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全国・海外から約1,500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
顧客リストの重要性
前回、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、清掃会社の事例をご紹介した。お客さんになかなかしてもらえない行動を、たった一言の貼り紙による簡単な働きかけでしてもらえるようになった例だ。同じ発想視点で、今回は顧客リストに関する話をしよう。
商売において顧客リストは極めて重要だ。リストさえあればお客さんと直接コミュニケーションが取れ、来店や購入なども働きかけることができる。しかし個人情報の提供に慎重な人が多い今日、「最近のお客さんは書いてくれません」「うちの業界は特に難しい」との声が商売現場からはよく聞かれる。そこで、ある日本料理店の、次のような実践を見てみよう。
この店でもかつて顧客リストがなかなか作れなかった。お客さんに個人情報を書いてもらう用紙はあるのだが、記入してもらえないのだ。そこで店主らは、お客さんの「書く」という行動をよく考え、ステップに分解してみた。「用紙に気付く」「用紙を手にとる」「ペンを持つ」「書こうと思う」「書く」の五つである。そして無理にではなく、ステップごとにお客さんが自然に次の行動に向かうためには何が必要か、どんな働きかけをするといいのかを考えた。
日本料理店が実践した自然に個人情報を記帳してもらう方法
まず用紙に気付いてもらうためにはどうするか。この店はお客さんの特別な日に利用されることも多く、よくあるテーブルの隅に丸めたアンケート用紙は避けたかった。そしてテーブルに置かれたら視界に入り、思わず手に取ってみたくなるような見た目のものであれば気づいてくれるのではないかと考え、結婚式などに使われるきれいな芳名帳をゲストブックとして用意することにした。日本料理店にふさわしく、きれいな和風柄のものだ。
次にペンを持ってもらうために、思わず書いてみたくなるようなきれいな色のペンを何種類も用意した。また芳名帳を手に取り開いたときに書こうと思ってもらうために、最初のページは店からのご挨拶とし、今日のご縁を大切にし、当店から季節のご挨拶や旬のお知らせなどさせていただきたい旨を綴った。
これらの工夫が実り、多くの来店客が自然に個人情報を記帳してくれるようになった。そうしてめでたく目標は達成されたのだが、欲を言えばお食事の感想も残して欲しい。しかし、そこまではまだ書いてもらえていない。そこで彼らはさらに考えた。この続きは次回に。〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
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