外出時に一息つきたいときや、友人と会話を楽しむスポットとして重宝されるカフェ。開業したい業態としても人気が高く、自分でカフェを経営してみたいと考えている方も多いことでしょう。
しかし、カフェを開業するには物件取得費をはじめとした開業資金や運転資金が必要になり、その金額はオープンしたいカフェのスタイルによって異なります。
この記事では、カフェを開業するためにはどのような資金がどれくらい必要なのか、その資金の調達方法やカフェ経営の平均収入について解説します。
目次
カフェを開業するには?必要なステップ
カフェ開業までの重要なステップとして、
●コンセプトを決める
●事業計画書を作成する
●開業資金を用意する
といった工程を踏む必要があります。
もちろん、立地や物件を決めたり、内装、備品、必要な資格や提出書類の準備などもありますが、まずは、この3つを意識して、開業へと着手していきましょう。
関連記事 カフェを開業するには?開業資金や資格、失敗しないための準備について
コンセプトを決める
カフェを開業するうえでもっとも重要なのが、「お店のコンセプト決め」です。どのようなカフェを開業するのかによって、メニュー構成や価格設定、内装、立地などが変わってきます。
コンセプトはWhen(いつ)Where(どこで)What(何を)Who(誰に)Why(なぜ)、How(どのように)How much(いくらで)を表す5W+2Hに合わせて考えていくと良いとされています。この法則に合わせて、なぜカフェを開業するのか、どのような場所で、何を誰にいくらでどのよう形で提供していくのかを考えていくとスムーズかもしれません。
事業計画書を作成する
開業を検討している業種のビジネスの内容や、収益・経費の予測、経営プランを詳細に記載したものを「事業計画書」と言います。
事業計画書はこれからの開業・経営の道しるべになるほか、日本政策金融公庫や銀行などから融資を希望する場合には提出が求められるなど、さまざまな場面で必要な書類になります。借り入れを考えている場合は、事業計画書の完成度を高める作業にも取り掛かっていく必要があるでしょう。
canaeruでは無料で開業相談を実施しています。事業計画書の作成のお手伝いも可能です。お気軽にご相談ください。
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関連記事 事業計画書とはどんなもの?書き方や作成する目的を解説
開業資金を用意する
開業資金を全額「自己資金で賄う」ことができれば良いですが、そうではない場合、「日本政策金融公庫や銀行から融資を受ける」「親族や友人、知人から借り入れる」「クラウドファンディングを活用する」「投資家にサポートしてもらう」など、様々な方法を検討しなければなりません。
先述した調達方法の中でも、はじめての開業の場合は、日本政策金融公庫を活用する方法が一般的です。その理由として、日本政策金融公庫は新しい産業の誕生や育成を政策的に行っており、融資に積極的なうえに申し込みから1ヶ月ほどで融資が実行されるスピーディーさや利率の低さなども魅力です。新規開業者は資金の調達先として考えておくと良いでしょう。
未経験でカフェを開業するなら
カフェを開業するにあたって、調理師免許などは必要ありません。物件が決まっていれば「食品衛生責任者」や「防火管理者」資格の取得、「飲食店営業許可申請」、「開業(廃業)等届出書」といった申請書など、自身で開業する業種・業態に合わせた資格・書類を提出すればカフェ自体は未経験者でもオープンさせることができます。
しかしながら、先述してきているコンセプトや、立地、用意できる開業資金によってオープンさせることができるお店は大きく変化します。
コンセプトを考える、事業計画書を練る、資金を調達するといったこと以外にも、カフェで働き経験を積んだり、経営スクールに通う、立地を調査するなど、まずは開業準備を進めていくことが得策でしょう。
関連記事 カフェの始め方!必要な資格や成功のポイントを解説
カフェを経営するために必要な開業資金の内訳
カフェを経営するために必要な資金の内訳は、お店の立地や広さによって異なりますが、一般的に「開業資金」は500〜600万円程度必要と言われています。その内訳は主に下記になります。
項目 | 内訳 |
---|---|
物件取得費 | ・保証金 ・礼金 ・仲介手数料 |
内外装工事費 | ・設計費 ・材料費 ・インテリア費 ・各種外装費 |
設備費 | ・各種厨房機器 |
備品費用 | ・テーブル ・椅子 など |
宣伝費 | ・地域情報誌掲載費 ・チラシ制作費 ・チラシ印刷費 ・グルメサイト掲載費 |
その他雑費 | ・講習受講費 ・受験料 ・営業許可申請費用 など |
運転資金 | ・材料費 ・人件費 ・家賃 ・水道光熱費 など |
物件取得費
保証金(敷金)は家賃の6~10ヶ月分程度、礼金および仲介手数料がそれぞれ家賃の1~2ヶ月分程度必要なケースが多いようです。
また、工事などを行う関係上、実際にカフェをオープンさせる1~2ヶ月前から物件を取得しておく必要があり、その間の「空家賃」も必要になります。
内外装工事費
小規模〜中規模のスケルトン物件で開業するカフェの場合は、1坪あたり30~50万円の内外装工事費がかかります。(小規模な物件ほど工事費用の坪単価が高くなる傾向があります)
スケルトン物件は、内装・外装のデザインを自由にできる反面、一般的に居抜き物件よりも費用が高額になる傾向にあります。物件を決める段階で、内外装費の予算の上限はあらかじめ決めておきましょう。
また、以前に営業していたテナントの内外装や設備などを引き継いで使うため、初期投資が抑えられると人気の「居抜き物件」ですが、いくつか注意しなければならないことがあります。
●造作譲渡費がかかる
●レイアウトに制限がある
●内装を大幅に変更する場合や厨房設備を大きく入れ替える場合はスケルトンよりも高額になることがある
設備費
設備費は厨房機器などにかかる費用であり、経営したいカフェのスタイルによって金額が大きく変わります。カフェの構想によって上振れする可能性はありますが、一般的には200万円前後を想定しておくとよいでしょう。特別な機器を利用したい場合は、あらかじめ値段を把握しておき、その分の上振れを織り込んでおくのが賢明です。
備品費用
主に必要となる家具としてテーブルと椅子があります。費用を極力抑えるのであれば量販店で購入し自分で組み立てる方法もありますが、カフェの場合居心地の良さも評価ポイントとなりますので、あまりチープなものは避けたいところです。
ちなみに量販店で安価なものであれば4人掛けのテーブルと椅子のセットで3万円程度で入手可能です。他にも、食器などを揃えたり、会計時に使用するレジも必須です。
宣伝費
宣伝を行う範囲をどの程度まで広げるのかにもよりますが、目安としては20万円程度を想定しておくとよいでしょう。チラシを使ったりタウン誌に情報を掲載したりといった方法もありますが、SNSなどをはじめとしたインターネットを活用することで費用を抑えていきたいところです。
また、タウン誌への情報掲載にしてもSNSの発信にしても、メリハリをつけながら継続していくことが重要です。毎月3~5万円程度の広告宣伝費は見込んでおきましょう。
その他雑費
そのほか開業時にかかる費用として営業許可の申請費用、食品衛生責任者資格の受講費用、防火管理者資格の受講費用などがあります。想定している店舗にはどんな資格や届出が必要かを調査し、それにかかる費用を事前に調べておくようにしましょう。個人事業主であれば概ね5~10万円程度、法人であれば20~30万円程度を見込んでおいてください。
運転資金
運転資金とは、材料費や人件費など、日々の経営を続けていくためにかかるお金のことです。開業時は安定的な売り上げが見込めないこと、また事業主に不測の事態があった場合でもしばらくは支払いが可能な程度の資金は確保しておくべきです。「canaeru」では飲食店開業時の運転資金として仕入れ資金の1ヶ月分プラス必要経費の3~6ヶ月分を用意することをお勧めしています。
カフェのスタイル別、必要な開業資金の相場
賃貸店舗
賃貸店舗カフェはその名の通り、路面やビル内などにあるテナントを借りて営業を行うカフェです。
スケルトン物件であれば、内装や外装などにコンセプトやこだわりを反映できる点が魅力ですが、内容によっては工事費用が高額になることも。また、物件を契約する必要があるため、物件取得費が必ずかかります。場合によっては管理費が発生することもあるので、トータルの賃料などを事前に確認しておきましょう。
なお、以下掲載の開業資金はあくまでも目安です。個々の店舗によって条件が異なるため必ず見積もりを取り確認してください。
【開業資金シミュレーション(10坪を想定)】
項目 | 金額 |
---|---|
物件取得費 | 100~120万円 |
内外装工事費 | 200~400万円 |
設備費 | 120万円 |
備品費用 | 50万円 |
宣伝費 | 20万円 |
運転資金 | 150〜250万円 |
合計 | 640〜1,040万円 |
自宅
自宅でカフェ営業を行う場合、内外装工事のための費用は必要ですが物件取得費はかかりません。
物件を探す手間はかかりませんが、集客が難しい点や、建築基準法、都市計画法、各種条例等の要件
に合致しているかの確認が必要な点は念頭に置いておきましょう。
また、お店のオープンにあたっては、家族の理解や同意が必須です。騒音や集客でトラブルになることもある
ので、事前に近隣住民への説明も行っておいたほうがよいでしょう。
【開業資金シミュレーション】
項目 | 金額 |
---|---|
内外装工事費 | 100~300万円 |
設備費 | 120万円 |
備品費用 | 50万円 |
宣伝費 | 20万円 |
運転資金 | 100〜150万円 |
合計 | 390〜640万円 |
移動販売
移動販売カフェは、キッチンカーなどを利用して販売場所を自由に移動しながら営業するカフェです。
物件取得費はかかりませんが、その代わりに車両購入費用、改造費、ガソリン代
などが必要です。また、駐車場や公園をはじめとした各種施設の敷地内に出店する場合は、出店場所を借りるための出店料もかかります。
車両の中で仕込みを行うことができない場合は、別途仕込みスペースを確保する必要がある点にも注意しましょう。
【開業資金シミュレーション】
項目 | 金額 |
---|---|
車両費 | 200〜300万円 |
車両停車にかかる場所代 | 10万円 |
宣伝費 | 20万円 |
運転資金 | 100〜150万円 |
合計 | 330〜480万円 |
関連記事 キッチンカー(移動販売)で開業する方法がまるわかり!資格や許可・費用などを解説!
開業資金を抑えてカフェを開くためのポイント
カフェの開業には多くの費用が必要となります。しかし、運転資金の確保や開業後の返済などを考えると、少しでも開業費用を安く抑えたいと考える方もいるでしょう。
ここからは、開業資金を抑えてカフェを開くためのポイントを4つ解説します。
中古品やリースを利用する
調理などで使用する厨房機器やメニューを提供する際に使用する食器などは、必ずしも新品である必要はありません。中古品やリースによっては月数万円の費用で新品の厨房機器を導入できる場合もあります。(中古品のリスク、リース料は融資の利息に比べ高いことを理解の上ご利用ください)
自分で工事を行う
電気や水道工事などは専門業者に依頼しなければなりませんが、壁の張り替えや床の修繕などは自分でも行えます。ただし、相当な労力と時間がかかり、他にも開業するために必要な物事に時間がさけないデメリットがあります。
居抜き物件やフリーレントを活用する
「居抜き物件」とは、前の店舗の内装や設備がそのまま残った状態の店舗のこと、「フリーレント」とは、工事等で開業できない期間の家賃を無料にしてもらうことで、不動産会社や家主との交渉で認められることがあります。
SNSやホームページを活用して宣伝する
開店前からホームページやSNSで情報を提供するなどして、新規オープンするカフェの存在および、オープン日を広く知ってもらえるように心がけてください。特にSNSは、無料で利用できるものが多いにも関わらず、幅広い層にリーチできる非常に便利なツールです。
開業資金が足りない場合は融資を検討しよう
カフェをオープンするための開業資金が足りない場合は、日本政策金融公庫や銀行からの融資を検討しましょう。
「カフェを開きたい」との考えがあっても、自己資金で500万円以上の開業資金を捻出できる人は少ないのが現状です。そのため、カフェを含め飲食店をオープンする際には金融機関から融資を受けるケースが多くみられます。
開業時に利用する融資としては、日本政策金融公庫の「新規開業資金」の活用がおすすめです。原則無担保・無保証で自己資金の2~3倍程度の融資を受けることができます(自己資金以外にも審査基準があるので詳しくはご相談ください)。ただし、申請には創業計画書の作成が必要になります。
「canaeru」では、融資に関する無料相談を実施しています。資金面で不安な思いがある方はぜひお問い合わせください。創業計画書の作成サポートも無料で行っています。
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カフェの開業時に活用できる補助金・助成金
ここからはカフェ開業時に活用したい補助金・助成金制度を3つ紹介します。
補助金・助成金は支払った費用を後から補てんする仕組みであるため、開業資金の元手にはできない点には注意が必要です。
創業助成金(東京都)
創業助成事業は、東京都内で創業を予定している方や創業まもない中小企業を対象とした助成制度です。賃借料や広告費、備品購入費、人件費などを対象としているため、カフェ開業時も多くの費用をカバーできる可能性があります。
地方創生起業支援事業
地域の課題解決に貢献する新しい事業に取り組もうとしている方を対象に、都道府県が行っている支援策です。対象者は「東京圏以外の道府県又は東京圏内の 条件不利地域において社会的事業の起業を行う方」や「起業地の都道府県内に居住していること、又は居住する予定である方」などが挙げられます。助成額は最大200万円で、カフェ開業に必要なさまざまな費用に充てることができます。
若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)
都内商店街で新たに店舗を開業しようする女性または若手男性を支援し、商店街の活性化を図る助成事業です。女性(年齢制限なし)または、若手男性(年度末時点で39歳以下)の創業予定者か個人事業主が対象で、助成額は最大844万円と、カフェの開業資金を概ねカバーできる額となっています。
補助金、助成金は時期やエリアによって制度が異なります。自身が開業する地域の地方公共団体の関係部署に必ずお問い合わせください。
関連記事 【2024年】飲食店開業時に使える助成金・補助金は?
カフェを開業したあと、経営を成功させるには
収入の目安
個人経営のカフェの場合、店舗の規模、提供するサービスやメニューによって異なりますが、概ね150万円から400万円程度が平均年収となります。類似する店舗である喫茶店の場合、200万円から300万円程度が一般的となっており、喫茶店より収入が多いのが特徴です。
収入の計算方法
売上から原価(仕入れ費用)を差し引いたものが売上総利益(粗利)であり、さらにそこから人件費、家賃、水道光熱費などの経費を差し引いたものが営業利益となります。個人事業主の場合はここからさらに税金や借入金の返済を引いたものが自身の収入となります。
法人の場合は経営者の収入は人件費として計上するため、営業利益はあくまでも会社の利益という考えになります。
なお、以下の要素はカフェの経営を大きく左右するので、計画段階で綿密に考えて置く必要があります。
●立地
●座席数
●原価率
●価格設定
●客単価
●回転率
売上をアップするには
カフェの売上アップを狙う方法としては、
●座席数を増やして客数を伸ばす
●チラシなどの宣伝を強化する
●SNSに力を入れる
●メニューの価格を上げる
●メニューの価格を下げて回転率を上げる
●売上の柱となるメニューを開発する
など、様々な方法が考えられますが、これらをすべて網羅したとしても、売上が上がる保証はありません。
自店舗にはどういったお客様が多いのか、どのようなメニューが注文されやすいのか、ライバル店はどうかなど、様々な要素を検討、分析して、店舗にあった施策を施すべきでしょう。
固定費や経費を抑えるには
カフェ経営を成功させるためには、経費の削減や作業の効率化を図ることが重要です。
経費削減については、時間帯に応じてシフトを組むことで忙しいときに多くのスタッフを配置し、逆に手空きが発生しがちな時間はスタッフ数を減らすことで、人件費を抑えられます。一般的に、必要人員については座席数から割り出すことができます。
また、メニュー構成を見直す際にも同じ食材を他のメニューにも利用する、ポーションを調整するなどして原価率を下げたり、場合によっては付加価値をつけることによって値上げを行い利益率を向上させる方法も検討する必要があります。
作業効率化としておすすめなのが、マニュアル化です。最も効率よく調理できる方法を確立し、それをマニュアル化して誰でも同じ方法でメニューを作れるようにすれば、効率的に作業できます。
また、開業当初はいきなり多くのメニューを提供するのではなく、必要最小限のメニューからスタートして、徐々にメニューを増やすことでスタッフのレベルアップを図りながら顧客ニーズに応じることが可能です。
他にも、行動範囲をなるべく抑えるためにカウンター席をメインにする、スタッフ間の役割分担を明確にするなども有効です。
カフェ開業に必要な資金を把握してから行動を起こしましょう!
カフェを開業するにあたっては、物件取得費や内外装工事費をはじめとしたさまざまな費用が必要です。
開業資金を抑える、資金調達の見通しを立てる、かかる経費のシミュレーションを行うなどの取り組みを通して、きちんと経営を継続できる状態が整ったら、カフェの開業に踏み切りましょう。
カフェ経営に向けてどれくらいの資金が必要かわからない、物件選びに難航しているといった悩みを抱えている方は、開業支援サービスを利用するのがおすすめです。
飲食店などの開業支援を行っている「canaeru(カナエル)」では、抱えている悩みに応じて、起業経験者や金融機関・不動産業界出身者といった、さまざまな相手に相談することができます。
また、canaeruの運営元である株式会社USENは、国が定める経営革新等支援機関(認定支援機関)です。税務、金融および企業財務に関する専門的知識や支援にかかる実務経験が一定レベル以上ある支援機関として国に認められています。
不安や悩みをクリアにしたうえでカフェを開業したい方は、ぜひcanaeruの利用をご検討ください。
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この記事の監修
USEN開業プランナー
山下和幸
株式会社USEN 開業サポートチームに所属。銀行出身者でありながらグルメサイト会報誌の企画・編集を務めた多彩な経歴を持つ。
俯瞰的な視点での事業計画書の作成サポートや、飲食業界の知見を生かした適正な資金計画のアドバイスが強み。
【主なサポート内容】
・創業計画書の作成サポート
・事業計画書の作成サポート
・資金計画のアドバイス
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