「身の丈にあった広さの物件で商売をしたい」と最初から考え、駅近という考えはなかったと言います。
横浜市青葉区にあるパン屋さん「BAUMDORF」さんのオーナーにお話しを伺いました。
創業時に今のエリアを選んだ理由はなんですか?
当初は中央線沿いの町で探していたのですが、家賃が高くて見つかりませんでした。そのあと徐々に南下して神奈川県寄りにエリアを広げていき、1年ほどかけて青葉区の物件を見つけました。広さもちょうどよく、駐車場もあって、周りは住宅街。お散歩の途中にふらっと立ち寄れるような場所でした。もちろん決してアクセスがいい物件ではありませんでしたが、当初から駅近にこだわりはなかったです。開業時は限られた資金の中で設備も揃えないといけない。家賃にかけるお金は、そんなに多くはありません。駅の近くはどうしても家賃が高くなりますから。それに、駅の近くだとお客様も多いでしょう。私たちは、パンをひとつひとつ丁寧に作っていきたいという想いがありました。このこだわりを持ったパンを作るために、自分たちの手の届く範囲の店を考えると、大量生産が必要になってくる駅近という条件を意識することはなかったです。
今の物件のお気に入りポイントはどこですか。
小ぢんまりした今の雰囲気は結構気に入っています。売り場と作業場に距離がほとんどないので、お客様の声がよく聞こえてくるんです。厨房で作業をしているときに「この間の、あのパンおいしかったよ」って言う声が聞こえると、嬉しいじゃないですか。やりがいを感じる瞬間です。どんな仕事だって、お客様からの反応がないと楽しくないじゃないですか(笑)。これが大きな店だったらそうはいかないなと思って。今では、小さいころにうちのパンを食べてくれた子がママになって、子どもと一緒に来てくれることもあります。うちのパンを「おいしい!」って思ってもらえている、お客様からのその反応が一番のエネルギー。スタッフ全員がそれをしっかり感じられることができるのは今の広さだからこそです。
これからお店を開く方々へアドバイスをお願いします。
パンを作ることは、パン屋の仕事のほんの一部です。だからこそ、これまでの経験が多く生かせると思うのです。実際に私も開業する前に別の業界で仕事をしていたこともありました。いろんな仕事やお店を経験するのはすごく大事。その分、知識が広がってアイデアの引き出しが増えるんです。一度店を持ってしまうと、常に何かを考えていかないといけないですから。落ち着いて、止まってしまったら終わりです。だから開業するまでに引き出しをたくさん持っておくことが大切。私は今でも、その引き出しを開けてアイデアを探しています。いろんな業種を経験した若い人が経営するパン屋さんが、どんどん増えればいいですね。私たちにはない発想で、業界を刺激してほしいです。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
BAUMDORF
創業25年を迎える町の人気パン屋さん。田園都市線たまプラーザ駅からバスで15分程度の住宅街にある。自家製酵母を使い、あざみ野など地元の採れたて野菜や国産肉・チーズなどこだわり食材を取り入れたパンはしっとり&もっちり。ふわっとした口溶けが自慢。ウッド調の小ぢんまりした店内にずらりと並ぶ約60種のパンは、季節ごとの新商品などのほか、開業当初から愛され続ける定番の品も多数。家族三世代で通うファンもいる人気店。
木村智子
1963年、神奈川県生まれ。他業種からの経験を経て、ベーカリーで3年修業した後、1992年に「BAUMDORF」を創業。定番はもちろん、旬の食材を盛り込んだ季節限定品、卵や乳製品のアレルギー対応パンなど、手間暇かけて作られる健康を考えられたパンが評判を呼ぶ。店名はドイツ語で「木の村」の意味を持つ。
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