カフェと喫茶店。なんとなく古いのが喫茶店で、新しいのがカフェ。あるいは、店内の雰囲気が明るいのがカフェで、照明はほの暗く、落ち着いた雰囲気を持っているのが喫茶店、というように、どちらも“なんとなく”のイメージで使い分けている人が多いのではないでしょうか。
スターバックス、タリーズ、ドトールはカフェ?喫茶店?
実は、カフェと喫茶店には、法律の定義があるのです。
カフェと喫茶店、あなたのイメージは?
カフェと喫茶店は、どちらもコーヒーや紅茶などの飲み物と、サンドイッチなどの軽食を提供するという点では共通しています。
大切な人とおしゃべりを楽しむことのできる空間、あるいは、ひとりで静かに過ごすことのできる空間という点でも共通しています。
となると、やはりカフェと喫茶店で異なるのは“なんとなく”のイメージだけなのでしょうか?
それぞれが持つ“なんとなく”の特徴をあげつつ、比較していきましょう。

カフェの持つイメージ
・明るい照明のもと、軽快な音楽が流れている
・オープンスペースにテラス席がある
・限定スイーツや、おしゃれな“カフェ飯”が楽しめる
・バリスタがいる
・テイクアウトができる
・料金先払いのセルフサービス
・海外のおしゃれな雑誌や本が置いてある など
喫茶店の持つイメージ
・ほの暗い照明のもと、落ち着いた雰囲気のクラシックやジャズなどが流れている
・カウンター席とボックス席がある
・ナポリタンやフルーツサンドなどの昭和テイストのメニューがある
・マスターがいる
・テイクアウトができない
・料金後払いで、注文したものは席まで運んでもらえる
・新聞や漫画が置いてある など
このようなイメージを持っている人が大多数ではないでしょうか。では経営側から見た場合、カフェと喫茶店には明確な定義はあるのでしょうか?
実は法律で定められている!カフェと喫茶店の違いとは?
イメージの違いでなんとなく分けられることの多い“カフェ”と“喫茶店”。
しかし、法律の上では「営業許可」の取得の違いで明確に分かれます。
ご存知のとおり、カフェや喫茶店などの飲食店を開業する際は、だれもが好き勝手にオープンできるわけではなく、まずは「営業許可」を取得することが前提となります。
ここで、注目したいのが「食品衛生法施行令第35条(営業の指定)」 における「飲食店営業」と「喫茶店営業」のふたつの項目。さっそく詳しく見ていきましょう。

法律上の「飲食店営業」とは?
「食品衛生法施行令第35条(営業の指定)」における“飲食店営業”については「一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフェ、バー、キヤバレーその他食品を調理し、または設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号(喫茶店)に該当する営業を除く」とあります。
つまり、“飲食店営業”として許可を得ている“喫茶店”を除いた、以上のような営業形態の場合は、アルコール類やフードメニューを提供しても問題ないということになります。
法律上の「喫茶店営業」とは?
一方、“喫茶店営業”については「喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう。」とあります。
つまり、喫茶店は“酒類以外”の飲み物と“茶菓”であるケーキやフルーツなどを提供する営業を指すこととなるため、アルコール類やスイーツ類以外の飲食物の提供は基本的に不可ということになります。
本格的な調理ができるのはカフェ
カフェは飲食店営業になるので、本格的な調理をしてお客様に提供することが可能です。しかし、喫茶店営業では温める程度の加熱料理しか認められていません。今後開業を目指すにあたってどういったメニューを提供するのかによって、取得する営業許可も変わってくるでしょう。
喫茶店だけどカフェ、カフェだけど喫茶店?
しかし、ここで素朴な疑問も生まれます。喫茶店で出されるメニューの代表格であるナポリタンやカレーライス。
どちらも“茶菓”と分類するには、無理があるように思えます。
また、昔ながらの喫茶店のウリは、トーストやゆで卵が付いたモーニングセットである場合も。
これらのフードメニューを出している喫茶店はすべて違法営業なのでしょうか?
その答えは、もちろんNO!というのも、飲食店許可を取っている場合、“カフェ”と名乗ることも、あるいは“喫茶店と名乗ることも自由なのです。
そのため、喫茶店だけどカフェ、カフェだけど喫茶店といった店は、実は多数存在しているのです。

スターバックス、タリーズ、ドトールはカフェ?喫茶店?
スターバックスやタリーズなどのシアトル系コーヒーチェーン店は、どちらかというとカフェというイメージが強い一方、日本で昔から馴染みのある、大手コーヒーチェーン店のドトールは、喫茶店というイメージがやや強いかもしれません。
しかし、最近のドトールは、フロアも広く明るい内装の店舗が増えたため若い世代ではむしろ、カフェというイメージを持っている人も多くいるようです。
また、いずれの店のメニューを見ても喫茶店というより、カフェといったほうがしっくりくるかもしれません。

純喫茶の“純”とは?喫茶店と純喫茶の違いはあるの?
昔ながらの喫茶店といっても、その種類はさまざま。時代の流れとともに日本の喫茶店は今も変化を続けています。
個人店では避けられない後継者問題などもあり、年々減少しつつある“純喫茶”も時代の流れとともに生まれた喫茶店のひとつのスタイルです。
明治の末期頃、パリのカフェにならい、文化人が集う社交場として広まっていったカフェの文化。
その元祖と言われるのが大阪の箕面市でコーヒーを提供する「カフェー・パウリスタ」です。
また、同時期に東京・銀座では「カフェー・プランタン」が開業。
このカフェー・プランタンのウリは女性による給仕。カフェの本場パリでは、給仕はすべて男性だったのに対し、カフェー・プランタンでは、給仕は女性に任されました。
これを機に、女性による接客をメインとした店が多く見られるようになっていきました。
昭和の初め頃には、そのような形態のカフェが「特殊喫茶店」と称され、男性客を中心に評判を呼び、一大ブームに。
その一方では、アルコールを扱うことなく、また、女性による接客に一切頼ることのない喫茶店本来の姿に立ち返ったお店を“純喫茶”と呼ぶようになり、日本の喫茶店およびカフェ文化は、二極化が進みました。
今、再評価される“純喫茶”
新しいカフェ文化の形としてここ数年、注目される“サードウェーブコーヒー”。
このようなサードウェーブコーヒーの流行を受け、コーヒー愛好家たちの間では、アルコールやフードに頼らずコーヒー1杯で勝負する、昔ながらの喫茶店スタイルを再評価する動きが出ています。この「昔ながらの喫茶店」こそが“純喫茶”です。
そもそも、“サードウェーブコーヒー”の1杯ずつ丁寧にハンドドリップするスタイルは、日本の純喫茶文化からインスパイアされたもの。
サードウェーブコーヒーをこよなく愛する“サードウェーブ系”の若者も、最近では、レトロな雰囲気が魅力の“純喫茶”の写真をインスタなどのSNSに、より多くアップする傾向にあり“純喫茶”がオシャレなスポットとして、再注目されています。
一般に、女性目線やおしゃれな感覚が必要と言われるカフェ経営。
しかし、今も変わらず営業を続ける昔ながらの“純喫茶”に再注目してみると、長く愛され続ける経営のヒントが見つかるかもしれません。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。