立地選びは開業後の経営に大きな影響を与える重要なポイントです。内装工事は開業資金の中でじっくりと計画を練らなければならなく、妥協や失敗は許されません。ここでは小売り、飲食、美容店開業の立地調査から内装完了までにおける重要ポイントをお伝えします。
物件探しのポイント
ポイントは大きく分けるとこの3つ。
・お客様が見つけやすい物件である
・お客様が行きやすい場所である
・その土地にターゲットとするお客様がいる
店舗のコンセプトによっては上記ポイントのどこに主眼を置くかが、物件探しの第一歩です。
例えば、「隠れ家風にしたい」なら、3番目の「ターゲットとなるお客様がどれぐらいるのか」を重視する必要があります。
ファミリーのお客様に来て欲しい場合は「見つけやすさ」、「行きやすさ」に焦点を絞る必要があるのです。
物件の家賃
お客様が見つけやすく、行きやすい優良物件は、必然的に地価や家賃が高くなります。また、店舗ビルなどは階数が低いほどお客さんのアクセスがよくなるので、その分家賃も上乗せされます。
家賃は固定費なので店舗を運営し続ける限り毎月発生。長期的に見て無理のない家賃を選択しましょう。
交通量と人通り
物件の紹介を受ける際に「交通量や人通りが多いので、来店者数が多くなります」と言われることがあります。しかし、交通量が多くても、行動の目的が異なれば立ち寄ることもなくなり、通りに人が溢れていても、通勤で人通りが増えているだけなのかもしれません。サービスのターゲットではない層が大部分を占めている可能性もあります。物件選びには人の流れや構成にも目を向ける必要があります。
ターゲットの絞り込み
例えば、店舗のコンセプトにあったお客様が開業予定の場所にどのくらい往来しているか、居住しているのか調べることは必須。具体的に設定したターゲット像を基にサービスを作っていくことで、競合にない強みを持つお店を作ることに役立ちます。
居抜きかスケルトンかで内装費用が変わる
物件が決まれば次は内装です。この際、「居抜き」か「スケルトン」かによって対応が大きく異なります。
「居抜き」とは以前の店舗の内装、設備などがそのまま残されていること。簡単な手直しだけですぐに開店できるなどのメリットがあります。ただ、設備が揃っている分、「造作譲渡費用(設備や什器を買い取る費用)」という費用がかかる場合もあるので、注意が必要です。
「スケルトン」とはまさに名前のまま、全く何もない状態のことをいいます。この場合は電気、ガス、水道、空調などのインフラ設備も含め、1から工事が必要です。スケルトンは自分の好きなようにデザインできますが、その分、内装工事にかなり費用がかかることを覚えておきましょう。
スケルトン物件のメリット
スケルトン物件は「自分の思い通りに1から内装を仕上げることができる」「設備の管理を行いやすい」「前に使用していたテナントのイメージを一新して事業を開始できる」などのメリットが挙げられます。
スケルトン物件とは、中に何もない状態であるため、レイアウトや壁紙、キッチンの設備やテーブルといった細かなものまで全て自分の思い通りにできます。自由度が高いことから内装にこだわりを持って事業を開始したい人にはスケルトン物件が向いていると言えます。
前にテナントを使用していた企業が設備を残していった場合には、その設備が故障すると保証期間がいつまでなのか、またどこで仕入れた設備なのか分からず、管理に困ってしまう可能性があります。しかし、スケルトンであれば、1から設備を導入することになるため、管理しやすいです。
前にテナントを使用していた企業が、プラスの理由によってテナントを出ていった場合は問題ありませんが、不祥事を起こしたなどマイナスの理由で出ていった場合はその影響を受けてしまう可能性があります。しかし、スケルトンであればレイアウトや内装をガラッと変えることによってイメージを一新できるため、前テナントの影響を受けにくいと言えるでしょう。
スケルトン物件のデメリット
スケルトン物件は「事業を開始するまでに費用と時間がかかる」「認知されるまでに時間がかかる」などのデメリットが挙げられます。
スケルトン物件とは、何もない状態であるため、トイレやエアコンの設置なども自分自身で設置するので費用が多くなります。例えば、物販は約20万円/坪、美容は約30万円/坪、飲食は約35万円/坪、医療は約45万円/坪などです。もちろん費用だけでなく、これらの工事を行うとなると、全てが完了するまでに時間がかかるため、事業の開始が遅れてしまうことになります。
前テナントと同業種の場合には周囲の認知が早いと言えますが、スケルトンはほとんどが前テナントと異なる業種であるため、「認知されるまでに時間がかかる=軌道に乗るまでに時間がかかる」ことがデメリットと言えるでしょう。
居抜き物件のメリット
居抜き物件は「費用と手間を省くことができる」「事業開始までの時間を短縮できる」「前のテナントのお客さんを取り込むことができる」などのメリットが挙げられます。
居抜き物件は、必要な設備がある程度揃っているため、最低限の内装工事で済ませることができるので費用を大きく抑えることができます。前テナントのイメージを引き継ぎたくない場合は、壁紙を変更する、照明の色を変える、装飾を変える、看板を変えるなどのちょっとした変化だけでも十分に雰囲気を変えることが可能です。また、打ち合わせ内容が少ないため、それらの手間を省くこともできます。
最低限の打ち合わせと内装工事だけで済むため、すぐに事業を開始できます。前テナントを利用していたお客さんにも興味を持ってもらえるというのも居抜き物件のメリットと言えるでしょう。
居抜き物件のデメリット
居抜き物件は「1から自分の思い通りの内装にできない」「設備トラブルの可能性がある」「前のテナントの悪い印象を受け継ぐ可能性がある」などのデメリットが挙げられます。
こだわった内装にしたいと思っても、居抜き物件は前テナントのレイアウトが残っている状態であるため、自分の思い通りのレイアウトにすると、スケルトン物件よりも費用を多くかけてしまうことになるため、思い通りの内装にしづらいと言えます。
前にテナントを使用していた人が残していった設備を使用することで、初期費用を抑えることができますが、耐用年数がどのくらいなのか、保証期間がどうなっているのかといった情報が分からないため、故障した場合に多くの修理費用が発生する可能性があります。
居抜き物件は前テナントと業種が同じであるのが一般的です。飲食店などで食中毒が発生したなどのマイナスの理由でテナントを出ていった場合は、その印象を受け継いでしまう可能性があることが居抜き物件の大きなデメリットと言えるでしょう。
コンセプトを反映した内装にするために
開業時に決めたコンセプトに沿った内装になるよう、内装工事業者と相談をしながらデザインを作り上げていきます。内装の素材や色、質感などを、業者の方と納得するまで話し合いましょう。可能であれば、2次元の資料だけではなく3次元の模型なども作ってもらえば、自分と業者とのイメージの齟齬を防ぐことができます。また、自分のイメージや計画した仕様になっているのか、業者との契約前、工事中、工事後にしっかりとチェックしましょう。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
