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外食ビジネスは基本的に“ベンチャービジネス”である。
業態の栄枯盛衰が激しい一方で、時流を捉えたヒット業態やヒット商品も次々に登場する。大企業や大チェーンであっても、常に新しい価値に挑んでいかなければ成長を維持することはできない。
コロナ禍のいま、すべての外食企業や飲食店が“withコロナ時代”への対応を迫られているが、コロナ禍は「変化対応業」である外食ビジネス本来の姿を浮き彫りにしたともいえるだろう。
そして、この厳しい状況の中でも新しい価値創造をめざして起業に踏み切る外食の事例が目立っていることは、外食がベンチャービジネスであることの証左といえる。
起業の意欲こそあるものの外食ビジネスのノウハウを持たない人や企業に向けて、そのノウハウを提供するのがフランチャイズチェーン(FC)だ。
外食業界全体が大転換の時代にあるいま、FCの世界においてもwithコロナ時代を見据えた新しいビジネスモデルの構築に挑む動きが出てきている。
今回は、そうしたFCビジネスの最新動向を紹介しよう。
目次
オーダー受付開始後わずか2時間で500件の注文!フードテックによるテイクアウト需要の獲得【ブルースターバーガー】
2020年11月10日に東京・中目黒にオープンした「ブルースターバーガー」は、フードテックを活用しオーダーから決済、商品受け取りまでを完全非接触で実現したテイクアウト専門のハンバーガー店。
経営母体の㈱ブルースターバーガージャパンは、数々のヒット業態を世に送り出してきた西山知義氏率いるダイニングイノベーションが新たに設立した企業だ。
コロナ禍で高まるテイクアウトニーズを吸収し、オープン初日はオーダー受付開始後のわずか2時間で500件の注文が入るという爆発的な立ち上がりを見せた。
お客はオリジナルアプリおよび店頭のタブレットで注文し、クレジットカードもしくは電子マネーで決済。
アプリ注文の場合は受け取り時間の目安が表示され、待ち時間なしでピックアップ可能だ。完全非接触に加えて完全キャッシュレスを実現した、コロナ禍の「ニューノーマル」に対応した業態なのである。
そして、それ以上に注目すべきはフードテック活用によってオペレーションコストを圧縮し、それを原価に振り向けることでハンバーガーの価格破壊をコンセプトとして打ち出した点だ。
チルドのビーフ100%パティを使用しながら、ハンバーガー単品の最低価格は170円という設定。商品はすべて注文を受けてから製造し、食材がなくなり次第営業終了として在庫圧縮と鮮度向上を追求している。
ポテトは糖度と水分が最適なじゃがいもを専用のブレンドオイルで揚げるなど、サイドアイテムにも手抜きはない。
この価格力と立地対応力を武器に、国内2000店を目標に掲げている。
コンテナを利用した新モデル店でローコスト化を実現【から揚げの天才】
主力業態である居酒屋の不振を受けて、withコロナ時代の新業態を次々に開発しているのがワタミ㈱。
外食大手の中でもっとも新業態開発に積極的に取り組んでいる企業だが、その新業態の中でいち早くチェーン化が軌道に乗ったのが唐揚げ専門店「から揚げの天才」である。
2020年末の段階で直営13店、フランチャイズ64店を展開。2022年3月期に200店という出店計画を打ち出した。
これまで商店街を主力立地としてきたが、2020年9月には店舗にコンテナを利用した新モデル店を埼玉・上尾にオープン。既存店がイートインを併用していたのに対して、コンテナタイプはテイクアウトに特化し、8坪の規模で総投資額が1300万円弱というローコスト化を実現した。
モデル月商は400万円で投資回収期間を2年に設定しているが、上尾店はその倍を超える月商880万円を売り上げている。
メニューは唐揚げの単品や弁当など17品で、看板商品は1個当たり鶏モモ肉60gを使った「デカから」。秘伝の黒醤油、塩麹と極出汁、コクの辛味噌と3種の味つけを用意しており、価格は1個99円とお値打ち度は高い。
モモ肉以外の唐揚げメニューを置かず、売れ筋の部位に絞り込んでオペレーション効率を高める一方、収益商品として投入したのがもうひとつの名物商品である玉子焼きだ。
1本650円で販売する他、デカからと玉子焼きを組み合わせた弁当も用意。「デカから弁当」や「からたま弁当」などを399円~という低価格で提供しながら、トータル原価率を40%に抑えている。
「ボロネーゼ」をシェアして加盟店増加!?【BIGOLI】
新メニューを導入したい飲食店に対して、あるメニューの食材やノウハウだけを提供する新しいFCが「シェアリングFC」。
この仕組みで加盟店を着実に増やしているのが東京・品川のイタリア料理店「BIGOLI」である。
シェアする商品は、最高で1日450食を売ったこともある同店の看板商品「ボロネーゼ」。
主な加盟パッケージは、メニュー強化を目的に既存店のメニューにBIGOLIのボロネーゼを加えるパターンと、居酒屋やバルがランチメニューとしてボロネーゼを提供する2パターン。
他に、BIGOLIのメニューを看板商品に据えた新店を出店するパターンも用意している。
コロナ禍が起きて以降は夜の集客に苦しむ居酒屋やバルからの問合せが増えたという。
メニューは「熟成チーズのボロネーゼ」M890円を主力に、ボロネーゼソースにイカ墨ペースト合わせた「イカスミMAX」M1200円など12品。
パスタの分量をMサイズで茹であげ後に360gとすること以外、メニュー数と価格設定は加盟店が任意で変更可能だ。
食材の生パスタとボロネーゼソースは調理済みパック品を加盟店に配送。Mサイズ1食分で80gの角切り肉を使用したソース、ソースが絡みやすくコシのある生パスタはいずれもOEMで独自開発した。
これにより、現場の作業は解凍したソースと茹であげたパスタをボウルで合わせるだけというシンプルオペレーションを実現している。
フォロワー数7000人のバナナジュース専門店。SNSマーケティングの強みを活かしたFC展開【まがりDEバナナ】
同様のシェアリングFCで急成長しているバナナジュース専門店が「まがりDEバナナ」。経営母体はSNSマーケティングや動画作成などを手がける㈱ドリームアシスタントで、2020年7月に東京・幡ヶ谷に直営1号店をオープンしている。
加盟パッケージとして、実店舗型のドリンクスタンドタイプ、既存店のメニューにバナナジュースを追加するアドオンタイプ、営業時間外の空き時間を活用して販売するアイドルタイムタイプ、キッチンカータイプの4つを用意。
このうち純粋なシェアリングFCといえるのがアドオンタイプとアイドルタイムタイプだ。メニューは「バナナジュース」(サイズにより500円と600円)、バナナジュースにイチゴシロップを加えた「恋バナ」800円の3品。
FC加盟店を対象にした研修は動画配信のみで、バナナジュースに5日間熟成して冷凍したバナナを使用することを義務づけている。
本部の加盟店支援として目を引くのがSNSを活用した宣伝サポート。まがりDEバナナのSNSアカウントに計7000人のフォロワーがおり、このアカウントに本部が出店情報を公開する他、インフルエンサーに投稿の依頼などを行なっている。
加盟金やロイヤリティの徴収は一切なし!ランチタイム集客で居酒屋救済を図る【テイクユー「ランチラーメン」】
国内外で100店を超えるラーメン専門店の出店をプロデュースしてきた㈱テイクユーが、そのノウハウをもとに2020年7月からスタートしたのがランチラーメンのシェアリングFCだ。
同社は東京都内に15店のラーメン店を展開する他、居酒屋5店も運営し、コロナ禍における居酒屋経営の厳しさを身をもって体験。その売上げ回復の手立てとして、ランチタイムにラーメン提供を支援するモデルを開発した。
居酒屋救済を事業目的としているため、加盟金やロイヤリティなどは徴収しない。
メニューは煮干し醤油や鶏白湯、とんこつなど20パターンからオリジナルメニューを作成可能だ。テイクユーが申込者にメニュー内容の要望をヒアリングし、試作品作成や試食を経てオリジナルラーメンを完成させる。
麺やスープ、かえし、香味油などの食材は冷凍状態で店舗に配送され、ラーメンスープはベーススープに調味料類を混ぜ合わせるだけ。
軽量オペレーションに加え、居酒屋の厨房設備を活用できるためラーメン導入に際して追加の投資額が低いこともポイントだ。
ランチラーメンの売上げモデルは客単価800~900円、1日最大客数40人で日商3万円前後、粗利益率70%を想定。すでに居酒屋の個人店やチェーンなど50社から問合せが入っているという。この記事の監修
株式会社柴田書店/株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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