところが「飲食店営業」の許可は、もう少し厳格な基準が求められます。例えば…
・調理場と客席がスイングドアなどで分かれている
・シンクが2つ以上ある
・調理場に消毒装置付きの手洗いがある
・換気の設備がある
・床、壁、天井は平たんであること
・トイレは水洗であること
・温度計を備えた冷蔵庫があること
・扉付きの収納があること ~などなど
今後、料理やアルコールの提供をしていきたいということであれば、基準を満たす店舗の改装工事などを行う必要が出てきます(※法改正前に「喫茶店営業」の免許を取得した既存店、もしくは新規参入店でアルコールや料理の提供はしないのであれば(つまり「喫茶店営業」許可業種の内容)、食品衛生上支障がないと認められる場合、施設基準を満たすための改装工事などは不要)。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
カフェと喫茶店の違いは法律上なくなる?
繰り返しになりますが、店名に「カフェ〇〇」や「喫茶△△」と看板を掲げるのはそもそも自由です。今回の法改正で「喫茶店営業」は、より厳格な施設基準などが求められる「飲食店営業」に統合されたことで、法律上の違いがなくなったということになります。
「HACCPに沿った衛生管理」など、新しい制度下での営業許可の更新や、新規参入は、少なからずハードルが上がるかもしれませんが、その分ビジネスチャンスが広がったとみるべきでしょう。
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