そもそも、一般的な世帯平均所得は?
飲食店オーナーの平均年収を知る前に、国民の平均年収を知っておきましょう。
厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の概況」(2018年)によると、全世帯平均の所得金額は552万3000円。
これは年金に頼る低所得の高齢者世帯や配偶者がパートなどで家計を支えている比較的高所得世帯も含まれています。
純粋にサラリーマン個人の所得となると国税庁の発表による「平成30年の全給与所得者の平均年収」は441万円となっています。

飲食店オーナーの平均年収はサラリーマンを上回るのか?
「日経レストランONLINE」が実施した調査によると、オーナーシェフや個人飲食店経営者の平均年収は627万円となっており、これは世帯平均所得や全給与所得平均年収と比べて高い数字です。
また、店舗経営者の世帯平均は940万円と、国民の世帯平均の額と比べ、2倍近く多いということになります。
しかし、これが赤字店オーナーになると、平均年収は黒字店オーナーの半分以下、300万円という結果に。
「年収200万台もザラ」とも言われています。
客単価が高い飲食店ほど平均収入は高くなるのか?
では、どうしたら平均収入を増やすことができるのか。
客単価が高ければ、平均収入も増え、ゆえに儲かるのでしょうか?
飲食店の売上を表す式「売上=客数×客単価」にあてはめてシュミレーションしてみましょう。
例えば、客単価が1000円のA店と3000円のB店を比較すると
【A店】1日30人の来店で30人×1,000円=1日30,000円、月25日の営業で月75万円の売り上げ=年900万円
【B店】1日30人の来店で30人×3,000円=1日90,000円、月25日の営業で225万円の売り上げ=年2700万円
単純計算では客単価が3倍になれば、売り上げも3倍になります。
しかし、先ほどの式をもう少し分解すると「売上=席数×回転数×客単価」となるので、回転数は客単価の低いファストフードやラーメン店では、1日10回以上回転することも多いですが、逆に高級料亭のようなお店では1回転ということも珍しくありません。
つまり、必ずしも客単価が高い飲食店ほど収入が高いというわけではないと言えるのです。
ただ、客単価を上げることは売り上げを増やすことにつながることは事実です。
例えば、先ほどのA店で客単価を200円上げれば、
【A店】1日30人の来店で客単価が1,200円、30人×1,200円=1日36,000円、月25日の営業で90万円の売り上げ=1,080万円
上記の計算の通り、180万円も年間売上を増やすことができます。
しかし、客単価を上げるにはリスクがあり、競合との価格差など、安易に値段を上げるだけではお客様の不満足に繋がってしまうからです。
客数が減れば当然、売上も減ってしまいます。

繁盛店で行われているオーナー年収を上げる方法とは?
簡単に言えば、お店の売上が上がれば、飲食店のオーナーの所得も上がります。
つまり、地道な作業のようですが、日々、売上を上げる策を考え、投じていくことが、所得アップへの実は近道だったりするのです。
では、例えば、どんな施策があるでしょうか。
繁盛店でやっている売上を上げる策を調べてみました。
オススメ商品の導入
メジャーなのは季節限定のメニューの導入。
その時にしか食べられないというプレミアムがつくので、通常商品よりも高い値段を設定することが可能です。
追加オーダーの促進
グラスが空くタイミングでドリンクの追加注文を促したり、食事が終わるタイミングでデザートをおすすめすることで客単価アップに繋げることができます。
注文の多い商品の値上げ
他の商品を値上げしなくても、注文の多い商品の値上げだけで、客単価アップが可能です。
割高感が出ないように二番目に注文率の高い商品を値上げするなど、値上げと値下げを上手く組み合わせるとより効果的です。
宴会メニュー導入
宴会には必ず予算があります。
それに合った宴会を提案することで、通常より高い客単価に設定することができます。
ちなみに、飲み放題プランは客単価が上がりますが、利益率が下がるので注意が必要です。
収入を得られるオーナーになるためには?
収入を得られるオーナーになるためには、どうすればいいのでしょう?
その方法を考えてみます。
多店舗展開で年収アップ!
年商1億(年収1,000万)レベルになると、多店舗を手掛けているオーナーが多くなります。
年収1,000万円をシミュレーションしてみましょう。
一般的に言われているようにオーナーの収入を年商の10%とすると、年商1億円、月商840万円の店舗が必要です。
1店舗で月商840万円という数字は、あまり現実的ではありません。
では、多店舗経営ならどうでしょう?
例えば年商5,000万円、月商416万円の店舗を2~3店舗経営することができれば、年収1,000万円超えが見えてきます。
経営の勉強をする
まず、基本となるのは経営に関する税金や経費の知識を高めること。
「数字が読める」経営者になって、健全な経営を目指すことが成功への第一歩となるのです。
基本的な経営知識があれば、あらゆるところから自分の店を発展させるヒントを学び取ることができます。
また、定期的に他の店舗の視察に行くことも大切です。
さらには、自分の世界を広げるため、同業だけでなく異業種の人気店にも視察に行ったり、さまざまな業種の経営者が集う交流会にも参加して意見交換し、ノウハウの吸収を試みるのもひとつの方法でしょう。
交流会や経営者向けセミナーが数多く企画されています。もちろん、経営に関する本や雑誌を読む。
インターネットで情報収集をする。
自分の欲しい知識をピンポイントで学べる通信教育を利用するなど、時間をうまく使って努力することも重要です。
スタッフの教育にお金をかける
大企業や大規模な上場飲食店では社員教育が不可欠。
社員のスキルアップが企業の利益アップに直結するからです。
ある飲食チェーンでは社員研修をはじめてから2年間で売り上げが30%増えたという実例もあります。
それは中小規模の飲食店でも同じ。
多店舗経営を考えているのであれば、スタッフはもちろん、店を任せられる店長クラスの人材育成は最重要事項です。
さらに、せっかく育てたスタッフがすぐに辞めないよう働きやすい環境をつくる工夫も必要です。
設備投資にお金をかける
昔から『客を飽きさせないためには、内外装や食器を時々変えるべし』と言われるように、継続的な集客のために設備投資は欠かせない要素です。
また、最新の設備を導入することでより美味しい料理を効率よく提供できれば、顧客満足度を高め、より高い利益を上げることが可能になります。
しかし、「過度の」設備投資は経営を悪化させる要因になってしまいます。大切なのは「適切な」設備投資。
どれくらいの投資が適切なのか、その判断が経営力なのです。
判断基準のポイントとしてよく言われているのが「償却前利益の範囲で設備投資を行う」ということ。
設備投資は一定期間かけて減価償却を行います。
例えば、償却期間が5年なら、その5年間に「投資額に見合う利益が期待できるかどうか」。以下で触れる「償却や借入れの返済:10%」も参考になる数字です。
売上の限界を意識する
もちろん「売上=客数×客単価」を増やす努力は必要ですが、その限界があることを事実として意識することが大変重要です。
儲かりにくい店にならないよう最初からお店の売上の限界を意識し、費用の掛け方もスリム化した店舗づくりを目指しましょう。
意識すべき「売上に占める費用の配分」は以下のとおりです。
・材料:30%
・人件費:30%
・家賃、管理費:10%
・光熱費、消耗品、雑費:10%
・償却や借入れの返済:10%
・利益:10%
この配分から少しずつでも足が出る場合、利益のはずの10%が削られることになります。
経費を一定枠内に収めることができない店が儲かりにくい店なのです。
収入を得られるオーナーになれるかどうかは、経費をかけるべきところにはしっかりかける、節約すべきところはシビアに節約するなど、シンプルな鉄則を守れるかどうかも重要なのです。
まとめ:飲食店オーナーは儲かる職業か?
いろいろな方面から、飲食店オーナーの所得について計算してきましたが、飲食店オーナーは儲かる職業なのでしょうか?
今後の吟味すべき点は、2020年に流行した新型コロナウイルス感染拡大防止による緊急事態宣言、自粛の飲食業界への影響です。
2021年に入った現在でも、飲食業界はコロナでの自粛は続いており、コロナ禍前よりも厳格なガイドラインを要求されています。
テイクアウトやデリバリーでの販売、店内やスタッフなどの徹底した衛生管理、キャッシュレス化…などが急速に進みました。
そうなると店の売上や経費の比率は、テイクアウトやデリバリーを実施している店とそうでない店、衛生管理やキャッシュレスなどを積極的且つ高レベルで実施している店とそうでない店で、帳簿の数字が大きく変わってきて、オーナーが受け取ることができる所得も大きく違ってきます。
コロナに対応した飲食店を開業するならば、今まで以上にコストが掛かります。
それを鑑みれば、当分の間、飲食店のオーナーは決して儲かる職業だとは言い難いことは事実です。
ですが、 ビジネスの世界では逆境こそ新たなビジネスチャンスがあり、それを活かすことができれば今まででは考えられなかったような売上が立つこともあります。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。