新たにテイクアウト営業を検討している飲食店の皆様に向けて、営業許可の可否や食品表示、軽減税率についてなど気になる点をご紹介。近年、目にすることも増えたテイクアウト営業。新規利用客の獲得にも繋がり、販売開始以来、利益が増えたお店も。新たにテイクアウト営業を行う際の注意点、ポイントをチェックしておきましょう。
テイクアウトを始めるのに原則許可や手続きは不要
飲食店では、開業する際に保健所より「飲食店営業許可」を得ています。テイクアウト販売を始める場合、店で提供しているメニューをそのままテイクアウトメニューとして販売するのであれば、原則、「飲食店営業許可」の範囲内とみなされます。よって、新たに申請や手続きをする必要はありません。
【例外】テイクアウト販売に新たな許可や手続きが必要なケース
原則、お店で提供しているメニューをそのままテイクアウト販売する場合は新たな申請や手続きは不要。しかし、食肉製品、パン、漬物、菓子、アイスクリーム、生麺、お酒等のテイクアウト販売を行う際は新たに許可や申請が必要です。テイクアウト販売において不明点がある場合は予め管轄の保健所に確認しておきましょう。
テイクアウト販売を始めるのに必要な準備とは?
テイクアウト販売は基本的に店内で提供しているものを販売しますが、容器の準備やメニュー、価格の設定など新たな準備が必要なこともあります。それぞれのポイントをご紹介します。

メニューを決める
テイクアウトメニューは持ち運びを前提に考える必要があります。店内提供とは異なり、提供してから食べ始めるまで時間がかかるため、冷めても美味しく、持ち運びのしやすい料理であることが求められます。
また、利用客をなるべく待たせないよう素早い提供ができるメニューであることもポイント。加えて、食中毒のリスクを避けるメニューであることも必須条件。夏場の生ものなど、季節によっては痛みやすい食材もありますのでメニューの改良は常に考えておきましょう。
容器等の購入
テイクアウトメニューの提供には料理を持ち帰ってもらうための容器、割り箸、おしぼりが必要です。複数の料理を詰め合わせる場合は、味が混ざらないよう仕切りのある容器を選ぶなど、提供するメニューにふさわしい容器を選ぶことが大切。また、利用客が持ち帰る際に料理がこぼれないよう蓋がしっかりしているものを選ぶ配慮も忘れてはいけません。
容器は大きさや機能性によって値段が異なりますが、できるだけ値段を抑え利益を圧迫しないようにする必要もあります。
価格を決める
利用客はテイクアウトメニューに手軽さや割安さを求める傾向にあります。しかし、低く価格設定をすれば、当然、売り上げは思うようには伸びません。さらに、テイクアウトには店内提供に比べ容器コストなどがかかってきます。追加コストを加味した上で慎重に価格を決める必要があります。価格を下げる分、量を少し減らす調整をするなどの工夫も必要かもしれません。
消費税率を変更する
飲食店での店内での飲食の場合、消費税として10%の税率が課せられています。一方で、テイクアウト販売には軽減税率が適用されており、消費税率は8%。今まで店内飲食しか提供していなかった飲食店は、テイクアウトのお会計時に税率8%で精算ができるよう、レジのシステムの変更をする必要があります。また、消費税の納税義務がある「課税事業者」に当たる場合、税率区分を記載した請求書の発行や区分を整理した帳簿づけが必須になります。
消費期限、保存方法を決定
店内飲食と異なり、テイクアウト販売では、提供してから利用客が食べるまで時間がかかります。常温で長時間放置されると菌が繁殖して食中毒が発生するリスクがあるため、消費期限や保存方法にはより気を配る必要があります。消費期限や保存方法は利用客がいつでも確認できるよう、容器に記載、またはシールを貼るなどの工夫をして安全性に配慮しましょう。また、必要であれば保冷剤などの用意も。
テイクアウト販売時に気をつけるポイントとは?
テイクアウト販売を行う際には、店内提供時とは違った配慮が求められます。テイクアウト販売を行う際には次のようなポイントに気をつけましょう。
衛生管理を徹底する
テイクアウトは店内での飲食提供に比べて、調理してから利用客が食べるまでの時間が長くなることがほとんど。そのため、食品が傷んだり、菌が発生したりして食中毒が発生するリスクが高まります。テイクアウト販売を行う際は、店内提供時以上に食品の衛生管理に気を配りましょう。
食中毒予防の3原則は「つけない」「ふやさない」「やっつける」。そのため、調理に使用する器具や調理者の洗浄消毒を徹底して菌を付着させないことが大切です。また、菌が繁殖しやすい20℃〜50℃の温度帯での長時間放置はせず、10℃以下もしくは65℃以上で温度管理をしましょう。加えて、加熱が必要な食材は中心部までしっかりと加熱して、菌を死滅させるようにしておきましょう。
検食の保存をする
お弁当や仕出しは検食の保存が義務付けられています。検食は、食中毒等が発生した場合に発生原因を究明するために、使用した食材や提供した調理済み食品の検査を行うことを目的としています。弁当等メニュー単位で50グラム程度ずつ2週間冷凍保存しておきましょう。
消費期限や原材料名の食品表示について
基本的に、店内で提供している料理をテイクアウト用に販売する際は消費期限や内容量、原材料名の記載・表示義務はありません。しかし食中毒の回避やアレルギーへの配慮も考え、消費期限や保存方法、アレルギーリスクの高い食材の表示をシールなどで行うのがオススメ。
一方、製造・加工食品を仕入れて直接販売する場合やセントラルキッチンなどで調理されたものを販売する場合は表示義務があるので注意しましょう。
テイクアウトを始めたら告知をしよう
テイクアウト販売を始めても、お客様に認知されなければ意味がありません。お客様の目に触れるよう店内や店外にPOPや看板を設置して積極的にテイクアウト販売をアピールしましょう。特に今はSNS等を使っての告知が有効的で、広くお客様に知ってもらえる可能性があります。また、予算があれば、チラシを刷って、近隣住民に向けてポスティングをするのも販売促進に効果的。
テイクアウト販売は新規利用客・売り上げ増加の獲得のチャンス!
店舗営業と並行して、テイクアウト販売を開始するお店が増加。テイクアウト用の容器などを準備する必要はありますが、新たな許可や手続きは不要なので比較的簡単に始められるのも魅力の一つ。また、購入方法が手軽なことから、新規利用客を獲得するチャンスにも繋がります。ただし、店内提供以上に衛生管理に配慮する必要も。
新たにテイクアウト営業を検討する場合は、ポイントを抑えてしっかりとした準備を行いましょう!
文/canaeru編集部