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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
シェア拡大の要因は営業活動らしからぬ営業活動
今回は、ここ数年でシェアを15%も伸ばし、地域シェア70%を超えている葬儀社の、営業活動のお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員からのご報告だ。
「営業活動」と今言ったが、結論から言うと同社がシェアを15%も伸ばした要因は、営業活動らしからぬ営業活動だ。報告にはこうある。「なぜシェア率を上げることができたのか。どんな営業をしたのかというと、私たち葬祭事業部の部員は全員営業が嫌いなので、営業をしていません」。
その代わりに彼らが行ったのは、「喪家」を大切にすることだ。「喪家にとって『心に残るよいお葬式だった』と言ってもらえることが一番の営業になる」。また、喪家が良いお葬式だと感じてくれているときは、参列した方々も同様に感じている。つまりは「良い葬儀をする」ことが最強の営業活動になると、彼らは考えたのである。取り組みテーマは「1葬儀1工夫」
そこで同社では葬儀の際、「1葬儀1工夫」を取り組みテーマに掲げ、実行していくことにした。事前準備に時間をかけられる結婚式と違い、とかく葬儀はバタバタし、滞りなく葬儀を終わらせることに意識がいってしまう。そこを改め、「この喪家にしてあげられることは何か」「もっと故人のことを聞きださなきゃ」と、今まで踏み込まなかったところにも踏み込み、聞きだした情報を元に工夫を考える。その工夫に費用が必要な場合に備え、担当者には自由に使える費用も与えた。その結果、葬儀中に喪家や親族から「こんなことをしてくれる葬儀屋さんは初めてやわ。あんたやるな」と言われるようなことも増え、先述のシェア拡大につながっていったのである。
では具体的にはどんな「1葬儀1工夫」があったのだろう。例えばある葬儀でのこと。先にご主人を亡くされお一人で暮らしていたある女性の葬儀。その方には子供もおらず、葬儀を取り仕切ったのは故人の姉。実は同社、故人から生前に葬儀の相談を受けており、まだ60代という若さにも関わらず自分の死を覚悟し受け入れている様子に感銘を受け、同社にとって思い入れの強い葬儀でもあった。そうして生前に相談済みの段取りにのっとり通夜を迎えた折、親族のこんな言葉を耳にした。「もうすぐ誕生日やったのにかわいそうやね」。なんと葬儀の当日は故人の誕生日だったのだ。そこで同社は急きょある一工夫を思いついた。それはどんなことか。そしてその結果は。続きは次回に。この記事の執筆
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
小阪裕司
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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