一度は都会で就職したものの地元・島根に戻りゲストハウスを開業した熱田糸帆さんにインタビュー。なぜUターンでの開業を目指したのか、そしてゲストハウス経営の難しさ、楽しさについてお聞きしました。
Uターンと言っても特別な感じはしない。共同生活の経験がゲストハウス開業のきっかけ
ーー熱田さんはUターンの形でゲストハウスを始めたそうですね。
はい。地元は島根県出雲市ですが、大学は東京だったんです。昔から起業を考えていたのですが、大学卒業後はしばらく会社員として働いていました。当時、神戸のシェアハウス住まいで共同生活がとても楽しかったんですよね。この体験が今の事業を始めるきっかけになっています。その頃は出雲にはゲストハウスがなかったということも後押しになりました。

ーー最初からゲストハウスで起業することを考えていたのですか?
いいえ。最初はシェアハウスをやろうと思っていたのですが、借りた物件が旅館だったということもあり、建築基準法をクリアしていたので宿泊施設に路線変更してゲストハウスにしたんです。出雲観光の玄関口であるJR出雲市駅や温泉がすぐ近くにあることも好条件でしたしね。
「いとあん」の物件は戦後すぐに建てられた旅館で、昔ながらの作りを生かす形でリフォームを行っています。ゲストハウスを始めるにあたり借入はしていないものの、自己資金も限られていたので水回り工事だけは業者に頼んだのですが、それ以外の改装は仲間の手を借りながら仕上げていきました。家具などは不要なモノをいただいたり、リサイクルショップで購入。古い物件に新品は似合わないですし、そもそも出雲にはインテリアショップが少ないんです。あたりに転がっていることがわかっていたので、わざわざ新しく購入はしませんでした(笑)。

お客様にとっては非日常でもに自分は日常。だからこそ楽しくやろうと思っている
ーー宣伝や集客はどのように行っていますか?
利用しているのは「Airbnb(エアビーアンドビー)」のみですが、こうした予約サイトを少しずつ増やしていきたいですね。ほかには広告も兼ねてFacebookやインスタグラムを展開したり、ハガキ大のフライヤーをつくって観光案内所や全国のゲストハウスに置いてもらっています。ゲストハウスにはフライヤー文化があるので、互いに設置し合うことが多いですね。それにオーナーさん同士の繋がりもあるので、ゲストハウスのネットワークが構築されているんですよね。
ちなみにうちの利用者の2割は外国人旅行者なのですが、その内訳はヨーロッパとアジア。特にアジアは台湾の方が多いですね。基本的にアジアの方はどこに寄るのか調べてから来ることが多いのですが、ヨーロッパの方は旅の途中で宿泊先を見つけてふらりと立ち寄り、そのまま、2、3泊されるというイメージです。海外では出雲大社よりも石見銀山の方が有名のようで、出雲大社はついでに行く、というパターンが多いかもしれません。

ーーゲストハウス事業のやりがいや楽しさはどのようなところにあるのでしょう。
まず想像以上に接客業の大変さを感じました。お客様がチェックインしてから寝るまでの間に何かしらのハプニングが起きることも多いですし、ホテルとゲストハウスは違うので、その対応も一筋縄ではいきません。
もちろん大変といっても、それを上回る楽しさがあります。ゲストハウスは見知らぬ者同士が共同で宿泊するので、気持ちよく過ごしてもらうためにもルールはしっかりと守っていただいていますし、そもそもゲストハウスの利用に慣れている方が多いので、その辺りのモラルやリテラシーが高いですね。お客様にとって「いとあん」に滞在する数日間は非日常かもしれませんが、スタッフの私にとっては日常です。たとえるなら、パーティーが毎日続いているような感じでしょうか(笑)


ーーオーナーとして今後、手がけてみたいことはありますか?
やはりシェアハウスは本格的にやってみたいです。住居だけでなく家事もシェアして家族みたいな暮らしができるようなシェアハウス。その方がお互いの時間も短縮できるし、効率的に楽しく暮らせると思うのです。うちはすでに空きスペースに5人ほど住んでいるのですが、入れ代わり立ち代わりでいろんな風が吹くので、日々勉強になるし新しい発見も多いですね。



■ 他サイトの熱田糸帆さんの記事 > 出雲人 -IZUMOZINE-