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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
どんな業態でも「+サービス」の価値は必ずある
前回、あるバーの店主からのご報告を通じて、提供する商品は同じでも、「+サービス」で価値を上げ、価格に反映させる話をした。しかし、バーならグラスや店頭での一言などいろいろ工夫できそうなものだが、自分の業種では難しい、とお感じになる方もおみえかもしれない。そこで今回はこんな例をご紹介しよう。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、印刷業を営む方からのご報告だ。
彼も当会で長く過ごす中で、しばしば同様の事例を聞いてきた。ただ、このように「+サービス」でお客さんへの価値を上げることは、印刷業では難しいとも感じていた。でも何かできないかと頭を巡らせていると、ふと思い出したことがあった。それは、名刺の断裁機を購入して名刺の断裁をした際、A4の紙が名刺サイズにカットされて出て来て、その様に、印刷業者ながら、とてもワクワクしたことだ。
そこで、早速企画を組んでみた。それは「名刺断裁体験」。名刺をオーダーしてくれたお客さんに、完成品を納品するのではなく、会社に来てもらい、この断裁機で自分の名刺が断裁され出て来るところを体験してもらおうというものだ。
また、「名刺交換のときに自慢できます!」という売りの、オリジナルの「断裁証明書」も発行。さらにおまけとして、自分の趣味であるエレクトーンでの記念演奏も付け、「名刺」という商品に「+」できる「サービス」をあれこれ考えてみた。
そうしてチラシも作り上げ、まずは試しにと周辺の方々に案内してみると、早速オーダーが。都合の良い日時に来社いただき、あらかじめ印刷しておいたA4の紙を断裁機にセットしてその方にスタートボタンを押していただくと、ウィーン・ガチュン・ウィーン・ガチュンと軽快な音を立て、次々と断裁された名刺が。その方はただスタートボタンを押しただけだが、「名刺が出来てくるー」と言って大喜び。さらにはエレクトーンの演奏も大いに楽しんでいただけた。当たり前の中にある価値にも目を向ける
これを見て彼は言う。印刷業者では難しいとは、固定観念に囚われていたと。また、自分たちには当たり前のことが、それを知らない人にとっては貴重な体験だったり知識だったりする、と。
「+サービス」で価値を上げる―これは、何でも便利に、安価に手に入る世の中で、これからより着目すべきことだ。そこで重要なことは、自社の当たり前の中にある価値にも目を向けること。そしてうちの業種では難しいと頭に蓋をせず、今回の彼のように考えることなのである。〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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