「店舗の保険」と聞くと、災害や火災などが発生した時に補填してくれるものだと想像してしまいがちですが、「食中毒を起こしてしまった」、「お客様のコートを紛失してしまった」など、店舗経営をしていれば起きてしまうであろう、さまざまなリスクに対応しているのが店舗型保険なのです。
どんな保険の種類があるのか、どんな場合に適用されるのか、失敗しない保険の選び方などを保険のプロにお聞きしました。
4回にわたって、店舗型保険について解説していきます。
食中毒の保険は生産物が対象
たとえば野菜をただ売ってるだけ、魚を売っているだけでは補償の対象にはなりません。では、しめさばや刺身に寄生虫がいて食中毒になってしまったケースはどうでしょうか。たとえば、2017年に芸能人の方が罹るなどして話題になったアニサキス中毒等ですが、実はこれは保険の補償対象です。なぜかというと、調理するということは、お客様が安全に食べられる状態にしなければならないということだからです。寄生虫を除去するということも、調理の一環だからです。それから、もし食中毒を起こしてしまったら、お客様には病院に行ってもらわないとダメです。領収書があってはじめて、治療費の金額を補償することができるので。たとえば同じ症状の2人がいて、ひとりは市販薬を飲んで2~3日寝ていたら治ったのに対し、もうひとりは入院したとします。この場合、病院に行った人は保険会社からお金が出るけど、家で寝ていた人は出ないんです。でも、お店としてはそういう方たちにもお見舞をしたいですよね。このお見舞金は、特約を付けていれば補償されます。厳密にいうと賠償償任とは違うものになりますが、病院に行った/行かないで扱いが違うのは不公平なので。
従業員のために労務災害リスクを考えて
ここまで「賠償責任リスク」「財物損害リスク」「休業損害リスク」に関してお話させていただきましたが、最後に〈労務災害リスク〉について。こちらもできれば入っておいってほしい保険です。こちらは売り上げ1000万のお店を想定した「業務災害補償保険」の見積もりになりますが、これは労務災害リスクをカバーするものです。1回目でも説明した、仕事が原因でパートさんに怪我などをさせてしまった場合などに対応します。たとえば出前の途中で事故にあったとか、そういったものも対象になります。自分が対象でもいいのですが、どちらかといえば従業員のためのものですね。「従業員のため」の行動は社会に与していく会社を経営するにあたって大事なことですし、それが結局、お店の成長にもつながるはずなので、自分以外に雇っている人がいるのなら、入ったほうが良いですね。もし、ひとりで切り盛りできるようなお店なら、これは自分でどうするかという話なので入らなくてもかまわないと思います。優先順位として、火災保険、賠償責任を同格と思っていただいて、少なくともこの2つが対応となる保険には入るイメージを持ってもらえればいいと思います。
お話を聞いた方:ファミリーコンサルティング株式会社 堀川綾実さん(ファイナンシャルプランナー/相続診断士)、出岡大作さん(住宅ローンアドバイザー/相続診断士/行政書士資格)
ファミリーコンサルティング株式会社:「お金の問題を何でも解決できる場」としてライフプランニングシミュレーション、住宅ローンアドバイス、相続・エンディングコンサルタント、保険シミュレーション&コンサルティング、資産運用コンサルティングなどのサービスを提供。
