会社を始めたい、起業したい、と考えてはいるものの、いざ経営者になったときに具体的になにをすればいいのか分からないという方は多いのではないでしょうか。
本記事では、経営者のすべきこと、身につけたい知識、会社を設立するまでの手順をご紹介します。
経営者がするべきこととは
経営者するべきことの1つとして、会社を継続・成長させていくための意思決定を行う必要があります。
経営者の意思決定の重要性は、オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーが、「事業の決定」「資金配分の決定」「人材配置の決定」の3つを経営者のすべきこととして挙げていることからもわかります。
「事業の決定」とは、会社の方向性を示してその舵取りを行うことです。
どういった商品やサービスを扱うか、どのような層をターゲットとするか、どのような方法でターゲットに届けるか、といった何をやるかの決定権と責任が経営者にはあります。
「資金配分の決定」とは、文字通り資金をどのように使うのかを決定することです。
限られた金額の中で人件費、設備投資費、広告宣伝費などの各種費用にもっとも有効な形で分配する必要があります。
「人材配置の決定」とは、会社内で誰に何をしてもらうのかを決定することです。
人にはそれぞれ向き不向きがあるので、各人が能力を最大限に発揮できるように適材適所に配置する必要があります。
個人のパフォーマンスの向上は、そのまま会社の成長に繋がるのです。このように会社が継続成長するために必要な意思決定を的確に行うことが経営者にも求められるのです。
経営の意思決定に役立つ知識とは
経営を進めるためには事業のどういった部分に注力するか、資金をどのように分配していくかなどの意思決定が非常に重要です。
それらを決定する際に役立つのがマーケティングとお金・資金繰りに関する知識です。
マーケティングの知識は市場に求められているものを察知するために役立ち、お金・資金繰りの知識は資金調達の際や事業の中でのお金の流れを具体的に知るために役立ちます。
マーケティングの知識
マーケティングとは市場や顧客の要求を汲み取り、競合する商品や他社を分析・比較し、その上で自社の強みを見出していく作業のことを指します。
これらはいずれも事業運営の判断基準として重要なものです。
大同生命が2012年に実施した「経営者1万人アンケート:経営者に必要な資質」 によると、社長に必要な資質として「決断力」と「先見性」の上位2つが挙げられています。
マーケティングの知識はこれらを発揮するための強力な支えとなるのです。
マーケティングの知識はセミナーや講座に通うことや、マーケティングについて書かれた本を読むことによって身につけられます。
経営学者やコンサルタント、大手企業のマーケティング担当者など、先人たちのノウハウを貪欲に取り入れていくと良いでしょう。
お金・資金繰りの知識
お金や資金繰りについての知識を持つことで、事業におけるお金の動きを正しく把握し、調達すべき資金額を正しく判断できるようになります。
そのために特に役立つのが変動損益計算書とキャッシュフロー計算書です。
変動損益計算書とは各種費用を変動費と固定費の22つに分けることで、黒字経営のために必要な売上高を簡単に把握できるようにしたものです。業績を管理するうえで非常に役立ちます。
キャッシュフロー計算書とはお金の動き(増減や流入元・流出先)をまとめたものです。現金が手元にどれぐらいあるのかをすぐに把握できます。
これら22つの読み方や活用方法を知っておくことは、自社の置かれている状況を判断する上でとても重要です。これらの知識も講座や専門書などから学べます。
しかし、日本政策金融公庫が中小企業の経営者に対して行った調査 では、経営者として自信がある項目として「経理・税務・法律などの知識」を上げている人はかなり少ない結果となっています。自分だけでは経営や税務などに不安がある場合には、専門的な知識を持った人に知識を補ってもらうというのも11つの手でしょう。
会社経営で失敗しないために行うべき設立までの行動
会社を設立するには大きく分けて「事業計画書の作成」「資金調達」「各種法的手続き」という33つのステップがあり、これらを正しくこなすことでスムーズな会社の設立が可能となります。
事業計画書の作成
事業計画書とは、事業の実現可能性や採算、起業後の展開などについて具体的な内容を客観的にまとめたものです。
金融機関からの融資を受ける際の重要な審査材料になるだけでなく、作成をすることで自身の事業の全体像を俯瞰することができるため、必ず作成しましょう。
記載する内容としては事業の目的や内容、今後の展望、売上の予測、資金繰りについての見通しなど様々です。
記載内容に規定はありませんが、仮に融資を受けることを検討している場合は、融資元がフォーマットを用紙していることもありますのでそちらの利用も検討すると良いでしょう。
資金調達
日本政策金融公庫が2018年に行った調査 によると、開業費は平均1,062万円でした。
このうち開業者自身が用意した自己資金は平均292万円となっています。
資金調達の平均額と比較すると大きく不足しています。残りの資金は、自己資金の他に、親戚や友人から借りる、金融機関からの融資といったものがあります。
自己資金を多く用意している方が融資を受けやすくなる傾向があるためできるだけ自己資金を多く準備できると良いです。
しかし、例えば日本政策金融公庫の融資制度の中には、開業費の総額のうち10分の1を自己資金として用意できていれば審査を受けられるものもあります。
なので、まずは必要な開業費の10分の1を目安に自己資金を用意すると良いでしょう。
各種法的手続き
また、事業を始めるにはいくつかの法的手続きを踏む必要があります。
ここでは「定款の作成」「税務届出関係」「社会保険届出関係」「許認可の取得手続き」について簡単に説明します。
いずれも重要かつ用意に時間と知識を要する手続きであるため、税理士をはじめとした専門知識を持つ人や、提出先の行政機関などに相談をするのも1つの手でしょう。
定款の作成(法人の場合)
法人として事業を始める場合、定款を作成しなければなりません。
定款とは会社を運営する上での規則をまとめたもので、会社にとっての法律のような働きをします。
事業の目的や屋号、本社所在地、資本金額、発起人の氏名と住所といった必須項目に加え、会社の方針に応じた事項を記載して法務局に提出します。
税務届出関係
・法人設立届出書
・青色申告の承認申請書
・給与支払事務所等の開設届出書
・源泉所得税の納金の特例の承認に関する申請書
会社を設立した際、これらの書類を所轄の税務署に提出します。
それぞれ提出期限が定められているため、必ず守るようにしましょう。
記入・提出方法などの詳細については国税庁のホームページなどを参考すると良いでしょう。
社会保険届出関係
社会保険とは健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の総称を指します。
雇用保険と労災保険は従業員を雇った場合に必要となる保険です。
会社を設立した場合にはこれらへの加入が法律で義務付けられているので、忘れずに加入するようにしましょう。
許認可の取得手続き
事業の内容によっては自治体や保健所などから許認可をもらう必要があります。
例えば、中古品販売の場合は警察署、飲食店の場合は保健所、運送業の場合は運輸局、といった具合に事業内容によって許認可の申請先が異なります。
許認可のない状態で営業を行った場合には罰則が課せられるため、自身の事業には許認可が必要かどうかを調べ、必要であれば営業開始前に取得しましょう。
まとめ
経営者にとって、会社を継続・成長させるために必要な決断力を養うには、マーケティングや資金繰りについての知識を身につけることが効果的です。
これから経営者としての道のりを歩もうとしている方には各種手続きや資金調達など越えるべきハードルが数多くあります。
会社の設立までに不安なことや疑問点があれば、開業に関する無料相談やセミナーなどを調べ活用してみると良いでしょう。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
