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飲食店にとって衛生管理は基本中の基本。設備や食材の管理、調理や提供方法などはもちろん、従業員の健康管理にも気をつけたいところです。その理由として従業員の体調不良が原因となり、お店に大きな損害を与えることがあるからです。
ノロウイルスとは?
感染症といってもいろいろあります。まずはこのウイルスの基本的な特徴と、飲食店との関わりを見ていきましょう。
いつ、どんな症状が起きる?
ノロウイルスは乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層がかかる感染症で、急性胃腸炎を引き起こします。毎年11~3月頃、冬季に多く発生しますが、年間を通して患者はみられます。潜伏期間があるため、感染して24~48時間で発症。下痢や嘔吐、腹痛、37~38℃程度の軽度な発熱などの症状がでます。通常であれば3日程度で症状は治まりますが、高齢者や子どもなど、免疫力が低下している人は長引く傾向にあります。また、感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状のみの場合もあります。
どうやって感染するのか?
ノロウイルスの主な感染経路としては、以下の4点が挙げられます。
1.感染者のウイルスが含まれる便や吐物に直接・間接的に接触したとき
2.食品を取扱う人が感染し、その人が触って汚染した食品を摂取したとき
3.ウイルスに汚染された貝類を、生や十分に加熱しないで摂取したとき
4.井戸水など、ウイルスに汚染された水を十分消毒せずに摂取したとき
このように、原因は食品に関わることが多く、口から体内に入り込んで感染しますので、飲食店が特に気を付けなくてはいけないことがわかります。飲食店で集団感染が発生してしまったら?
ノロウイルスの集団感染が確認されると、食品衛生法に基づいて管轄の保健所の立ち入り調査があり、感染原因が特定された後、2~3日程度の営業停止処分が課せられます。ノロウイルスの発症は、店の死活問題につながることを心しておきましょう。
従業員が感染してしまったら?
発生したら経営に大きなダメージを与える感染症。実際に従業員が感染したときに備えて、対処法を頭に入れておきましょう。そのポイントを紹介します。
出勤前に病院へ
発熱などの症状が出たからといって、ノロウイルスによる感染と限りません。しかし、少しでも疑いがある場合は従業員に速やかに病院で確定診断を受けさせるようにしましょう。兆候があったら出勤前に病院へ向かうように、チェックポイントや手順などを明示したマニュアルを作成しておくとベストです。
出勤してから症状がでてしまったら
店で症状が現れた従業員はすぐに病院へ向かわせましょう。嘔吐や下痢があった場合はウイルスが広がらないよう、速やかに処理をします。処理をする人は必ずマスク、ビニール手袋、シューズカバー、眼鏡やゴーグルを装着。処理の際に汚物が跳ね上がったりすると、吸い込んで感染するおそれがあるので、周囲にいる人は3メートル以上離れるように。使った雑巾やタオル、嘔吐がついた衣服はビニール袋に入れて密封し、廃棄します。
徹底的にウイルスを除去
店の設備や食器は塩素系の消毒剤、もしくは熱湯消毒を施します。ノロウイルスがカーペットや畳などに残ってしまった場合、乾燥して空気中に舞い上がり、二次的な塵埃感染を起こす可能性もあります。店内にあった食材は念のためにすべて廃棄したほうがよいでしょう。
十分な自宅待機を
感染した従業員は、もちろん出勤停止です。汚物からのウイルスの排出は1週間、長ければ3週間以上続くことがあり、症状が治まったといっても安心できません。従業員への対応に法的な決まりはありませんが、ある大手チェーン店では、勤務再開は体調が回復して3日程度経過してから再度病院で検査をし、陰性であることを条件にしています。検査には複数の種類がありますが、飲食店に関わるのなら感度のよい遺伝子検査(RT-PCR検査)が安心です。ただ、保険適用外になるケースが多く、費用が数千円~1万円以上かかってしまうこともあるため、どちらが負担するかについては事前に就業規則などで共通の認識をもっておきましょう。
ノロウイルスの発生を事前に防ぐには?
飲食店にはお客さんや業者を含め、さまざまな人が出入りしますので、100%感染を防ぐことは難しいかもしれません。しかし、予防対策をすることはできます。そのポイントをあげてみました。
しっかりと手洗い
まず、従業員にせっけんを使ってしっかりと手を洗うことを習慣づけさせましょう。特に外出した後、トイレの後、接客担当から調理場担当に代わるときなどは注意が必要です。念入りに、指の間を含め手首までまんべんなく洗い流します。せっけんでノロウイルスを死滅させることはできませんが、ウイルスを洗い流すことはできますので、手洗いは最も効果的な感染予防方法といえます。また、手洗い後に拭くタオルなどを共有にしていると、万一ウイルスが落ちていなかったときには、次から次へと別の人の手に移ってしまいます。ペーパーシートなど、使い捨てのものにしましょう。
トイレ使用時の「うっかり」を防ぐ
感染源が潜んでいる可能性の高いトイレ。使用するときにはエプロンは必ず外し、専用の靴に履き替えることを徹底させましょう。手洗いだけに注意がいきがちですが、こうして衣服などから間接的に感染するケースも多数あります。
手で触る場所を消毒
こちらも同様に指先にウイルスがついて感染が広がるのを避けるために、複数の従業員が触る場所は定期的に消毒を心がけます。ドアノブ、水道の蛇口、食器棚や冷蔵庫の取っ手などを中心に行いましょう。
しっかりと火を通した食事を
食品中のウイルスは加熱によって死滅させることができます。普段の食事もしっかり熱を通したものにするよう、従業員に指導しましょう。特に感染源とされている貝類には注意。従業員に生ガキを食べることを禁止している店もあるようです。野菜や果物などの生鮮食品は、水で丁寧に洗うよう心がけることも大切です。
お客さんへの対処も敏速に
従業員への注意喚起をしていても、お客さんに感染者がいないとは限りません。お客さんで症状が見られた場合も、「出勤してから症状がでてしまったら」を参考に処理してください。居酒屋などの場合はお酒の飲み過ぎで嘔吐をするお客さんが多いと思いますが、常にノロウイルスであることを念頭に置いて動きましょう。また、特に冬季はトイレの掃除回数を増やし、消毒剤を使って念入りに行うように。
風評被害を抑えるには?
たとえお客さんがノロウイルスの感染源だったとしても、集団発生してしまえば店のイメージはダウンしてしまいます。SNSでいやな噂を拡散されてしまうようなことは避けたいところです。その対策としては普段からトイレの中などに「できる限りの感染予防対策をしています。お客様もご協力を」と、ポスターなどで店のポリシーを公表しておくのも一案です。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。【特集:トラブルシューティング】の記事
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