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パン屋(ベーカリー)開業の厳しい現実 失敗しないために知るべきこと

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パン屋に憧れて開業を目指す人は少なくありません。化学メーカーのクラレが毎年調査している新小学一年生向けのアンケートでは、「将来就きたい職業」として1999年から2019年まで20年間に渡って1位を獲得しています。
いわば不動の人気職業と言えるパン屋ですが、漠然と「子どものころからの夢だったから」と勇み足でパン屋を開業しようとすると、待ち受けている厳しい現実に打ちひしがれることになるかもしれません。
パン屋を取り巻く市場環境や開業失敗の原因といった基礎知識の理解を深めていくことで、開業失敗のリスクを軽減することができるでしょう。

パン屋の市場状況

パン食の需要は年々増加している

パン屋の需要と市場規模は年々増大し続けています。総務省統計局が公開している「経済センサス(平成28年版)」によると、パン屋の市場規模はここ数年で150%近くも伸びており、2012年に3,125億円だった商品売上総額は2016年には4,723億円まで成長しています。
また、農林水産省による「家計における主食的食糧」の調査結果では、昭和56年より米の購入数量が減少の一途をたどっているのに対し、パンの主食的食糧の割合は相対的に高まっており、今後もパン食志向は年々増加していくでしょう。

競争が激しい

「経済センサス(平成28年版)」によれば菓子・パン小売業の事業所数は61,922軒にも及びます。日本のコンビニの店舗総数が55,633店であることを考えると、コンビニ以上にパン屋があるということになります。
また、コンビニやスーパーでもパンは買うことができます。そのためライバルは同業者だけでなく、食品を扱っている小売店全般と言えるでしょう。
日本政策金融公庫の調査によれば、新規開業を行った事業主のうち47.3%もの人が開業後に苦労していることとして「顧客・販路の開拓」を挙げています。調査結果の中でも最も多くの人が抱えている課題であり、特にパン屋のようにライバルの多い業態では、顧客や販路を獲得するのは非常に重要な課題と言えるでしょう。
こうした競争を勝ち抜いていくためには、単においしいパンを作るだけでなく、競合店との差別化や集客なども行う必要があるでしょう。

パン屋開業の課題とは?

開業資金が高額

パン屋は飲食業の中でも開店資金が高くなりやすい傾向にあります。お店の立地や設備の充実度にもよりますが、新規開店の場合およそ1,000~2,000万円程度の資金が必要になるケースが多いようです。日本政策金融公庫の調査によれば、2018年度の開業資金の平均額は1,062万円なので、多くの場合平均を上回る資金が必要になるでしょう。
これは冷蔵庫やフライヤー、流し台といった一般的な厨房設備のほかに、業務用オーブンをはじめとしたパン屋ならではの厨房設備が必要になることと、それらの厨房設備を備えた厨房スペースを確保する必要があるからです。
特にパンを焼くために必須である業務用オーブンは、新品で購入すれば300~500万円ほどの費用がかかります。他にもパン生地を作るための業務用ミキサーや、パンを発酵させるためのホイロ(発酵器)などの厨房設備が必要不可欠と言われており、店頭で扱うパンの種類によってはさらに設備が必要になります。
また、一般的な飲食店の厨房面積は全体面積の30%~40%ほどですが、パン屋の場合はこうした厨房設備の多さから厨房面積が店舗全体の面積の50%以上を占めることもあります。厨房設備の多さから物件に必要な最小面積も広くなりやすい傾向にあり、物件取得にかかる費用や賃料がかさみます。

客単価を上げにくい

パン屋を経営する事業主の抱える課題に、客単価を上げにくいというものがあります。
総務省の「家計調査 2016年~2018年(二人以上の世帯)」を見ると、日本でパンの消費量・消費金額が最も多いといわれる神戸市でも、各世帯のパンの購入金額の平均は2年間で37,951円となっています。各世帯につき1日当たり50円分程度しかパンを購入していないということです。客単価が少ないということは粗利も上げにくく、お店として得られる利益は小さくなります。そもそもの客単価が低く、さらに人々の食生活に深く根付いていて購入機会が頻繁だからこそ、値段そのものも上げにくいのです。
実際、たまの贅沢として少し高級なパンを購入することがあったとしても、毎日のように1000円、2000円分のパンを購入するというお客様は決して多くはないでしょう。よって、パン屋は高単価の商品を販売するよりもいかに多くの商品を販売するかが重要な、いわゆる「薄利多売」のビジネスモデルで経営している事業者が多いと言えます。

パン屋は決して「儲かる仕事」とは言えない

厚生労働省の「平成29年賃金基本統計調査」によると、パン・洋生菓子製造工(パン製造小売業)の平均年収は319.1万円とされています。それに対し、国税庁の公表している「平成29年分民間給与実態統計調査結果について」では日本人の給与の平均は432.2万円となっており、比較するとパン屋の所得水準は決して高いとは言えません。
前述のとおり、パンという商材の性質上客単価を上げにくいことに加え、帝国データバンクの調査によれば、原材料である小麦やバターの価格の高騰や人件費など事業を運転するために必要とされるコストが増えていることから、パン屋の利益は減収傾向にあるという結果が出ています。
これらのことから、「お金を儲けたい」という考えでパン屋を開業すると理想と現実のギャップを感じることになりそうです。

パン屋開業を実現するために

パン屋は多くの人にとっての憧れの職業ではありますが、必ずしも理想通りに経営が上手くいくとはいかないでしょう。
しかし、パン屋を開業した先駆者の失敗の原因を探ることで失敗しないために行うべきことを具体的にすることは可能です。資金面、経営面の両方から、パン屋の開業をするために必要なことを考えていきましょう。

資金調達を行う

1,000万円以上かかると言われるパン屋の開業資金を自己資金だけでまかなうのは難しいですが、日本政策金融公庫が行っている「創業融資制度」や、政府が事業を行っている民間企業に対して給付している補助金や助成金を利用することで、開業資金を一部調達することができます。
特に日本政策金融公庫が行っている創業融資制度は事業主にとってメリットの大きい制度です。日本政策金融公庫は財務省所管の金融機関で、政府機関の政策として融資を行っているため、銀行などの民間の金融機関と比べると積極的に融資に取り組んでくれます。
また、原則として無担保・無保証人でお金を融資してくれることもポイントです。このため、もしも事業が立ち行かなくなってしまった場合でも、事業主が返済責任を負うことはありません。
これらの制度を利用することで、リスクを減らしながら資金調達を行い、パン屋の開業を目指すことができます。

開業費用を抑える

パン屋は開業コストが高くなりやすいという点が課題ですが、中古の厨房機材を揃えたり、パン屋の居抜き物件を利用したりすることで、開業費用を安く済ませることができます。特に厨房機器や設備などを引き継げる居抜き物件を利用できれば、開業費用を大幅に抑えることも可能です。
設備を引き継ぐ際には、前に物件を利用していた人に「造作譲渡費」という設備購入費を支払う必要があります。造作譲渡費は物件の前のオーナーが自由な金額を提示できるため相場はありません。しかし、ゼロから開業するのと比べると低コストで店舗を取得することができるでしょう。
こうした居抜き物件を見つけられるかどうかは運によるところも大きいですが、不動産会社などに相談しつつ、物件情報に目を光らせておくようにしましょう。
あるいはキッチンカー(移動販売車)などを利用し、移動式ベーカリーで開業を行うというのも手です。キッチンカー自体を入手する必要はありますが、レンタル業者を利用したり、中古車を購入したりすることで、店舗を持つのと比べて割安で開業を目指すことができます。
なお、移動販売を行うにあたっては、食品衛生責任者の取得のほかに保健所の許可が必要になるので、費用を抑えられる代わりに必要な手続きが少しだけ増えることになります。

事業計画を練る

競争も激しく、薄利多売のビジネスモデルのパン屋を開業して利益を上げるためには、固定客を掴んでリピーターを増やすことが重要と言えます。そのためには、パン屋を利用する顧客を把握するマーケティングの知識も必要になってくるでしょう。
自分がお店を開こうと考えている土地の周辺環境をチェックすることも、開業に向けた大事なマーケティングの一歩です。実際に近隣の競合店などに来店されているお客様などを参考に、どのような層のニーズが見込めるのかを調べてみましょう。ライバルはパン屋だけとは限らないので、そのほかの飲食店の状況も把握しておくべきです。
たとえばファミリー層の来店が多いなら、日常的にパンを購入されるお客様も多いでしょう。あるいはビジネス街であれば、サラリーマンがランチを購入するために来店する可能性があります。こうした店舗を構える場所の市場調査を通して、ニーズにマッチする商品やサービスを考えていく必要があります。
おいしいパンを作るだけでは、必ずしも事業がうまくいくとは限りません。開業失敗のリスクを抑えるためには、来店する顧客の予測を立てたうえで、客単価や来客数といった指標を用いて月の収益予測を立て、地に足のついた事業計画を考えていくことが必要です。

開業を実現するために

パン屋の開業は課題も多いですが、だからといって開業の夢を諦めてしまっては本末転倒です。開業資金の調達方法なども、この記事だけではご説明しきれていない様々な方法がありますし、canaeruではそうした情報をお伝えするセミナーも開催しています。
まずは「何をすべきか」「どんなことを考えていかなければならないのか」といったことを知ることから始めていきましょう。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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