飲食店を出店する際、計画の立て方で悩んでいるという方も多いのではないでしょうか。やるべきことが多岐にわたるので、どのように始めればよいのかわからないという場合もあります。
そこで今回は、飲食店の出店計画の立て方について詳しく解説します。事業計画書や資金計画についても紹介するので、開業時の参考にしてください。
目次
まずはコンセプトを決める
コンセプトとは、どのような料理をどのようなお客様にどのようなスタイルで提供したいかという、飲食店経営のベースとなる考え方のことです。飲食店の出店を計画したら、まずは必ずコンセプトを決めましょう。
そして、コンセプトをもとにさまざまな意思決定を重ねて、出店計画を進めていきます。コンセプトが不明瞭なままだと意思決定が進まないだけでなく統一感のないお店となってしまいます。アピールポイントがぼやけてしまうので、集客もままなりません。
コンセプトの立て方
コンセプトを立てる際は、5W2H方式で考えてみましょう。
Where(どこで) | どこに出店したいのか? | What(何を) | どのようなメニューを、どのような食材・スタイル・サービスで提供したいのか? | Who(誰に) | 来店してほしいお客様の年齢層、性別、職業は? | When(いつ) | 営業時間・定休日は? | Why(なぜ) | なぜ飲食店を始めたいのか? なぜこのメニューを提供したいのか? | How(どのように) | どのように提供、集客をしたいのか? | How much(いくらで) | いくらで提供したいのか? 経費はいくらになるのか? |
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漠然とコンセプトを決めるのではなく、このように一つひとつの要素を細分化して具体的に考えていきましょう。決定したコンセプトにニーズがあるか、集客に使えるアピールポイントがあるかどうかもチェックが必要です。
コンセプトが決まったら、以下の意思決定も進めていきます。
・店名
・内装や外装のデザイン
・メニューの価格
・営業時間
・立地
・集客方法
大切なのは、コンセプトとの整合性です。コンセプトに沿って、一貫した内容になっているかをよく検討したうえで決定していきましょう。
事業計画書とは?
事業計画書とはお店の開業、経営の際に金融機関から融資を受けるため「事業内容」「収支計画」の情報をまとめた書類を指します。
事業計画書の役割とは
事業計画書は、融資や支援を得るために提示する説明資料です。事業計画書に明確な方針や魅力的な事業内容、売上目標などがまとめられていると、支援を受けやすくなります。
さらに、事業計画書を作りこむことで事業の全体像を把握できます。出店前はもちろん、出店後も事業計画書の内容から経営がズレていないか定期的にチェックすることが大切です。
事業計画書の完成度を高めるためにも、支援を受ける直前ではなく、開業を考え始めた早期の段階から作りこむとよいでしょう。
事業計画の構成
事業計画は、大きく分けて「開業計画」「資金計画」の2つがあります。計画を練る際は、それぞれの計画に矛盾がないように仕上げることが重要です。
ここからは事業計画の立て方について、開業計画と資金計画の2つに分けて、それぞれの立案方法を解説していきます。
開業計画の立て方
1. 市場調査を行う
市場調査を実施することで、出店エリアはコンセプトに合っているのか、どのくらいの集客を見込めてどのくらい売上を上げることができるのかが予測しやすくなります。市場調査では以下の内容を実施しましょう。
・出店エリア付近にはどのような人が多く集まるのかをチェックする
・商圏調査サービス会社に依頼して出店エリアの情報を得る
・出店エリア内の競合店舗の調査を行う
ターゲット層だけではなく、競合店舗の情報もリサーチして具体的な戦略を考えていきましょう。
2. 売上計画を立てる
店舗の立地、業態を踏まえて売上計画を立てましょう。見込み額を明確に算出しないと、損益分岐点がわからず安全な経営が継続できません。
売上高の計算式は以下の通りです。
売上高=坪数×座系数×満席率×回転率×客単価
売上計画を立てる際は好調時の売上だけではなく、通常時、低調時の売上も想定しておきましょう。それぞれのタイミングの売上を予測しておくことで、自店舗の売上幅を把握できます。
3. 収支計画を立てる
収支計画は、店舗開業のために用意した「資金」と必要経費などの「費用」を把握するためのものです。収支計画を立てることで、事前にどのくらい資金が必要なのかがわかります。
まずは、開業時に発生する費用を洗い出しましょう。
・店舗の工事資金
・賃借物件の保証金
・厨房などの設備資金
・椅子、テーブルなどの内装家具
・レジ
・食器
・消耗品
・ユニフォーム など
店の立地条件、規模によってかかる費用が異なるので、どのくらい費用が必要なのか細かく把握しておくことが大切です。
資金計画の立て方
1. 投資計画を立てる
飲食店を開業する場合は、まず何にいくら必要なのかを算出しましょう。開業時だけでなく、食材費、人件費、販促費やしばらくの間の運転費用もふまえておくことで、資金がいくら必要なのかを把握できます。
準備する資金をおさえるために安く見積もってしまいがちですが、余裕をもった見積もりにしておくことが大切です。見積もりが甘いと、開業準備で忙しくなった最中に資金の心配もするはめになってしまいます。
2. 収支計画を立てる
開業後の収支計画を考える際は、月々のランニングコストがどのくらい発生するのかを確認しましょう。あらかじめランニングコストを把握しておくことで、利益をいくら出せばよいのかわかりやすくなります。
ランニングコストの項目、比率は以下の例を参考にしてください。
・人件費・・・・・・売上の30%以内
・家賃・・・・・・売上の10%以内
・食材費・・・・・・・売上の30%以内
・水道光熱費・・・・・売上の5%以内
・広告費・・・・売上の5%以内
・その他の費用・・・・売上の10%以内
この目標数値を上回っていないか定期的に確認し、人員配置、メニュー内容、集客施策を見直していきましょう。
3. 資金調達計画を立てる
飲食店の開業に必要な費用を確認したあとは、自己資金から差し引いてみましょう。足りない分の資金をどこから借りるのか考えておくことも重要です。
主な調達方法としては、以下の3つが挙げられます。
・金融機関
・日本政策金融公庫
・親族や友人からの借り入れ
また、開店資金として活用できる補助金も用意されているので、利用可能なものがあれば活用しましょう。
飲食店の開業に使える補助金・助成金について知っておきたいという場合は、下記の記事もチェックしてみてください。
4. 返済計画を立てる
借り入れたお金を返済するために、返済方法、返済期間、毎月の返済金額を確認しましょう。金融機関から借り入れた場合は、返済時期や金利が決まっているのでスケジュールに沿って返済します。
返済方法としては、元利均等方式が適用される場合がほとんどです。元利均等方式とは、元本と、利息の支払いの合計が均等になるように支払額を算出する方法を指します。
初年度から返済する場合は、返済が早く終了するのがメリットです。1年据え置きの場合は最初の1年間は金利のみを支払って、2年目からは元金と金利を支払うという手段が取れます。
もし、自分だけで返済計画を立てる自信がないという方は、税理士に相談してサポートしてもらいましょう。
飲食店の開業資金の目安とは?
日本政策金融公庫の調査によると、2021年における開業資金調達額の平均は1,177万円とされています。内訳としては以下の通りです。
・金融機関などからの借入:803万円
・自己資金:282万円
・友人や親族など:74万円
・その他:17万円
飲食店を開業する場合は内外装費や運転資金などがかかるので、最低でも1,000万円以上の資金を用意しましょう。
飲食店の開業資金についてさらに知りたいという場合は、下記の記事も参考にしてください。
飲食店の開業に必要な資格や許可とは?
飲食店の開業に必要な資格や許可として、以下の項目が挙げられます。
・食品衛生責任者(資格)
・防火管理者(資格)
・個人事業の開廃業等提出届出書(許可)
・青色申告承認申請書(許可)
・防火対象物使用開始届出書(許可)
・消防用設備設置届(許可)
このように多くの資格や許可が必要になるので、取得、提出したうえで出店計画を進めましょう。
飲食店の開業に必要な資格や許可についてさらに詳しく知りたい場合は、下記の記事もチェックしてみてください。
飲食店を出店する際は事業計画書を作りこもう
飲食店を開業する場合は融資や周りからの支援を得るために、コンセプトや事業計画書を作りこむことが大切です。事業計画書が作りこまれていると、戦略構築や資金繰りの方向性が見えてきます。
ただ、自分だけの力でコンセプトや事業計画書を作りこめるのか不安な場合もあるでしょう。そのような方は、無料相談を受けてプロからアドバイスをもらうことが大切です。
プロから教えてもらうことで、自分では気づけなかったミスや着眼点、アイデアが生まれる場合があります。ご興味がある方は以下のリンクから申し込んでみてください。
この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント
○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。
○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。
