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「カンピロバクター食中毒」による飲食店営業停止処分の実態とは?

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近年、増加の一途をたどるカンピロバクター食中毒。
厚生労働省によると、患者数は年間2000~3000人ほどで、その多くが生肉や十分な加熱がされていない鶏肉料理を提供した飲食店で発生しているというのです。
なぜここまで増えてしまったのでしょうか。
原因のひとつには鶏肉にまつわるリスクが周知されていないことがあるようです。
飲食店にとってカンピロバクターに限らず食中毒が発生してしまった場合、店の存続に関わる深刻な事態になりかねません。
鶏肉のリスクとはいったい何なのか、しっかりと把握することが大切です。
ここではカンピロバクター食中毒の説明とその予防策について説明していきます。

カンピロバクターとは?

季節問わず発生しているカンピロバクター食中毒。
日本では1983年に新たな食中毒菌に指定され、近年では発生件数が増加傾向にあります。
カンピロバクターとは牛、豚、羊、ヤギなど多くの動物の消化管内に生息する菌。
特に保有率が高いのが鶏などの家禽で、食肉に加工する段階の洗浄でも取り除くことが非常に困難だと考えられています。
そのため、市販されている鶏肉には高い確率でカンピロバクターが存在し、生や加熱不足の鶏肉を食べた場合に食中毒を引き起こします。
また菌に汚染された調理器具や手指を介して二次的に汚染された食品を食べてしまうこともカンピロバクター食中毒の原因に。
潜伏期間は2日から7日ほどで腹痛、下痢、嘔吐、発熱などの症状が現れ、1週間ほど続く傾向にあります。
他の食中毒に比べて症状が強く、下痢に血液が混ざったり、高熱が出ることもあるようです。
特に幼児や高齢者や重症化しやすいので注意が必要。
カンピロバクターによる死亡は稀ですが、感染した数週間後に「ギランバレー症候群」(※手足の麻痺、顔面神経麻痺、呼吸困難等などを起こす)を発症したケースも出ています。

カンピロバクターとは?

実は法規制されていない鶏肉の生食

2011年に焼き肉店で出されたユッケを食べた181人が食中毒を発症し、5人が亡くなるという痛ましい事件がありました。
その後、国は牛のレバー、豚は肉もレバーを生食用として販売・提供を禁止したのは広く知られた話です(牛のユッケは生食用の規格基準を満たした場合のみ可能)。
牛や豚のレバーには感染すると死に至る腸管出血性大腸菌やE型肝炎ウイルスに汚染されている可能性があるためですが、鶏肉はカンピロバクターに汚染されていても死亡リスクが低いこともあり、現在までに生食の提供は禁止されていません。
こうした背景もあり、牛や豚の代替品として鶏の刺身やタタキなどの料理が増え、鶏肉は新鮮なら生でも食べられるとの誤った認識が広がったものとみられています。

カンピロバクター食中毒でもちろん営業停止

厚生労働省によると、2015年の細菌性食中毒の年間発生件数の約6割をカンピロバクターが占め、ワースト1位でした(年間300件、患者数約2,000人)。
同年に発生したカンピロバクター食中毒のうち、生または加熱不十分な鶏肉を提供した91件の飲食店などが営業禁止や停止等の処分を受けています。
また翌年の2016年には屋外イベントで提供された加熱不十分な鶏肉によって、500名を超える大規模食中毒が発生しています。
カンピロバクターによる食中毒発生件数は依然として高い傾向にあり、その発生源の多くが加熱用と表示されている鶏肉を生や加熱不十分のまま提供してしまった飲食店であることがわかっています。

カンピロバクター食中毒でもちろん営業停止

悪質な飲食店には懲役や罰金も

こうした事態を受け、厚生労働省では2017年に処理や卸売業者に対して、飲食店に卸す鶏肉に「加熱用」などの表示を徹底し、飲食店についてもそれらの表示を確認し、鶏肉には加熱が必要であることをしっかりと認識するよう通知を行いました。
しかし、その後に発生した食中毒を調べたところ、加熱用の表示があったにも関わらず生や加熱不十分のまま鶏肉料理を出していた飲食店が約半数以上に上っていたことが判明。
事態を重く見た厚生労働省は翌年、鶏肉が加熱用と知りつつ刺身やたたきなどの生食メニューを提供して食中毒を何度も発生させた飲食店には食品衛生法違反で告発するよう全国の自治体に通知を出しています。
同法違反が適用された場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。
カンピロバクターによる食中毒は鶏肉料理を提供する店側の勉強不足や意識の低さが引き起こしてしまうといっても過言ではないかもしれません。
万が一、お客様に求められたとしても、リスクを説明した上で毅然とした態度で断るべきです。

鳥刺しは危険?冷凍しても意味なし?カンピロバクター食中毒を起こさない調理方法とは?

カンピロバクター食中毒を引き起こすからといって、鶏肉を食べるのは危険ということではありません。
問題なのは生で食べたり、十分な加熱をしていなかった場合、カンピロバクターが付着した手指や調理器具で調理をしたことで二次感染してしまった場合です。
またカンピロバクターは少ない菌量でも食中毒を起こすため、鮮度がいいから安心・安全に食べられるということはありません。
むしろ食肉用に処理した後の鶏肉ほど菌が多く付着しているともいわれています。
カンピロバクターは冷蔵または冷凍温度下でも長期間生存し続けますが、加熱することで死滅します。
お店で鶏肉を扱う際、食中毒を防ぐ方法は次を参考にしてください。

■加熱用や用途不明の鶏肉を生食用に使用しないこと
■75度以上、1分以上で加熱調理しましょう。目安は肉の中心部が生肉の色から白色への変化。
■表面をあぶるだけだったり、湯にさっとくぐらせる「湯引き」程度ではカンピロバクターは死滅しない
■鶏肉は他の食品と調理器具や容器を分けて、処理・保管をすること
■鶏肉を扱った後は十分に手を洗うこと。水洗いや石鹸で1回洗う程度では菌を除去できないので、ポンプ式液体石鹸での2度洗いが効果的
■鶏肉に触れた調理器具などは使用後に消毒・殺菌をすること。まな板やふきんなどは洗剤で洗った後に熱湯をかけ、日光に当てることも効果的
■鍋物や焼き肉を提供する場合、お客様には鶏肉専用の箸かトングを使用してもらい、肉と野菜は別の皿に準備をすること

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卵にカンピロバクターは付着しないのか?

現在までに卵を食べたことによるカンピロバクター食中毒は報告されていないため、問題ないと考えられています。
カンピロバクターは乾燥に弱いため、卵の殻に菌が付着してもすぐに死んでしまうからです。
むしろ卵で注意すべきはサルモネラ菌。
カンピロバクターとは逆にサルモネラ菌は乾燥に強く、殻に付着した菌が卵の中に入ってしまうことがあります。
また購入後の卵を冷蔵庫に入れなかったり、割った状態のまま常温で放置してしまうと菌が増えて食中毒を起こす可能性も。
卵の生食に関しては高齢者や幼児など抵抗力の弱い人は避けた方がベターですが、鶏肉同様、しっかりと加熱調理すれば食中毒を防ぐことができます。

※参考:厚生労働省、東京都福祉保健局、内閣府・食品安全委員会

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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