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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
名前がないユニークな名札
前回、顧客に送るニューズレターに、自分の母親が認知症になったという、やや重く、プライベートな話題を書き、それがポジティブな反響を生んだ話をした。「そんなことを書いて大丈夫か」という心配もあるかもしれないが、人と人とのコミュニケーションとは、案外そういうものだ。そこで今回は、またまた「そんなことを書いて大丈夫か」というような例だが、名札を使った例をご紹介しよう。ワクワク系マーティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、バーからのご報告だ。
そのバーは、厳選されたウイスキーを出す、本格派のバー。その〝こだわりの本格派〟な感じとある意味ギャップのある名札を作り続けているのだが、これがなんともユニークなもの。名前を一度も書いたことがないという名札なのである。
では何を書いているのかといえば、例えば店主の名札には「鶴は千年、亀は万年、僕はバーテンダー歴30年」「国産ウイスキーをこよなく愛するバーテンダーです」「趣味 極真空手」、マダムの名札には「昔雅楽やってました。越天楽はハナ唄でうたえます」。これならまだ自己紹介なので名札的とも言えるが、「冬の大人気カクテルアイリッシュコーヒー」「国産ライムはジントニックでしょ」「あのミント再入荷」といったドリンクメニュー関連ものや、「みかんジュース発売中」「みかんジュースいかがですか?」「朝カレーしませんか?」といった他の商品もの。さらには「お盆は休まず営業します」といった告知ものや、「今、洗濯機壊れてます!」といった、商品でも告知でもないものまで実に多彩だ。名札はコミュニケーションツール
店主はこの狙いをこう語る。「名札を名札として使わずコミュニケーションのツールとして使うことにより、こちらから会話の糸口を切り出すのではなく、お客様に興味を持っていただく」。その道具としては、名札は最適であり、そうして興味を持っていただいたり、「実は僕も極真空手、習ってました」などと共通の話題が見つかれば、初対面でも話は弾み、住所・氏名などの個人情報もいただきやすくなると。ちなみに、これまで最もウケたものは「今、洗濯機壊れてます!」。これはマダムの名札だったが、来店客に大いに話しかけられたとのことだ。
「そんなことを書いて大丈夫か」と、こういう取り組みを行っていないお店や会社が心配するようなことこそが、実はお客さんとの良いコミュニケーションを生む。名前を書かない名札。あなたがもしやってみるとすれば、何を書きますか?〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。- NEW最新記事
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