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食中毒を起こさない5つのポイントとテイクアウトの食中毒対策

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飲食店を経営するうえで、最も気を付けなければならないのが衛生管理。
中でも、店の信用をすべて失いかねない食中毒の集団発生は、絶対に回避したいものです。

また、新型コロナウイルス感染防止の影響で、一気に拡大した飲食のテイクアウト販売。
夏場は、食中毒への注意も重要です。
食中毒の基本知識を押さえて、徹底した予防対策をとる必要があります。

もし、食中毒を出せば経営への影響はもちろん、閉店に追い込まれる事例も多くあります。
その危機感をもって、食中毒対策を実施していかなければなりません。

食中毒による経営への打撃とは?

厚生労働省の調べによると、平成28年度の食中毒の発生件数は1,139件。
患者数は2万252人にのぼり、14人の死者が出ました。

飲食店で発生した場合、一般的には3日ほどの営業停止処分を受け、食中毒の感染源の調査が行われ、被害があまりにも深刻なようであれば、無期限の営業禁止処分が課せられる可能性もあります。
また、処分が軽くて済んだとしても、一旦、食中毒の集団発生が認められると、「不衛生」「管理が行き届いていない」「また起きるのでは?」というイメージが付いてしまい、客足に影響が出てしまう恐れがあります。
食中毒の発生が、いかに経営に大きな打撃を与えるか、経営者なら常に意識して予防を心がけたいものです。

食中毒の原因って何?

食中毒を発症させる菌にはさまざま種類があります。
大きく分けて、細菌、ウイルス、自然毒、化学物質、寄生虫などがあり、感染媒介も異なります。

食中毒を引き起こす主な細菌

人や動物の腸内、また、魚類や卵など広範囲に生息している「サルモネラ菌」は、生肉の調理や、自家製マヨネーズなどの調理段階で発生する危険があります。
アジ、イカ、アカガイなど、近海に生息する魚介類に付着する菌は「腸炎ビブリオ」。汚染された刺身や寿司を食べることで感染します。
「病原性大腸菌」は、文字通り大腸菌の中でも病原性を持つ菌のことを指し、人や動物の腸内に生息して、人から人へと感染します。
「O157」もその一種で、「ベロ毒素」という毒素をもち、病原性大腸菌の中で最も毒性が強いタイプといわれています。
「O157」が牛のレバーから検出されたことから、平成24年より牛レバーの生食用としての販売・提供は禁止されました。
一方、発生件数が多いのは「カンピロバクター」と呼ばれる細菌。
ニワトリや牛が保菌しているもので、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏のたたきなどの生・半生の料理が原因となります。
そのほかにも「黄色ブドウ球菌」「ウエルシュ菌」「ボツリヌス菌」などがあります。

細菌以外の食中毒

食中毒の年間発生原因の約半分を占めているといわれているのが「ノロウイルス」。
急性胃腸炎を引き起こす、ウイルス性の感染症です。
調理者を通じた、食品の二次感染によって発生するケースが多く、感染力が強いので、飲食店は特に気を付けたい食中毒です。

また、自然の食材の中にも、二枚貝のように体内に毒素を蓄積するものがあります。
よく発症するものとしてはカキが知られていますが、ホタテガイやアサリなども原因になることがあります。
寄生虫では、アニキサスによる食中毒が増えています。
アニキサスとは線虫の一種で、その幼虫が寄生したサバ、イワシ、カツオなどの魚介類を食べることによって、発症します。

食中毒を起こさないための5つのポイント

食中毒を防ぐには、菌が繁殖する環境を作らないことが肝心。その主なポイント5つをご紹介します。

室温で放置はNG

「適度な温度」と「無酸素状態」は、食中毒菌が最も好む環境です。
飲食店では、前日から仕込んで大量に食材を調理することがありますが、こうした食材の内部は酸素が少なくなり、細菌が発生しやすい状態になります。
細菌は熱に弱く、60 ℃で10分程度火を加えれば死滅するとされていますが、その芽胞は加熱調理後も生き残ります。
加熱した料理でも、室温で放置することは避けましょう。
作り置きする場合は速やかに15℃以下に冷却し、冷蔵・冷凍保存をしてください。
真空パック食品も、一見、常温保存が利くよう見えますが、実際は冷蔵保存が必要なこともよくありますので、表示を確認するようにしましょう。
さらに、お客さんに提供する前には、改めて十分に加熱することが大切です。

徹底した保存管理で繁殖を防ぐ

冷蔵・冷凍をしても、温度管理が適切でなければ意味がありません。
できる限り食材を低温保存して、菌の繁殖を防ぎましょう。
冷蔵庫は5℃以下、冷凍庫はマイナス18℃以下が基本です。
温かい状態での保存は、食材の中心温度が常に65℃以上になるように、加熱・保温します。
また、冷凍食材は、解凍の方法に注意しましょう。
温水解凍は、菌の増殖を招くことがあるので避けてください。

食中毒菌は加熱で退治!

前述の通り、食中毒菌の多くは熱に弱く、65℃以上で10分程加熱すれば死滅しますので、加熱は予防策の基本になります。
ただ、失敗しがちなのが厚みのある食材や冷凍食品。
外側が熱くなっていても、芯の部分まできちんと火が通っていないことがよくありますので、食品用のデジタル芯温計などを活用し、確実に加熱するようにしましょう。
なお、O157の場合は、75℃以上で1分間以上が目安となります。

手や調理器具、設備は清潔に

食中毒菌は、二次汚染で広がることもよくあります。
汚染された食品を切ったまな板や包丁、あるいは人の手が媒介となるケースです。
対策としては、肉、魚介類、野菜などの食材別に専用の調理器具を用意すること、下処理用と加熱済みの食材には、同じ器具を使わないことが挙げられます。
また、飲食店なら当たり前なことですが、食材を扱う手は、十分に洗浄し、消毒することを心がけましょう。
複数の従業員が触るドアのノブ、食器棚や冷蔵庫の取っ手なども、定期的に消毒を行ってください。

食材の保存方法には要注意!

仕入れ値との兼ね合いもありますが、まずは新鮮な食材を仕入れるように心がけましょう。
特に寄生虫が付きやすい食材は、吟味して選ぶようにしてください。
魚は仕入れた後、すぐに内臓を取り除き、肝などを生で提供しないようにしましょう。
寄生虫のアニサキスの幼生は目で見えますので、徹底して取り除いてください。
酢漬けや塩漬けといった保存方法や、殺菌性があるとされるワサビなどでも寄生虫は死滅しませんので、注意が必要です。

テイクアウト販売における食中毒対策

飲食をテイクアウトする場合、お客様が「持ち帰る」時間も食べ物の品質を担保する必要があります。
基本的な対策は前述した5つのポイントと同じです。

鮮魚介類等の生ものの提供は避け、加熱する食品は中心部まで十分に加熱するなど、追加の配慮をします。
調理をしてから販売するまでの保管は、食中毒の菌が繁殖しないよう当然ですすが室温などが低いところで保管します。
また、お客様にはできるだけ速やかに食べていただくよう、シールなどを容器い添付するなどして情報提供をします。

可能であればテイクアウト用のメニューを作り、抜本的に食中毒が起きないようにすることも大事です。

飲食テイクアウトの食中毒対策、衛生管理については自治体などのホームページに専門的なことが掲載されています。
保管温度や、自治体によって販売に許可が必要なものもあります。

もし、食中毒を起こしてしまったら?

食中毒が起きた場合、店はどうなってしまうのでしょう?
具体的な流れと、お客様に対するフォローの方法をまとめました。

保健所の調査とは?

食品衛生法に基づいて、中毒の患者、あるいはその疑いのある患者を発見した医師は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出なければならない義務があります。
その後、保健所の職員による患者や医師への聞き取り調査を経て、原因施設、原因食品、原因物質などが特定されます。
原因施設が飲食店であった場合はその旨の通達があり、営業停止・禁止の処分、原因食品の回収、調理場の消毒や従業員に対する教育指導などが行われます。

お客様に対して補償はどうすればいい?

当然のことながら、食中毒になったお客様からはクレームが入ることが予想されます。
保健所から正式に認定された場合、飲食代金と病院にかかった場合の医療費は、原因施設である飲食店が持つと法律で定められています。
なかには、食中毒で会社に行けなかったときの休業補償や、病院までの交通費などまで請求してくるお客様もいるので、どこまで支払うかは話し合い次第。
SNSなどによるイメージダウンの風評被害に遭わないよう、誠意を持って対応しましょう。

食中毒は人災?

食中毒を発生させてしまった飲食店は、廃業に追い込まれることが多いことは否めません。
だからこそ、「食中毒を発生させない」ということが大事であることは、言うまでもありません。

食中毒を発生させないように、細菌の種類や食品の保存・調理方法などを説明しましたが、「食中毒は人災」という専門家もいます。
これは、お店として、食中毒というリスクに対して、どれくらい対応しているか…という経営の問題である、ということです。
「食中毒を出したら廃業」ということを念頭に置いて、経営者はもちろん、すべての従業員が同じレベルで食中毒に注意していく姿勢が必要なのです。

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この記事の監修
株式会社USEN/canaeru 開業コンサルタント

○会社事業内容
IoTプラットフォーム事業・音楽配信事業・エネルギー事業・保険事業・店舗開業支援事業・店舗運用支援事業・店舗通販事業。

○canaeru 開業コンサルタント
銀行出身者、日本政策金融公庫出身者、不動産業界出身者、元飲食店オーナーを中心に構成された店舗開業のプロフェッショナル集団。
開業資金に関する相談、物件探し、事業計画書の作成やその他の店舗開業における課題の解決に取り組む。

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