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【小阪裕司コラム】第70回:声のかけ方ひとつで

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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。

お客さんの行動を変えた2つの事例

 このコラムでご紹介しているワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の事例には、前回コラムの事例のようにハガキを活用したものや、POPなどの販促物を用いたものが多い。そこでともすればワクワク系マーケティングとは、その手のツールを上手く作り使うことだと誤解されがちだが、眼目はそこではない。そこで今回はこういう話をしよう。
 あるとき、ペットのトリミングサロンのオーナーらと、お客さんの次回来店をどのように促すかという話になった。彼らによると、本来、次回来店に適したタイミングがあるのだが、お客さんは往々にしてそれが過ぎてから、思い出したように来店する。その結果、1年間での利用回数をなかなか伸ばせない。それは店の売上面だけでなく、ペットの美と健康のためにも良くないのだが、なかなかうまく促せないとの話だった。
 するとあるオーナーが、自店では多くのお客さんに、適したタイミングに再来店してもらえると言った。そのために何をしているのかを問うと、返ってきた答えはこうだった。「会計の時に、『次は○月○日にお待ちしています』と、次回来るべき日付を具体的に言うんです。するとみんな結構覚えていて、その時期にちゃんと来店してくれるし、過ぎてから来た人は、謝ったりしますよ」。
 もうひとつ、ある会社がオリーブオイルの試食会をやった時のこと。集客施設内で行ったのだが、なかなか試食に立ち寄ってくれない。そこで内容を「試食」ではなく「アンケート」に変えた。2種類のオイルをパンにつけ、どちらが好みか赤と青の丸型のシールをボードに貼ってもらうことにし、このアンケートへの協力を声かけしたところ、「試食」の時は1時間に5名ほどだった試食人数が、1時間で34名になった。

着眼点とアイデアひとつで、その難しさは解消する

 いずれの例も、お客さんの行動が、声のかけかたひとつで変わる分かりやすい例だ。人の心と行動の研究者である私はこういうエピソードが大好きだが、これらの例は単に面白いだけでなく、商売にとって、人の心と行動に対するこのような着眼点が重要だと分かる。実際に多くのサロンオーナーは次回来店を促すのは難しいと感じ、オリーブオイル業界ではオイルの試食は難しいとされているからだ。しかし、この着眼点とアイデアひとつで、その難しさは解消する。そして、われわれのマーケティング活動の特色と眼目は、ツールを上手く作り使うことでなく、こういうところにあるのである。

〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。

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