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カレー屋って儲かるの?|資金相談を経て融資のイメージに変化/夫婦営業の「あるある」話【最終回】

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出張料理人として全国でカレーを振る舞う傍ら、カレー教室の講師やカレー本の執筆、本格カレーを自宅で作れるスパイスセットの通販サービス「AIR SPICE」の代表など、多岐に渡る“カレー活動”で知られる水野仁輔さん。そんな水野さんが中心となり、「俺たち、カレー屋になるわ」という合言葉で集まったメンバーの中から、鹿島冬生さんが東京・戸越にカレー店「ストン」を開業することに。その中でcanaeruの融資相談を経て、融資のイメージが変わったという鹿島さん。その理由や、営業にまつわる色々なお話を伺います。

融資を受けるハードルは、思っていたよりも高くなかった

融資を受けるハードルは、思っていたよりも高くなかった

――開業準備をされている中で、canaeruを通じて資金相談をされたということですが、感想はいかがですか?
鹿島:率直な意見としては、公庫の融資ってすごくハードルが高いのかなって思っていたんだけど、ちゃんと段取りを踏めばそうでもないんだなって思いましたね。
水野:へぇ、そうなんだ。

――鹿島さんの場合、自己資金で開業準備をされているので今回は運転資金のご相談になりましたか?
鹿島:とりあえずは今のところ自己資金で進めてますね。
canaeru編集:そうですね、なので「運転資金は無いよりは有ったほうがいいですよ」というご提案となりました。
水野:例えば、お店を作るまでは自己資金で賄って、初期のランニング費用も3~4ヵ月先まではお客様が少なかったとしても回していけるだけの資金があったとするじゃないですか。それでも公庫からの融資って受けたほうがいいんですか?
canaeru編集:お金があることで、余裕が生まれ精神的な安心を得られるメリットがあると。
水野:あぁ~そうか。そういうことか。
canaeru編集:もしもですが、開店してからお客様が少ない、どうしようって気持ちになっても、資金が手元にあれば、しばらくの間は我慢ができ、内面は焦っていたとしても、笑顔でお客様を迎えられます。接客やサービス、お店の雰囲気などの点からも資金的な余裕はあった方がベターという説明でした。

――融資を受ける・受けないは性格にも左右されそうですね。融資を受けると返すプレッシャーもありますから。
水野:確かにそういうのもあるのかな。鹿島さんはローンとか組めるタイプですか?
鹿島:できればしたくないですよね。
水野:ローンって融資と近いじゃないですか。僕ね、ローンを組める人と組めない人がいると思っています。僕はね、ダメなんですよ。自己資金で、できる範囲で人生を楽しもうっていうタイプ。でも僕の弟は学生時代からローンが大好きなんですよ(笑)。月々返済しなきゃならないものがあるっていうのが、自分の生きる糧になると言っていました。全然わからないなと(笑)。でも、そういうタイプは、店を作ったり会社を設立したりして、先々にお金を返せるか見込めない状態であっても、これからのことに投資ができるタイプなんだと思う。ちょっとうらやましいですよね。自分にはできないから (笑)。

――資金があれば、想定よりももっと良いものを目指すこともできますよね。
水野:そうね。それもあるのかもしれない。でも、鹿島さんを見ていると、予算は少ないけど自分のイメージの中で最善を尽くして、できる範囲のことをやっているじゃないですか。僕は、もし鹿島さんがやりたいことを一切妥協せずにやれるだけのお金があったとして、それでお店が良くなるのかって考えるとそうじゃない気がするんですよ。このマインドこそ、投資できない人間のマインドなんですけど(笑)。僕は、ハードルがあるからこそ意外と良いものができるんじゃないのって自分を納得させて生きてきたから。そうじゃなくて、やっぱりお金をたくさん使ったら、それだけお客様も来るって思える人は化ける可能性が高いですよ。

――堅実派なのか、大胆な行動派なのかってところですね。
水野:そうそう。だから公庫の融資とかも、その辺のスタンスで変わると思うんですよね。で、借りることにしたんですか?
鹿島:いや、借りないです。
水野:ほら(笑)。やっぱりローンは組まないタイプですよね。
鹿島:でも何だろうな「お金を借りる」ってどこかマイナスのイメージがあったけれど、それはなくなったって話なんです。
水野:お金を回していく感覚が出始めたってことなのかな。僕が会社を立ち上げてみて意識が変わったのは、会社に入る売り上げや利益って自分のお金じゃないってことなんですよ。僕ひとりでやっている会社で、社長ひとりしかいないけど、僕のお金ではないわけです。この感覚は、やっぱりサラリーマンの時にはわからないんですよ。振り込まれた給料は自分のお金だけど、立ち上げた会社に残る資金は僕のお金ではないわけです。自分の懐に入るわけじゃないって感覚が最初は不思議だったけど、会社が必要としてるお金をどこかから借りて、会社を回して返していくっていうのは、そんなにネガティブなことじゃないんだなって今は思う。

――使わなければ返済すれば済む訳ですしね。
水野:あぁ、そっか。鹿島さんもお金を借りるというネガティブな認識が払拭されたって話だけど、きっかけはあったの?
鹿島:ハードルが思ったほど高くないんだなっていうのは大きいですよね。いざとなったら、何とかなるのかもって。
水野:確かにね。数々の審査を受けて、預金口座の残高を見せて、返済能力はどれだけあるのか、奥さんと子どものハンコまで必要……みたいな(笑)。ちょっとそういうイメージあったんだけどね。
canaeru編集:まずは提出する書類の項目を、きちんと書いて埋めていきましょう、という説明もありました。
水野:鹿島さんはお店の利益が残ったとき、お店をもう少しグレードアップするためにどう使おうかなって考える人だと感じますね。僕も「AIR SPICE」の事業を始めて出た利益は、次に「AIR SPICE」で面白いことをするときに使えるかなって考えるから、僕自身が会社の役員報酬として貰っている額は物凄く少ないんです。普段からお金を使いたいことがそんなにないし、良い車に乗りたいってこともないから、稼いだ分を次の投資に回すっていう感覚は会社をやってみて初めて出てきたかも。

夫婦で営業するお店の「あるある話」

夫婦で営業するお店の「あるある話」

――鹿島さんはご夫婦でお店をオープンされますね。レセプション後すぐに開店ですね!
鹿島:僕は1日でも早く開けたかった。だってお店を開けないとお金にならないから(笑)。奥さんは、きちんと準備をしてからでないとダメだって言っていてね。難しいところですよね。
水野:恐らくですが、最初の数週間とかはオペレーションが定まらなくて大変なんですよ。開けた直後は開店景気で人が集まるから結構忙しいし、混んでるし。お店側もオペレーションに慣れてないから、敢えて僕は行かないんですよね。オーナーによっては、最初は来てくれるなって人もいる。お店をオープンしても、最初のうちは本当に大変で納得のいく料理も出せないから、しばらくは来ないでください、と言う人もいる。だから、ある程度準備をしておかないと、最初の1週間から2週間の間に来たお客様から「全然料理が出てこないじゃないか!(怒)」ってなると嫌だよね。仲間内ならいいけど、普通なら「こんな店二度と来ない」って思われることもあるから難しいところですよね。

――そこをご夫婦の連携プレーで乗り越えられていくのかなと。
水野:まだ先の話だけど、調理場の中で夫婦喧嘩が始まって、お客様が「またやってるよ~」ってなるかも(笑)。これ、夫婦で経営するカレー屋さんの「あるある」だから(笑)。控えめに抑えている店と、構わず堂々とやる店があって、堂々とやる店は、それはそれでお店のキャラになったりするんだよね。「また始まったよ」っていうのが(笑)。

――「ストン」さんはどうなるでしょうか(笑)。
一同:(笑)。
水野:僕が知る中では、奥で料理を作ってる旦那さんは寡黙っていうパターンが多いですね。具体的に僕の好きだった店でいうと、高田馬場の「夢民(ムーミン)」とか、駒沢大学の「タイカリーピキヌー」とかは旦那さんが無口で、黙々と鍋の中だけを見てる。でも、奥さんはすごくフレンドリーでお客様の接客をしてるんだけど、厨房の中でふたりだけの会話になると「アレ?」って感じることがある(笑)。ひどい場合、前日の夜に店に関係ないことで夫婦喧嘩したりすると、翌日奥さんが店に来ないっていう(笑)。だから臨時休業になるの!お店が開けられないから。
鹿島:えぇ~、それは怖いな(笑)。
水野:これはもう、夫婦は仲良くしていただかないと(笑)。

――せっかくなので、お店に出す予定のカレーを作っていただきました。感想はいかがですか?
鹿島:キーマカレーとチキンカレーです。
水野:キーマはドライキーマ系でいいですね。
鹿島:キーマって油がすごく出るじゃないですか。それをどうしようか少し悩んでますね。
水野:(食べる)うん、美味い! 良いと思うけどな、油があってもこのまま出せば。だってその方が美味いし。
鹿島:しつこいって意見もあって。僕はちょっと油がある方が好きなんですけどね。
水野:それでいいと思うけどね。それで、苦手な人のために違うメニューを用意すればいいし。夜営業のときは、お酒は出すんでしたっけ?
鹿島:ビールだけ出します。
水野:ビール以外にもあったほうが良いと思うんだよね。ハイボールとか。多分ね、利益が出ますよ。
鹿島:それはね、よく言われるんですよ。

アルコール提供が利益に繋がるのは、原価・仕込み・ロスの低さ

アルコール提供が利益に繋がるのは、原価・仕込み・ロスの低さ

――ビールは飲まないけどハイボールは飲むって方もいますしね。
水野:そうそう。ハイボールはビールより利益率いいでしょ?絶対に。僕がオススメしたいのは、ウイスキーにスパイスを漬けこんだスパイスハイボール! 例えばカルダモン、クローブ、シナモンをウイスキーに1粒ずつ入れておくと、1ヵ月後にはものすごくスパイスフレーバーのウイスキーになるんですよ。注文があったらソーダで割って出せばいいだけだし、これはいいと思うんだよな~(笑)。

――でも鹿島さんは、お酒はあんまりお好きじゃないとか。
鹿島:そうなんですよ。だから味見ができなくて。だから、それを作っても美味しいかどうかがわからない。
水野:そこは、お客様に「どう?」って訊くとか。お客様の意見を訊きながらちょっとずつ配合が変わっていくウイスキーってことで(笑)。

――新しいメニューのアイデアが生まれましたね(笑)。
水野:飲食店をやっている人は、お酒は重要って言うでしょ。そこで利益を稼ぐからね、みんな。僕もフードトラックでカレーの販売を始めてみて思ったのは、仕込みのない飲食業ってすごいなって思ったんですよ。バーとかって仕込み時間ほぼゼロでしょ? 極端な話、バーテンがふらっと行けばもう「いらっしゃいませ」なんて、そんなの有り得ないですよ。僕らは何時間もかけてカレーを作って売るわけじゃないですか。それで仕入れのリスクもないでしょ? アルコールは何年も持つし、ロスも出にくい。仕入れ、在庫のリスクがなくて、処分もしなくていい。アルコール営業をしてる人たちも、それはそれで苦労があると思うけど、僕なんかは150~200食のカレーを作るときは、朝6時半に入って3時間で2種類作るんですよ。ふたりで作っても3時間はかかるんです。味を妥協しようと思えばいくらでも簡略化ができるけど、自分の中でこのくらいはキープしたいっていうのを決めてるから。バーはその3時間がいらないからすごいよね。そういうことに関心が高まるようになりましたね。

「巻き込み型」の僕としては、日本と世界を飛び回りたい

――そんな水野さんの2018年のご予定はいかがですか?
水野:「AIR SPICE」自体は事業を拡大するとか、一気に拡販するって気持ちは全然なくて、ああいうものを求めている人に少しずつでも届けばいいなと思っているので、「AIR SPICE」で何かをしようとはそんなに思ってないです。僕自身はちょっとインプットが足りてないなって思っていて、去年はバタバタと忙しすぎたので、仕事の量を減らして、その分できるだけ世界各国を周りたいです。世界中にスパイス料理があるので、そういうものを食べに行ったりとか、時々「AIR SPICE」を持ってイベントをやりながらとにかく世界中、そして日本国内あちこちを回って、カレーを作ったり、スパイス料理を勉強したいって気持ちがあります。

――スパイス料理というのはカレーに限らずですか?
水野:そうですね、カレーに限らずです。その辺りが僕の「AIR SPICE」を始めたきっかけかもしれないです。「AIR SPICE」の主力はカレーを作るスパイスキットだけど、今もちょこちょことタンドリーチキンのセットとか、カレー以外のスパイス料理キットも出しているんですよ。世界各国のスパイスの使われ方とか、そういうことに自分は関心がありますね。あとは、「AIR SPICE」みたいなものを面白がってくれるお客様とできるだけピンポイントに知り合いたいって想いがあって、「面白い!」って思ってくれる人がいたらそこまで行きます!って感じです。去年、すごく面白いと思ったのは、ニューヨークで「AIR SPICE」のカレーを作るイベントを手伝ってくれた人が、「「AIR SPICE」を買いたいんですが、ニューヨークには送ってもらえないですよね?」って言ってくれて。さすがに国際便で海外には送ったことがなく(笑)。何人かいらっしゃったんでなんとか考えますって答えたんですけど、結局日本にいる友達にまとめて買ってもらうことになったらしいんですよ。そういう人に出会えるのが嬉しいんですよ。今決まっている予定では3月に高知、5月は鹿児島にイベントで呼ばれているんですね。2月にはインドとスリランカに行く予定なんですよ。だから、奇数月は国内出張、偶数月は海外出張に行こうかなと。

――では、今年は水野さんが自費出版されている料理旅本『チャローインディア』も出る予定ですか?
水野:出ます!(笑) 僕は、それを今年のノルマにしようかなと。スパイス料理って世界中にあるんですよ。今、」僕が一番行きたいのはジャマイカで、イギリスから渡ってきたカレーパウダーを使った“カリーゴート”っていう料理があるんですって。“ゴート”っていうのはヤギのことで、要はヤギのカレー煮込みなんです。これはジャマイカ人のソウルフードなんですよ。みんなが好きな料理らしいんですよね。僕はイギリスから渡ってきたカレーパウダーで新しく生まれた料理を実際に行って食べてみたいし、そういうものが各国にあるんですね。イギリスからカレー粉が渡った国は世界中にあって、カナダや南米、アフリカ、オーストラリアと、渡った先で新しいカレー料理が生まれているはずなんですよ。それを隈なく周りたいです。

――日本のカレーライスもイギリスのカレー粉から生まれたものですよね?
水野:そうそう。だから、兄弟を探しに行きたいわけです(笑)。僕は東京でバタバタと忙しい仕事の日々を過ごすよりは、できるだけたくさん動いて自分のインプットに充てる時間を増やしていきたいなと思います。その方がたくさんの人に会えるし、“巻き込み型”の僕としては、できるだけ動いた方がみんなを巻き込んでいけるから。

――そのインプットしたものが新しい書籍や商品にアウトプットされていくんですね。おふたりとも今年はとても忙しくなりそうです。お話をいただき、ありがとうございました!

水野仁輔
株式会社エアスパイス代表取締役。「AIR SPICE」を立ち上げ、コンセプト、商品、レシピ開発のすべてを手がける。1999年に立ち上げた「東京カリ~番長」名義で全国各地へ出張し、これまで1,000回を超えるライブクッキングを実施。カレースター(糸井重里さんが命名)として、ほぼ日刊イトイ新聞が運営しているカレー関連プロジェクトを実施。カレーやスパイスに関する著書は40冊以上。
http://www.airspice.jp/

鹿島冬生
東京・戸越に2017年12月、カレーとコーヒーの店「ストン」をオープンしたオーナー。インテリア全般に関わるお仕事を20年以上続けた元サラリーマン。カレー屋を志望する人や「儲かるカレー屋」をやるにはどうしたらいいかという問いを、それぞれの立ち位置で考えたり実践したりしてる「DADA Curry Project」のメンバー。
http://www.plaything.jp/
https://www.facebook.com/ston.tokyo/

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