フェンスで囲まれた敷地内にはトレーラーハウスが何台も並べられていて、まるで近未来のような異空間。そのなかにキッチンカーと食堂車の2台のトレーラーハウスで営業するカフェ「ガレージランドチコ」があります。その自由でありながらこだわりを感じる運営スタイルには、トレーラーハウスでの店舗経営を目指す方にとって参考になるアイデアが散りばめられています。オーナーの田口正浩さんに話を伺いました。
トレーラーハウス販売業と合わせてカフェを経営。その経緯とは?
――トレーラーハウスでカフェを開業するにいたった経緯を教えてください。
もともと僕がエアストリーム(トレーラーハウスの老舗メーカー)の販業業をやっていて最初は自分でカフェをやる気はなかったんですけど、たまたまお客さんからキッチンカーの買い取りを頼まれたんです。そのまま転売しようかとも思ったのですが姉がもともと飲食店で働いていたこともあってお店をやってみたいということだったので、それなら面白そうなのでやってみようかと2017年6月にスタートしました。うちではキッチンカーの隣にもう1台大きめのトレーラーハウスを食堂車として置いているんですけど、実は食堂車はモデルルームも兼ねていて、いつでも販売できる状態にしています。そういう理由もあって購入した方の要望でいかようにも作り込めるように車内の内装はなるべくフラットな状態にして、家具だけ置いています。

――キッチンカーで飲食を提供する上で工夫している点はありますか?
キッチンカーの大きなネックは下水の問題になってくるので、洗い物を出さないようになるべく捨てられる容器を使っています。ただ、うちでは40Lのタンクを備え付けているんですけど容量を100Lにすると普通の食器も洗えるので、キッチンカーのサイズや必要な設備によって洗い物が可能な場合もありますし、そこは変わってくると思います。キッチンカーで料理を仕込む際にはあまり水が使えないという制限もありますがそれ以外は普通のキッチンと変わりないので、そのなかでできるだけ美味しいものを提供したいと考えてメニューも考えています。

発想は映画から?トレーラーハウスカフェのメニューの決め方?
――変わったメニューが多いですが、どのように決めたのでしょうか?
メニューに関しては僕がやりたいたものを姉が具現化してくれています。お店をやると決めたときに姉に「キューバサンドとキューバコーヒーをやってくれ」とお願いしたんですけど、そのときに「この映画を観てくれ」と『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のDVDを渡して、姉にキューバサンドを知ってもらうところから始めました(笑)。パンは姉が好きなパン屋さんにお願いしていて具材のお肉は自家製で、あとは近くのコストコなどで調達してます。コーヒーに関しては僕自身キューバが好きなのでキューバ産100%の豆クリスタルマウンテンを使っているんですけど、さっぱりして味のバランスも良いので日本人の口にも合うと思います。本当は原価が合わないぐらいのいい豆なんですけど(笑)、トレーラーハウスを売るためのモデルハウスでもあるのでリーズナブルに提供しています。それからもうひとつの看板メニューのガンボ(スープ)に関しては僕がニューオリンズが好きで若い頃にちょくちょく行っていて、そこの郷土料理なのでメニューに組み込みました。本場と比べたら日本仕様になっているんですけどガンボ自体いわゆる"ゴッタ煮"で特に定義もないので、ガンボということだけは意識しつつ好きにやらせてもらっています。
SNSが集客に繋がっている!
――集客のための販促としてはどんなことをしていますか?
SNSを見て来られるお客さんがかなり多いのでそれは重要だと思っています。半分ぐらいは姉がアップしているんですけど、あくまでトレーラーハウス押しなので車体の銀色を入れて撮ったり、エアストリームの特徴的なところを見せるようにしています。エアストリームに興味があって来るお客さんも結構多いので。あとは直接的な販促ではないかもしれませんがカフェの営業時間内でワークショップなどでのスペース貸しをしていて、内容にもよりますが、食事メニューを取ってもらえればレンタル料などは取っていません。店内ではハンドメイドの食器やアクセサリーなども売っているので、それも集客につながればと考えています。

――キッチンカーで営業していく上で大変だった点はありますか?
キッチンカーは天候によってお客さんが全然来なくなるので、客足が普通の店舗よりも読めないんです。でも来てくれたお客さんにはちゃんとしたものを提供したいので姉もそこは試行錯誤の連続だったようですけど、1年弱やっていくなかでようやく掴めてきました。例えばガンボにしてもスープに入れる野菜は提供する当日に入れるのですが、スープのベースは一週間分ずつ仕込んで冷凍保存しています。食材はたくさん作ってもロスになっちゃうのはもったいないので冷凍するのも手ですし、お客さんの数によって臨機応変に出せるように仕込みなどを工夫したほうがいいのかもしれません。
――営業時間が14時までと短いのはなぜですか?
あくまで僕は店に立たないので全部姉とその友人にまかせているんですけど、姉は主婦で子どもがいるので平日の昼間、子どもが学校に行っている間しかできないという事情があるんです。でも夜もたまに貸し切りはやっていますし、今後は夜の展開も考えています。夏は滑走路が開けていて気持ちいいのでビアガーデンとかも企画したいなと思っています。

トレーラーハウスを集めて商業施設を作りたい!
――今後の展開について考えていることはありますか?
トレーラーハウスを10台ぐらい置いた商業施設を作りたいなと考えています。そこではカフェをやりたい方も、雑貨をやりたいという方も、居酒屋をやりたいっていう方でも集まれるような商業スペースを提供できる側になりたいんです。実際、土地は準備できていて、役所の方とも話をして法律的にある程度方向性はまとまりそうなので、ここ1、2年の間に実現したい目標ですね。