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個人事業の開業準備にかかった費用は経費になるのか?[人気記事]

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事業を開始する前に開業のために支払ったお金は、所得税法上では開業費と呼ばれます。
個人事業主として開業を考えている方のなかには、「開業費についてまったく知識がない」といった方や、「具体的にどこまで開業費として扱っていいのかわからない」という方も少なくないでしょう。
本記事では、そもそも開業費とは具体的に何を指すのか、開業費は経費になるのか、また、計上時のポイントなどを説明します。

開業費とは何を指すのか?

開業費とは、所得税法で「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう」と定められています。
わかりやすく言うと、「開業の準備に必要だったお金」ということです。
しかし、定義としては前述のとおりでも、開業のために支払ったお金すべてが開業費として認められるというわけではありません。
開業費に認められるものと、そうでないものの分類について説明します。

開業費として認められるもの

・事務所や店舗として扱う物件の家賃や光熱費、通信費
・1つ10万円未満の設備や備品
・開業準備時に従業員へ支払った給料
・広告宣伝やマーケティングの費用
・ホームページの作成費用
・物件探しなどの際の交通費
・開業セミナー受講料といった勉強代 など
これらの費用はすべて開業費となります。
個人事業主の場合、開業準備の際にかかったほとんどの出費が開業費に含まれることもあります。
ただし、開業のために使用した費用の合計が10万円に満たない場合は、青色申告などで少額な減価償却資産に該当し、開業費として一括で計上できず、開業日の日付で費用を該当する勘定科目として経費計上が必要になるため注意が必要です。

開業費として認められないもの

・事務所や店舗として扱う物件の敷金や礼金
・1つ10万円以上の設備や備品
・販売商品の仕入費用
・その事業を開始するのに必須な資格の取得にかかった費用 など
礼金は20万円以上の場合は長期前払費用、20万円以下の場合は支払手数料の扱いとなります。
敷金は後々返却されるものであり、そもそも経費ではなく開業費には含みません。
また、商品の仕入費用は開業費ではなく売上原価、1つ10万円以上の設備や備品は前述の通り、固定資産扱いとなります。
開業費として認められない資格取得費用は、例えば美容院・理容院や税理士事務所は資格があってはじめて開業できる事業です。
これらは開業準備の前に資格を取得していることが前提とされているため、開業費に含まれません。

開業費は経費になるの?

ここまで開業費について述べてきましたが、開業費とは正確には会計処理上「経費」ではなく、繰延資産(くりのべしさん)という資産科目として扱われることになっています。
繰延資産とは、会計上では費用に分類されるものの、その効果が長期にわたることから費用が発生した年に全額を計上するのではなく、その効果が及ぶ期間(償却期間)に分けて計上するもののことを指します。
開業費が繰延資産として扱われるのは、開業費で購入した備品や設備、あるいは物件などが、開業したその年だけでなく以降数年にわたって影響するものであると考えられているからです。
そのため資産として計上したのち、少しずつ費用として償却していくことになります。
少し難しい話に感じるかもしれませんが、「開業費は一時的に資産科目として計上し、一定期間かけ経費として償却することができるものである」という形で理解しておけば良いでしょう。

開業費を計上する際のポイントとは?

開業費の償却はどのように行えば良いのでしょうか。
開業費として認められる期間とあわせて、簡単に説明します。

均等償却と任意償却

開業費の償却方法には均等償却と任意償却というものがあります。
均等償却とは開業費の総額を5年間で分割し、均等な額を毎年償却していく方法です。金額が一定なため、収支の把握がしやすいというメリットがあります。
任意償却とは、いつ・どれぐらいの金額を償却するかを自分で自由に決める方法です。
利益の多く出た年に開業費を計上することで所得税を低く抑えられるというメリットがあるため、事業の状況に合わせた柔軟な対応が可能な償却方法です。
事業の状況に合わせて償却方法を選ぶと良いでしょう。

開業費が認められる期間

原則として事業を開始した日、つまり開業日を区切りとして、それ以前にかかった費用が開業費となります。
では、開業日から遡っていつまでの期間にかかった費用が開業費として認められるのでしょうか。実はこれについては明確に定められていません。
そのため、いつ発生した費用であっても開業費として計上することは可能です。
しかし、開業日から数年前のものになると「開業と関連性の低い支出」と見なされてしまう可能性が高くなります。
また、仮に開業日に近い時期の出費でも、領収書や請求書などを保管していないと、その出費が開業費としてふさわしいか税務署に対して客観的に証明できない場合があります。
こうした事態を防ぐためにも、しっかりと領収書や請求書、振込明細などを保管しておきましょう。
領収書や請求書などを保管する際は、開業費とそうでないものを判別しやすいように、開業前のものと開業後のものが区別できるようにしてあると良いでしょう。
また、領収書は確定申告を青色申告で行っている場合7年間、白色申告の場合5年間の保管義務があります。
保管義務を怠ると税額の控除が認められなかったり、青色申告が取り消されたりする可能性がありますので、特に厳格に保管するようにしましょう。

まとめ

開業準備にかかった費用は、一部の例外を除いたほとんどを開業費として扱うことができます。
ただし、開業費は実際には経費ではなく、繰延資産というものであることは理解しておきましょう。

この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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