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相次ぐ飲食店の倒産、理由や業態別の数値・防止策を解説

相次ぐ飲食店の倒産、理由や業態別の数値・防止策を解説

新型コロナウイルスの影響による経営破綻、いわゆる“倒産”が深刻な社会問題となっています。業種別で見ると「飲食業」の倒産が最多となっており、大手企業よりも小規模事業者への影響が大きいようです。

2022年3月21日以降、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった自粛要請は出ていないものの、新型コロナウイルス終息の兆しはまだはっきりと見えておらず、今後も変則的な対応が求められるでしょう。

では、これからの飲食店の経営ではどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。本記事では、飲食業界の最新の倒産状況や倒産する理由、そして防止策について解説します。

飲食店の倒産件数はどれくらい?

飲食店の倒産件数はコロナ禍以前とコロナ禍以降で比べると、どのように推移しているのでしょうか。それぞれの数値を見ていきましょう。

コロナ禍前の倒産件数

まずは、コロナ禍以前となる<2017〜2019年>における飲食店の倒産件数です。
帝国データバンクが公表しているデータによると、以下のような推移となっています。

期間倒産件数
2017年度(2017年4月〜2018年3月)701件
2018年度(2018年4月〜2019年3月)657件
2019年度(2019年4月〜2020年3月)784件

2017年はメインの客層である団塊世代が引退したことや、「ちょい飲みブーム」によって競合が増えたことから飲食店の倒産件数が上昇。2019年度は2011年度に次ぐ過去最多の倒産件数を記録しています。

参考
飲食店の倒産動向調査(2017年度) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]
「飲食店」の倒産、休廃業・解散動向調査(2018年度) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]
飲食店の倒産動向調査(2019年) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]
飲食店の倒産動向調査(2020 年度上半期) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]

コロナ禍後の倒産件数

その後、新型コロナウイルスが流行し、コロナ禍となった<2020年〜2022年>の飲食店の倒産件数は以下の通りです。

期間倒産件数
2020年度(2020年4月~2021年3月)715件
2021年(2021年1月~2021年12月)569件
2022年(2022年1月~2022年12月)725件

コロナ禍以前と以後を比較すると、倒産件数に大きな差は見られません。むしろ、2021年は秋以降に緊急事態宣言などが全面解除されたことや給付金効果もあり、飲食店の倒産率は前年比約3割減に留まりました。

しかし2022年に入り、飲食店の倒産件数は再び増加傾向にあります。その背景には、新型コロナウイルスの変異株の発生や長引くコロナ禍の影響、世界情勢の不安による原材料の値上げラッシュなどが挙げられ、飲食店を取り巻く環境はいまだ厳しい状況が続いています。

参考
飲食店の倒産動向調査(2020年) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]
「飲食店」動向調査(2021年) | 株式会社 帝国データバンク[TDB]
新型コロナウイルス関連倒産 | 株式会社 帝国データバンク[TDB]

倒産が多い飲食店の業態TOP3

このように、コロナ禍以前・以後にかかわらず、飲食店の倒産・廃業は後を絶ちません。
業態別に見てみると、特に倒産が多いのは「食堂・レストラン」「専門料理店」「酒場・ビヤホール」の3つ。コロナ禍以前・以後いずれにおいても、倒産件数TOP3となっています。

参考
2019年「飲食業倒産動向」調査 : 東京商工リサーチ
居酒屋の倒産 過去2番目の多さ、業種間で明暗分ける(2021年飲食業倒産)

倒産が多い飲食店の業態TOP3

食堂・レストラン

飲食店業界において倒産率が高い業態のひとつは「食堂・レストラン」です。2021年は「専門料理店」「酒場・ビヤホール」に次いで全体で3番目に多い件数となっており、全体の約20%を占めています。

「食堂・レストラン」は個人経営の店舗が多く、長引く不況に耐えぬく体力を持ち合わせている店舗は多くないと推測できます。また、長年地域で愛される「食堂・レストラン」業態は後継者不足で廃業に追い込まれるケースも後を絶ちません。

専門料理店

次に、日本料理店・中華料理店などを含む「専門料理店」も倒産率が高い業態です。2019年は飲食店全体で「食堂・レストラン」に次ぐ2番目の倒産件数でしたが、コロナ禍後の2021年には最多となり、全体の30%弱を占める結果となっています。

「専門料理店」も「食堂・レストラン」同様、個人経営が多い傾向にあり、ここ数年苦境に立たされています。

酒場・ビヤホール

居酒屋や焼鳥屋、おでん屋やもつ焼屋などの赤提灯系の業態やダイニングバーなどを含む「酒場・ビヤホール」は倒産率が高く、コロナ禍で大きく影響を受けた業態のひとつです。

2019年における倒産件数は飲食店業界で3番目、2021年においても2番目の数値を記録しています。コロナ禍以前の「ちょい飲みブーム」やコロナ禍における「家飲み」「オンライン飲み会」などの新しい飲酒スタイルが確立されたことや、客足の戻りが遅いこと、原材料の高騰に耐えられる運転資金不足などが要因と考えられます。

倒産が少ない飲食店の業態TOP3

一方で、倒産が少ない飲食店の業態も存在します。ここでは上位3つの業態を紹介します。

倒産が少ない飲食店の業態TOP3

寿司店 150

倒産が少ない業態のひとつは「寿司店」です。2021年の倒産件数は20件以下となっており、他業態と比べると倒産件数は顕著に少ない傾向です。

寿司店の倒産が少ない理由には、固定客の多さと客単価の高さ、テイクアウト需要が要因として考えられます。寿司店はチェーン店が目立つ一方で個人店も多く、そもそも店舗数自体が少ないことも、数値上の倒産が少ないことに起因しているのかもしれません。

しかしながら、数値は低いものの2019年度から倒産件数が増加傾向にあり、コロナ禍以後の変動に注意が必要です。

そば・うどん店

2021年の飲食店の倒産データによると、「そば、うどん店」は最も倒産件数が少ない業態となっています。「そば、うどん店」は大手チェーンも参入しており、食材原価の安さや回転率の高さから倒産件数が少ない傾向にあると考えられます。

コロナ禍で「黙食」「少人数での利用」が提唱されるなか、もともとお一人様利用の多いそば・うどん店は影響が少なかったこともあるでしょう。

一方、大手競合に客足を取られた個人店の倒産が増えてきているという事実もあります。とくに「うどん店」は小麦粉の高騰が顕著で、大手チェーン店のような資金力を有しない個人店は経費の見直しなどが迫られています。

宅配・テイクアウト業態

「宅配・テイクアウト業態」はコロナ禍以前より倒産の少ない業態ではありましたが、コロナ禍において需要が高まったことから、倒産件数はさらに減少傾向にあります。2021年においては、宅配とテイクアウトいずれの業態も過去10年間で最少の倒産件数を記録しています。

「宅配・テイクアウト業態」が倒産しにくい理由には、イートインの飲食店に比べ物件費・人件費が抑えられることが挙げられます。

飲食店が倒産する5つの理由

次に、どのような理由で飲食店が倒産・廃業に追い込まれたのかを見ていきます。店舗によってさまざまな理由が考えられますが、ひとつの理由だけではなく、いくつかの要因が重なって倒産に至ってしまうケースも少なくありません。

ここでは、主な5つの理由を解説します。

飲食店が倒産する5つの理由

集客不足、販売不振

飲食店の倒産理由として最も多いのが「集客不足」「販売不振」。集客活動、販促活動を行わないと販売不振が起こるのは当然です。

経営は堅調だと思っていたのにある日突然集客が落ち込んで、復調できないまま倒産するといったケースが多々見られます。きっかけは、店舗周辺に競合店がオープンした、客層のニーズが変わったといった些細なことでも集客に大きく影響するものです。

最悪なパターンは、それに気づかず惰性で店舗運営を続けてしまうこと。一定の常連客がついていたとしても、飲食店では常に周囲の環境に目を配り、顧客のニーズを収集し、新規顧客を集客する施策が必要でしょう。

運転資金の不足

飲食店は「人件費」や「仕入れ費用」など多くの運転資金が必要な業態です。売上にばかり集中して経費の管理を疎かにすると、利益がなくなり資金ショートを起こしてしまいます。

また、事業拡大のために無理な出店を繰り返してランニングコストが増加したり、仕入れ原価の高騰といった予期せぬ出来事が起こったりして、倒産してしまうケースも見られます。

昨今では、コロナ禍や世界情勢の不安、災害などの影響により、食材費や光熱費の値上げラッシュが止まりません。開業前に事業計画を作成しておくこと、そして、こうしたハプニングに対応できるだけの余力を持っておくことが堅実な店舗運営には必要でしょう。

深刻な人手不足

2018年2月に財務省により発表された調査では、7割を超える企業が「人手不足」を感じていると回答。とくに、飲食業界での人手不足問題は深刻な状況が続いています。

この問題は大手チェーン店で顕著に現れ、ファミレスの全国展開チェーン・すかいらーくグループでは大半の店舗で24時間営業を中止するといった対策が講じられています。
個人経営店でも売上は伸びているのに人手が確保できず、倒産・廃業となるケースが増えてきました。

この人手不足の一因となっているのは、コロナ禍における解雇や雇い止めから人手が戻ってこない、労働環境の厳しさ・待遇面での不満などがあげられますが、この先、私たちが考えなければならないのは、「生産年齢人口(15歳~64歳)」減少の問題です。

少子高齢化が叫ばれる今、働き手の中心となる「生産年齢人口」は当然、減少の一途を辿っています。この先、個人経営店でも大手チェーン店同様、高齢者や外国人労働者の積極的な登用、DXを推進した経営も視野に入れることが必要です。

関連記事【お店が回らない...】飲食店の人手不足の原因と対策をご紹介

食材原価の高騰

今、さまざまな食材の原価が高騰しています。

まず、ここ数年で野菜の価格高騰に関するニュースが多くなっています。これは、異常気象などの影響が主な要因ですが、野菜をたくさん使った健康的な食事がブームの今、飲食店にとっては大きな痛手と言えるでしょう。

また、輸入品に関しても、世界各国で起こっている紛争によって価格が高騰しています。とくに日本でも幅広く使用されている小麦粉や穀物、そして燃料価格の上昇によって輸送費も高騰。多くの企業で商品の値上げが発表されています。

原価(コスト)が上昇すれば、当然、利益は減少します。このように、食材原価の高騰は飲食店の経営を圧迫する大きな要因となっているのです。

「品質 < 利益」の経営方針

経営者として、店舗として、利益を追求することは必要なことです。利益がなければ、事業の存続はあり得ません。しかし、利益を求めすぎて品質を疎かにしてしまうと、おのずと顧客離れを起こしてしまいます。

たとえば、食材の原価率を極端に落とす、人件費を削減して接客機会を減らす、店内清掃を怠るといった行為は最終的に倒産・廃業に至る可能性があります。利益を求めることは悪いことではありませんが、これを最終目的にするのは避けるべきだと言えます。

開業当初思い描いていた志を再確認し、品質と利益のバランスが取れる経営方針を作成しましょう。

飲食店が倒産しないためにするべき最低限のこと

では、倒産しないためには、一体どのようなことをするべきなのでしょうか?今すぐ実践できる最低限のことをチェックしていきましょう。

コストの見直し

第一に取り組みたいのが、仕入れや人件費などのコストの見直し。食材ロスを減らしたり、スタッフの適正人数を見直したり、節電節水したりしてコストの削減に励むことが必要です。中でも仕入れコストの見直しは着手しやすいため、まずは食材の廃棄を防ぐことからはじめましょう。

日々の棚卸しを怠らず、先に仕入れたものから順に使用し、保存容器には使用期限を明記するなど、まずは基本に立ち返り、食材を無駄にしないように努力することが大切。

比較的価格の安い「規格外の食材」を利用するのも一案です。傷があったり、形や大きさが不揃いだったりしますが、味には何の問題もありません。積極的に取り入れて、コストの見直しをはかりましょう。

関連記事【FLコスト】FL比率を知って売上を伸ばす方法とは?

目玉商品の見直し

大手チェーン店では、野菜が高騰しているときにあえて「野菜」をたっぷりと使ったメニューを打ち出すことで、注文が増えたというケースがありました。

これは、野菜を安定した価格で大量に仕入れができる大手チェーン店ならではの策ですが、個人経営店でも農家から直接安く仕入れができるケースもあります。さまざまな角度から、店の看板メニューとなりえる目玉商品を考えてみましょう。

関連記事リピート確定!お客様を魅了する看板メニュー作りの秘策とは

集客方法の見直し

集客方法も見直しが必要です。基本的な集客アイテムである、看板やのれんも、改めて見直してみましょう。常に流行を取り入れる必要はありませんが、汚れていたり、劣化していたりする飲食店も多数見受けられます。

実際に廃業に追い込まれる店は、このような小さなメンテナンスを怠っているケースが少なくありません。古くても大切に、丁寧に使い込まれたものは好感が持てます。今一度、店外と店内をお客様の目線に立って確認してみましょう。

また、無料で利用できる集客ツールとしてSNSも積極的に利用しましょう。InstagramやTwitter、Facebookなどを利用して、店舗自ら情報を発信することで繁盛している店は多数あります。最近では、Google マップ上で上位表示を狙う「MEO対策」に取り組む店舗も増えてきました。

繁盛店はどのような宣伝、告知を行っているか、どのように店をアピールしているかをチェックし、自分の店に合った集客スタイルを見つけましょう。

関連記事集客に効果を発揮する「MEO対策」とは? 飲食店はGoogle マップの上位表示を狙え!

接客内容の見直し

商品のクオリティは当然のこと、スタッフの接客態度も店舗経営に影響する重要な要素です。昨今では、どんなに商品がよくても接客が悪いと徐々に悪い口コミが広がり顧客離れにつながります。

とくに、現代はSNSの普及で口コミが拡散されやすいことにも注意が必要です。スタッフのちょっとした悪ふざけがメディアを通じて大きく報道され、店舗のイメージを傷つけてしまうケースも多々あります。

定期的にスタッフの接客態度をチェックし、接客に関する教育を怠らないようにしましょう。

提供メニューの見直し

開店当初は徹底していた食事の品質はきちんと維持できていますか?原価率を気にしすぎるあまりクオリティや味が落ちてしまえば、自然と客離れにつながり、廃業に至る可能性も十分に考えられます。

品質が変わっていないか、そして顧客のニーズに合うメニューが揃っているかは、定期的に見直す必要があるでしょう。

たとえば、メニュー構成。よく見てみると、まったく売れていない商品があるかもしれません。売れない商品のために材料を確保しておくことは食材ロスにつながるため、他のメニューに変更するなどの対応が必要です。

キャッシュフローの整理

賃料や人件費、食材の仕入れなどの支払日を把握していない経営者が少なくないようです。収支管理は経営の基本中の基本。資金繰りのスケジュール管理を徹底し、収支を把握することで「ムダ」が見えてくることもあります。今一度、お金の流れを確認し、整理しましょう。

独立開業を目指して準備中の人や、やっと開店に漕ぎ着けたという人の中には、今から「倒産」のことなんて考えたくないという人もいるかもしれません。しかし、倒産のリスクを考えておくことは経営者としては大切なこと。他人事と思わず、今後の経営に生かしていきましょう。

テイクアウト・デリバリーの導入

たとえ新型コロナウイルスの感染拡大が収束したとしても、コロナ前の生活様式には戻らないとの声があります。つまり、コロナ禍で確立したテイクアウト、デリバリー需要は高まったままであることが予想されるのです。

また、今回の新型コロナウイルス問題で、いつ経済が危機的状況に陥ってもおかしくないことがわかりました。どんな状況下でも生き残れるように、さまざまな販売方法を模索することは必要と言えるでしょう。

店内の消毒など衛生面に注意する

新型コロナウイルスはもちろん、O-157、ノロウイルスなど、飲食店にはさまざまなリスクがあります。お客様に安心してお店に足を運んでもらうためにも、衛生面の対策は徹底しましょう。

飲食店の倒産を防ぐためには定期的な経営の見直しが重要です

昨今の飲食店における倒産状況や倒産に至る理由、そして防止策について解説しました。
飲食店は時代の波に大きく影響を受けてしまうものですが、簡単に倒産してしまわないためにも、定期的な経営の見直しと強い基盤作りが必要です。

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この記事の監修


株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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