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新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くのビアガーデンが営業中止を余儀なくされていましたが、コロナ禍になって3年目のこの夏は、続々と営業を再開する動きが見られます。
ビールなどのお酒や料理を屋外で楽しめるビアガーデンは、密を避けながら飲み会ができる場所として需要が拡大中。近年ではビアガーデンの立地やコンセプト、営業期間などにも変化が現れ、ビアガーデンの新規開業も増加傾向にあります。
この記事では、飲食店開業を検討する方に向けて、ビアガーデン開業のメリットやデメリット、開業に必要な手続き、注意点などを解説します。
目次
ビアガーデンの定義
ビアガーデンとは、ビールをはじめとする飲食物を屋外で提供する酒場・飲食店のこと。ガーデンという言葉は、本来洋風の庭園を意味しますが、ビアガーデンの場合はビルの屋上や広場など一定の面積がある「屋外」を指す言葉として使われています。
ビアガーデンに似た言葉として「ビアホール」があります。ビールをはじめとする飲食物が屋外で提供されるビアガーデンに対し、ビアホールの場合は屋内で提供。また、夏の風物詩として期間限定で営業されることの多いビアガーデンですが、ビアホールは通年営業されるのが一般的です。
年々多様化するビアガーデン
従来のビアガーデンといえば、ホテルや百貨店などのビルの屋上で営業されるのが定番でした。しかし、近年では立地やコンセプトが多様化し、公園や山頂で自然を満喫できるビアガーデンや、海沿いでグランピング気分が楽しめるビアガーデンも登場しています。
長引くコロナ禍において、ビアガーデンは密にならずに飲み会ができる場所として支持されており、春夏だけでなく、秋まで延長して営業する店舗も増加中。また、ランチ営業や深夜営業を実施したり、おひとり様でも気軽に立ち寄れるカウンター席や立ち飲み席を設けたりすることで他店との差別化を図る動きも見られます。
ビアガーデンの多様化に伴い、小規模な隠れ家的ビアガーデンなど、多額の資金がなくても開業できる環境が生まれつつあることから、中小規模の飲食店経営者の間でも注目を集めています。ビアガーデンのメリット・デメリット
【メリット】人件費が抑えられる
経営者にとっての大きなメリットは、人件費が抑えられることです。ビアガーデンではお客様自身が飲み物や料理を取りに行くセルフサービスが主流。オーダー業務や配膳業務が省けるため、少ないスタッフ人数で店を回すことができます。料理をビュッフェスタイルで提供することで、厨房設備や料理人の数も少なく済みます。
【デメリット】気候の影響を受けやすい
一方で、料理やドリンクを屋外で提供するビアガーデンには、気候の影響を受けやすいデメリットがあります。事前予約制を取っているビアガーデンが多く、せっかく予約が入っていても雨天でキャンセルになる可能性も。雨天でも営業できるよう、屋根やパラソルなどの準備も必要とされます。
ビアガーデン開業に必要な手続き
「食品衛生責任者」「防火管理者」の資格取得
一般的な飲食店開業と同様に「食品衛生責任者」と「防火管理者」の資格取得が必須となります。
【食品衛生責任者】
食品衛生責任者は、食品を扱う店舗において食品の衛生管理を行う責任者のことです。飲食店の開業に不可欠な資格で、この資格を有する者を店舗に必ず1名配置する必要があります。
食材や調理器具の取り扱いに衛生上の注意を払う、スタッフに手洗い・消毒の実施を徹底させるなど、飲食店の衛生管理が法令に反しないよう管理する役目があります。
各都道府県の食品衛生協会が開催する講習を受講することで取得でき、栄養士や調理師などの資格を有する方は、講習を受講することなく申請のみで資格取得が可能です。
【防火管理者】
収容人数が30名以上の飲食店では、防火管理者の設置が求められます。店舗の広さによって防火管理者の種類が変わり、300平米以上の場合は甲種防火管理者、300平米未満の場合は乙種防火管理者の資格が必要です。防火管理者講習は日本防火・防災協会で行われており、甲種は2日の講習、乙種は1日の講習で取得できます。
保健所への営業許可申請
飲食店の開業に不可欠なのが「飲食店営業許可」です。開業の2週間前までに管轄の保健所に申請し、検査・審査に通過することで許可証が交付されます。無許可で営業すると、食品衛生法や風営法違反となり、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられますので注意してください。
防火管理者選任届、防火対象設備使用開始届、火を使用する設備等の設置届の提出
【防火管理者選任届】
店舗または建物の収容人数が30人を超える場合に必要な届出です。防火管理者の資格を有するスタッフの中から防火管理者を選任し、開業前に管轄する消防署へ申請を行います。
【防火対象設備使用開始届】
建物(防火対象物)の全体または一部に新規使用や変更があった場合に必要な届出です。建物の用途やオーナーが変わる、新規(中古)物件を購入して新たに使用する、建物の増築・改築を行う場合などが該当し、開業の7日前までに消防署に届出を行います。
【火を使用する設備等の設置届】
厨房、炉、温風暖房機、ボイラー、給湯湯沸設備などの火を使用する設備を設ける際に必要な届出です。こちらも消防署に届出を行います。
深夜における酒類提供飲食営業開始届出書の提出
深夜0時以降にお酒を提供する場合、「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出」を管轄の警察署に提出する必要があります。開業10日前までに申請します。
屋外客席営業設備の大要、屋外客席設置届の提出
ビアガーデンのように、飲食店営業などの許可のある施設で屋外客席を設ける場合には、営業許可申請時に「屋外客席営業設備の大要」の記入・提出が必要となります。屋外客席では調理行為を行わないこと、植木やポール等で区画して屋外客席の境界線を明らかにすることなど、屋外客席の設置条件が定められています。事前に保健所等で入念な確認を行い、準備を進めましょう。
さらに、店舗前の道路や公園などの公有地に屋外客席を設置する場合には、「屋外客席設置届」の提出も必要です。ビアガーデン開業時の注意点
排煙や臭気、騒音対策を徹底する
ビアガーデンを開業するにあたって注意したいのは、周辺環境への配慮です。特に、排煙や臭気、騒音などは近隣住民や他店舗からのクレームにつながりかねません。そうしたクレームが発端となり、客数や売上が下がってしまう可能性も。立地選び、店舗設計の段階から対策を徹底することが求められます。
衛生管理を徹底する
屋外では、虫などの異物混入が起こりやすい環境にあります。虫がつきやすい観葉植物などの手入れや床掃除をこまめに行い、衛生管理を徹底することも不可欠です。
ウィズコロナ、アフターコロナでも追い風に
近年、ビアガーデンの立地やコンセプト、営業形態が多様化したことで、多額の資金がなくても開業しやすい環境が生まれつつあります。コロナ収束の兆しが見えない状況の中、密を避けながらお酒を楽しめるビアガーデンは、引き続き需要の拡大が期待できる注目株の一つといえるでしょう。
さらに、アフターコロナを見据えると、屋外でお酒を飲むビアガーデンは外国人観光客にも好まれる業態でもあります。ビアガーデンのメリット、デメリットを理解した上で、飲食店開業の選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。ライター:上田はるか(フリーライター)
大学卒業後、輸入食品商社に勤務し、新規店舗の立ち上げや自社直営ティーサロンのメニュー開発を経験。その後、大手ギフト会社の企画開発部、広報宣伝部を経てフリーランスに。現在はWEB媒体をメインに、食ジャンルの原稿執筆を行う。この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。- NEW最新記事
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