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飲食店経営の人件費率を試算…人件費を削るタイミングにすべきたったひとつのこと

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どんな業種・業態でも知っておきたいのが、想定する売上高に対する経費の割合。
経営における大きな経費として挙げられるのが、「食材(仕入)」「人件費」「家賃」です。

その中の人件費は、入ってきたお金に対して、「人」に、どのように、どれだけ支払っていくか戦略が必要なわけですが、ただただ出費と言い切れないのが軽費コントロールの難しいところ。
「人件費」は、店の利益確保のために、重要な経費のひとつです。
安ければいい…とは一概に言い難いのが事実。
それは経営のスタイルやコンセプトによって、判断が分かれるもの。
お店にとって、単なる出費なのか、サービスとしての資産なのか…経営者の判断が必要な課題なのです。

そして、その人件費、どのようにコントロールすべきなのか…を考えます。

人件費の算出前に…運営スタイルを洗い出す

適切な人件費を算出していきますが、その前にまずやらなければいけないのが、開店する店舗の規模や営業時間など運営スタイルの洗い出し作業です。
店舗が決まっていれば図面を用意し、配置や席数、キッチンの広さや規模など必要な要素をチェックしてください。
それによって、スタッフの配置、業務のオペレーションが見えてきます。

適切な人数は計算式から

人件費は売上高をコントロールする重要な要素で、その割合のことを『売上高人件費率』と言います。
この売上高人件費率の数値が大きければ、社員やアルバイトに支払っている金額も大きく、逆に小さければ支出も小さいということになります。
ただ、一概にこの数値の大小によって善し悪しを評価するわけではありません。

飲食業の適正人件費率は30%

売上高人件費率は業種によって大きな差があり、飲食業は小売業などに比べて平均30%台と、その数値はかなり大きく、適正な数値は30%と言われています。
よく飲食業は粗利益率(売り上げから仕入れを引いたものを売上で割った数値)が高いと言われますが、売上高人件費率が高いため最終の利益は他業種とほとんど同じレベルになります。
売上高人件費率が高ければ営業利益を圧迫し、低すぎれば人員不足によるサービス低下やスタッフのストレスなどが生じます。
大切なのは先に洗い出した店の運営スタイルに合わせた上で、どうすれば適切な売上高人件費率であなたの店が理想の利益を出していけるかを考えることです。

売上高人件費率からスタッフ数を算出してみよう

売上高人件費率の計算式は下記のとおりです。

売上高人件費率(%) = 人件費÷売上高×100

(例)
あなたのお店が売上高(目標)150万円とします。
適正売上高人件費率30%と設定して、人件費を算出する数式は
売上高人件費率30% = 人件費X ÷150万円×100
となり、Xの人件費は45万円となります。

このようにあなたのお店のスタッフ数は45万円以内に抑えられる人数ということになります。
具体的な人数はお店の広さや規模、営業時間などによって違ってきますので、先に洗い出した運営スタイルを参考に、社員やアルバイトの体制を整えてください。

また、どうしても売上高人件費率が大きくなってしまう場合、オペレーション業務の効率化を図り人件費を抑える方向で考えるのもひとつの方法ですし、仕入れや家賃など、他の経費を抑えることで利益をコントロールしていくことも必要でしょう。
いずれにしても、あなたのお店の営業状況のひとつの指標として売上高人件費率を常にチェックしていくことは大切です。

社員とアルバイト…雇用形態も考える

飲食店経営の適切な従業員・スタッフ数が分かったところで、あらためて人件費のコストを計算すると、「3大経費」のうちの1つと言われる理由がよく分かると思います。
そのため、少しでも人件費のコストを抑えたいという人もいると思いますが、社員とアルバイトではどちらの方が人件費を抑えることができるのでしょうか?
人件費だけでなく、いくつかの項目について社員とアルバイトの比較を行ってみましょう。

人件費を抑えることができるのはアルバイト

正社員の人件費は、固定給に残業代や住宅手当などの手当てが加算されるため、アルバイトよりもかかる人件費が多いと言えます。
飲食店の売り上げに関係なく、一定以上の決まった金額が必要になることから、閑散期などには人件費の占める割合が多くなってしまうため、その分経営が厳しくなってしまうと言えるでしょう。
アルバイトの人件費は、労働時間分の時給に交通費などの手当てです。
必要な時間に必要な人数だけ雇うことができるため、閑散期などにはシフトを組まないようにすれば人件費を大幅に抑えることが可能です。
1人当たりのコストが少なく、経営状態によって雇用状況を変えることができるアルバイトの方が、飲食店に向いています。

店の運営に積極的なのは社員

社員ではなくアルバイトを雇用した方が人件費を抑えることができましたが、店の運営に対して積極的なのはどちらでしょうか?

これに関しては、店との関係性が深い社員の方が積極的と言えます。
飲食店の売り上げが自分の給与に影響することもあるため、店の運営に積極的で、店の売り上げ目標に対してコミットしようと努力します。
しかし、学生などのアルバイトは、次へのつなぎとして一時的に働いているケースが多く、短期間で辞めてしまうため、「自分が店を切り盛りしているうちの一人である」という参画意識が低いと言えます。
専業主婦などで、次へのつなぎとしてではなく、家から近いなどの理由で勤務してくれている人の場合は、勤続年数が長くなりやすいため、社員同様の活躍が期待できます。
学生の方が勤務時間の融通が利きやすいですが、長期間の雇用が期待できる専業主婦などを積極的に採用できれば、意識の高いアルバイトの数を増やすことができるでしょう。

責任あるポジションを任せることができるのは社員

企業には社長・部長・課長などの役職があるように、飲食店の中にも責任あるポジションがあります。
このような責任あるポジションを任せることができるのは社員とアルバイトのどちらでしょうか?
こちらの項目も上記と同様、社員の方が責任あるポジションを任せることができると言えます。
社員に責任あるポジションを任せることができる理由は、途中で辞めてしまう心配がないためです。
中には数年もしないうちに辞めてしまう社員もいますが、基本的に社員は長期間働いてくれるため、責任あるポジションを任せても支障がないと言えます。
一方で、アルバイトは店からすると必要な時間に必要な人数だけ雇うことができるというメリットがあったのと同様、アルバイトからするとバイトは好きな時に始めて好きな時に辞めることができるというメリットがあります。
そのため、責任あるポジションを任せても、途中で辞めてしまう可能性の方が高いので、任せにくいと言えるでしょう。

労働時間を確保しやすいのは社員

月の営業時間に対して従業員のシフトを決めていく場合は、社員とアルバイトはどちらの方が労働時間を確保しやすいと言えるでしょうか?
これも社員に軍配が上がります。
その理由は、社員は1か月の労働時間が決まっていてフルタイムで働いているため、店に必要な労働時間を確保できるためです。
また、宴会が入るなどの理由で残業が生じた時でも社員の方の融通が利きやすいと言えるでしょう。
一方で、アルバイトは、学生であれば学業と、主婦であれば主婦業と掛け持ちしているほか、複数のアルバイトを掛け持ちしている人もいます。
そのため、労働時間に制限があるなど、時間的な融通が利きづらいと言えるでしょう。
アルバイトは必要な時間に必要な人数だけ雇うことができるため、人件費を抑えることができることがメリットでしたが、それ以外は社員にメリットが多いです。
コストだけに目を向けるのではなく総合的に判断することで、より良い経営を目指していきましょう。

人件費を削減…コントロールするためのたったひとつの大事なこと

人件費を削減…つまり、スタッフを削減することは、本当にいろいろな意味で簡単なことではありません。
単純に「売上が落ちたから」と言ってスタッフを削減してしまうと、さらに売上を落としてしまうこともあります。
前述でした通りの計算式から言えば、今の売上を支えているのがこのスタッフ数ということになるからです。

しかし、経営が苦しくなれば人件費を削減したいと思うのは、飲食店だけではなくどのような事業でも同じです。
人件費をコントロール…つまり、比率を変更したり、売上が下がったから事実上スタッフ数を削らなければ割合が合わないなどの場合、まず考えることは

⇒ 現在のスタッフが、想定した役割に対して過不足なく稼働しているのかどうか?
なのです。

想定した1人あたりの稼働率を100%としスタッフが5人いる場合、本当にひとりひとりが100%稼働して、お店として500%でスタッフが稼働しているでしょうか?
誰かが80%しか稼働しておらず、別の誰かが120%で稼働することで、賄えていたりしないでしょうか?
もしくは、80%の稼働で完結できてしまう業務であれば、その20%で他の業務ができたりすることはないでしょうか。

このように、発生する業務量対してスタッフの人員と稼働が最適化されているのか?を洗い出すことからはじめるのがセオリーと言えるでしょう。
組み立て方を変えてみると、実は手が回っていなかった新たな業務に着手できたり、ポジションを変えることによって、より売上に寄与できる体制になったりすることが多々あるのです。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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