全国・海外から約1500社が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司が商売成功のヒントを毎週お届けします。
お店は開店休業状態…。まずは人が集まる場所でPR
今日はある地方の町にある、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)に取り組む、お好み焼き居酒屋からのご報告。
昨年この地域でも緊急事態宣言が解除されたが、当初は、店主いわく「開店休業状態」。コロナ禍の約2年間、通常営業ができない状態をしのぐため、弁当やテイクアウト、人が集まるところへ出向いての店頭販売に力を入れていたが、通常営業が再開されても肝心の店の利用客が戻らない。そこで店主は、来店客を増やす取り組みに打って出た。
とはいえ、行ったことはシンプル。日曜朝市などの人が集まる場所で、お好み焼きや弁当、惣菜を販売する際に、店内飲食で利用できるチラシやポイントカードを配布し、店の存在を知ってもらう取り組みを行ったのだ。例えば朝市では粕汁やうどん・そば、おでんなどを販売していたが、そこで店の存在をPRし、これらの料理がお店で食べられることも訴求、チラシなどを配布したのである。
「来店」につながる施策が功を奏す
もっとも、単にチラシを渡しただけでは実際に「来店」という行動にはつながりづらい。そこで考えたことのひとつはポイントカード。通常、店での利用客に渡すものだが、これを出かけて行った朝市などの場所で渡したのだ。他にも様々な仕掛けを散りばめ、それらの活動が功を奏し、来店客は増えた。具体的には、12月の来店客は200名を超え、そのうち約120名は新規客という成果を得ることができたのだった。
今からでも遅くない!「顧客のストック」の重要性
最近ワクワク系を知って取り組み始めた店主は、これまで自店が、ワクワク系で言う「顧客のストック」をしていなかったことを問題視していた。「ストック」とは「溜める」の意で、「顧客のストック」とは文字通り「顧客を溜める」、ずっと繰り返し利用し続けてくれる顧客を維持していくこと、そのための具体的な活動の数々を指す。緊急事態宣言が明けても店の利用客が戻って来ないことの背景にも「ストックしていなかった」という原因があるが、それは「していなかった」のだから仕方がない。ゆえに「客が来ない」のであれば、人が集まる場所に出かけて行って存在をアピールし、次の来店行動につながるような仕組みを考え、実施する。それは、ワクワク系的には正しい手立てだ。
そしてこの事例から分かることは、たとえこれまで顧客をストックしておらずゆえに問題が起きたとしても、それを解決する手立てはあり、解決しながらストックを行っていけばよいということ。つまり、より良い商売に進化して行くことを、始めるのに遅すぎることはないということだ。
また、「『客が来ない』のならこういう手を打とう」と、すぐに考え動けたことも大切なこと。今日は、その力が必要とされるビジネス環境だからである。
〇執筆者
小阪裕司(こさかゆうじ)
博士(情報学)/ワクワク系マーケティング開発者
1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受け、地方銀行、信用金庫との連携が進んでいる。
