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今年に入ってから、回転寿司チェーン店をはじめとする飲食店での悪質な迷惑行為がSNSに相次いで投稿・拡散され、社会問題になっています。消費者からは「もう回転寿司には行けない」「外食するのが怖くなる」といった声が聞かれ、飲食業界全体の信頼を揺るがす危機的な状況にあります。
今回は、迷惑行為・SNSトラブルの事例を紹介するとともに、飲食店における迷惑行為はなぜ続くのか?どう対処・対策すればよいか?について詳しく解説します。
目次
利用客による迷惑行為・SNSトラブル
回転寿司チェーン
2023年1月頃から、はま寿司、スシロー、くら寿司といった大手回転寿司チェーン店において、利用客による迷惑行為動画が相次いでSNSに投稿・拡散され、大きな問題になりました。利用客による迷惑行為の主な事例は、以下の通りです。
迷惑行為の事例
・卓上の醤油ボトルの注ぎ口や未使用の湯呑みを舐め、そのまま元の場所に戻す。
・回転レーンを流れる寿司に自分の唾液をつける。
・一度箸をつけた寿司を再び回転レーンに戻す。
・他の利用客が注文した寿司に大量のわさびをのせて、回転レーンに戻す。
・他の利用客が注文した寿司を、皿を取らずに寿司だけ食べる。
・卓上のアルコールスプレーを回転している寿司に吹きかける。
このような異常事態を受けて、各店の運営会社は警察に被害届を提出。刑事、民事の両面から厳正に対処する方針を示しています。3月8日には、くら寿司において迷惑行為動画を撮影した男女3名が店の営業を妨害した容疑で逮捕され、全国初の逮捕事例としてメディアでも大きく報じられました。
資さんうどん
福岡県北九州市を中心に50店舗以上を展開するうどんチェーン店「資さんうどん」では、2023年1月に利用客が共有のスプーンを使って無料提供されている天かすを頬張る迷惑行為動画が投稿・拡散されて問題になりました。
運営会社は警察に被害届を出すとともに、被害を受けた店舗の客席に設置された無料提供食材(天かす、とろろ昆布、つぼ漬け) の入れ替え、容器洗浄・消毒を実施しました。また、不安を感じる利用客には、個包装の天かすやとろろ昆布、個別に小皿に入れたつぼ漬けを提供することにしています。
吉野家
大手牛丼チェーン店「吉野家」では、2023年2月に利用客が卓上に置かれた紅生姜を直箸で口にかきこむ迷惑行為動画が投稿・拡散されて問題に。一度口をつけた箸を何度も紅生姜が入った容器の中に戻しており、不快感を感じずにはいられない動画内容でした。
運営会社の吉野家ホールディングスは、被害を受けた店舗に設置されている紅生姜の廃棄・交換、カウンターに常設している什器・調味料入れを含む備品の消毒・洗浄を実施。同年4月4日には、迷惑行為を行い動画を撮影・投稿した容疑者2名が威力業務妨害と器物損壊の疑いで逮捕されています。
カラオケまねきねこ
大手カラオケチェーン店「カラオケまねきねこ」では、2023年2月、2件の迷惑行為動画が投稿・拡散される被害を受けました。1件は、利用客がドリンクバーに設置されたソフトクリームを機械から直接口に流し込む動画。もう1件は、利用客がマイクを除菌するスプレー缶の吹き出し口にライターを近づけ、引火させて遊ぶ動画でした。
この事態を受けて運営会社のコシダカホールディングスは、全国600近くの全ての店舗で機械の洗浄を行うよう通達を出しました。ライターを近づけ、引火させて遊ぶ動画に関しては、一歩間違えば大事故につながる危険な行為だとして、刑事・民事の両面で厳正な対処を行うとしています。
従業員による迷惑行為・SNSトラブル
現在問題になっているのはどれも利用客による迷惑行為ばかりですが、今から10年ほど前には、アルバイト従業員による迷惑行為・SNSトラブル、いわゆる「バイトテロ」
が多発し社会問題となりました。
バイトテロは、主に飲食店や小売店のアルバイト従業員が就業中に悪ふざけや不適切な行為を行い、その様子を撮影した写真や動画がSNSに投稿・拡散されることを指します。具体的な事例は、以下の通りです。ピザーラ
2013年8月、アルバイト従業員が店内のシンクや冷蔵庫に入る写真がSNS上に流出。不衛生だというクレームが殺到し、大炎上しました。店舗を運営していたフランチャイジー会社は、利用客からの信用を取り戻すことができず、最終的に事業停止に追い込まれて破産する結果となりました。
くら寿司
2019年2月、アルバイト従業員がごみ箱に廃棄された魚の切り身を拾ってまな板に置きなおす動画がSNSに投稿されて問題に。調査の結果、廃棄された切り身が利用客に提供された事実はなかったようですが、特に衛生面での配慮が必要な生魚を扱う店舗としては致命的ともいえる行為でした。警察は、その迷惑行為を起こしたアルバイト従業員3名を偽計業務妨害の疑いで書類送検しています。
ローソン
2013年6月、アルバイト従業員が冷凍ケース内のアイスクリームの上にうつ伏せに寝そべる写真がSNSに投稿されて問題に。不衛生だといった書き込みが殺到し、炎上状態になりました。
ローソン側は「食品を取り扱うものとしてあってはならない行為」として謝罪し、冷凍ケースに入ったアルバイト従業員を解雇。該当店舗とのフランチャイズ契約も解約しています。
そば屋「泰尚」
2013年8月、個人経営のそば屋「泰尚」において、アルバイト従業員がキッチンに設置されている食洗機に仰向けの状態で入った写真を撮影し、SNSに投稿。さらに、シンクに足を突っ込んだり、上半身裸の状態で利用客に提供する茶碗を胸にのせたりといった不適切な行為が相次ぎました。
そば屋「泰尚」は1984年創業の長く愛される老舗でしたが、この騒動をきっかけに利用客からの信用を失い、結果的に閉店に追い込まれています。
これまで紹介してきた「利用客による迷惑行為・SNSトラブル」「従業員による迷惑行為・SNSトラブル」に共通して言えるのは、消費者だけでなく、企業や店舗も被害者であるということ。
ひとたび迷惑行為・SNSトラブルが発生すれば、風評被害や企業イメージの低下は避けられず、ピザーラやそば屋「泰尚」のように、閉店に追い込まれる可能性も十分あるのです。
飲食店における迷惑行為はなぜ続くのか?
今や誰でも気軽に、写真や動画をSNSへ投稿できる時代。自分の投稿をバズらせたい、他人の注目を集めたい、面白い人だと思われたいなど、承認欲求を満たしたいという思いが迷惑行為動画の一因になっていると思われます。
また、昨今のTikTok、YouTubeショート、Instagramリールといったショート動画の盛り上がりが過激な迷惑行為動画を生み出す原因になっているという意見も。
ショート動画では、1分未満の短い時間でいかにインパクトのある内容を発信できるかが重視される傾向にあります。それゆえ、規則違反ギリギリのおふざけ動画は散在しており、それを見たユーザーが真似をしていくうちに行為がどんどんエスカレートしていったと考えられます。迷惑行為を行った本人にとっては、迷惑行為がおもしろコンテンツの一つにしか見えていなかったのかもしれません。
被害に遭った場合の対処法は?
今回紹介している迷惑行為は単なるいたずらではなく、どれも立派な犯罪です。例えば、回転レーンを流れる寿司に唾をつける行為は業務妨害罪、他の客の寿司を勝手に食べる行為は窃盗罪にあたります。被害に遭った場合は警察へ被害届を提出し、刑事・民事の両面で厳正に対処しましょう。
迷惑行為の発生によって一度メディアで社名や店名が報道されてしまうと、企業イメージの低下や株価の下落などによって多大なる損害を負うことになります。実際に、スシローは株価の下落によって一時168億円の損失を出したとも言われています。法的に対処することは、お客様を守る姿勢を示すだけでなく、企業イメージや経営状態の回復にも寄与します。
迷惑行為・SNSトラブルを防ぐには?
商品等の提供方法の見直し
卓上に置いていた食器や調味料を撤去して注文後に提供する形式に変える、食器や調味料を利用客が自身でテーブルまで運ぶ形式に変えるなど。まずは、商品等の提供方法の見直しを検討しましょう。
回転寿司チェーン店の「すし銚子丸」では、醤油やわさび、粉茶、湯呑み、小皿などをあらかじめ卓上に置くことを中止に。利用客が来店したタイミングで提供し、利用客の退店時に回収する形式に変更しました。
中華料理チェーン店の「餃子の王将」では、卓上に設置していた調味料を撤去し、注文を受けてから店員が提供する形式に変更しました。ラーメンチェーン店の「一蘭」では、水を入れるコップを卓上に置くことをやめ、注文を受けてから店員が提供する形式に変更。さらに、店内での動画撮影には事前申請が必要というルールを設け、迷惑行為を未然に防ぐ対策を講じています。監視体制の強化
監視カメラを設置する、店内の死角を無くして目が行き届く環境を整える
など。店内の様子を監視する体制を強化することも有効です。
回転寿司チェーン店の「くら寿司」では、レーンを流れる皿の不審な動きをAIカメラで検知する「新AIカメラシステム」を導入することを発表。不審な動きを検知した際には、本部の管理システムでアラートを出し、店舗に連絡が入る仕組みだといいます。同じく回転寿司チェーン店の「はま寿司」でも、今後レーン上にカメラやセンサーを設置する検討をしています。
従業員による迷惑行為・SNSトラブルを防ぐ意味では、アルバイト従業員だけになる時間を作らないことも重要です。バイトテロは、オーナーや店長などの管理監督者が不在の時間帯に発生しやすいため、そうした環境を作らないように意識しましょう。
また、オーナーや店長などが主体となって密度の濃いコミュニケーションを取り、アルバイトも店舗を一緒に運営していく仲間であると意識づけることも大切です。店舗の一員としての当事者意識が持てるようになれば、不適切な行為をSNSに投稿しようという発想は生まれにくくなります。
自店も例外ではないという意識のもと、十分な対策を。
逮捕者が出てもなお、利用客や従業員による迷惑行為・SNSトラブルは後を絶たず、いつ誰が被害に遭ってもおかしくない状況が続いています。過去の迷惑行為・SNSトラブルの内容を知り、他店の事例も参考にしながら、不要なトラブルに巻き込まれないよう対策を講じていきましょう。
ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
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