飲食店テイクアウトは定着したか?
新型コロナウィルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言、外出自粛要請によって、飲食のテイクアウトは急激に浸透しました。
2020年5月現在、飲食のテイクアウトはもはや「当たり前の販路」と言う専門家やメディアなどもあります。
事実上、たった1ヶ月で新たな事業ソリューションが浸透するのは珍しいのを通り越して、奇跡的と言っても過言ではないでしょう。
現在、飲食店を経営しているならば、テイクアウトはもう必須。
これから飲食店を開業するにしても、テイクアウトでの販売も導入すべきと言えます。
違う見方をすれば、テイクアウトを導入しなければ、商売のチャンスを逃していると言えます。
では、具体的に「飲食のテイクアウト販売をするための準備」を見ていきましょう。
飲食店テイクアウトの許可は必要か?
すでに飲食店を営業している場合、追加で特別な許可は必要ありません。
新規にテイクアウトの専門店としてオープンする場合は、通常の飲食店開業と同じ保健所からの営業許可と食品衛生責任者資格が必要になります。
アルコールを提供しているお店の場合、お酒をテイクアウトする場合には別途許可が必要で、これにはかなり細かい規定があるのと同時に取得はなかなかハードルが高いです。
テイクアウトの販売に店先の道路を活用できる
飲食店の店先の道路を、テイクアウト用のお弁当販売やテラス席の設置などに活用できるように、道路の占用許可の基準が緩和されることが国土交通省より発表されました。
2020年11月までの特例です。
許可は個別のお店ごとに申請するのではなく、自治体や地域の団体として申請し新型コロナの感染防止対策を目的とした場合に限ります。
一時的とはいえ、販売できる領域が増えることは売上増に寄与します。
詳細は国土交通省のサイトを確認してください。
注意すべき飲食店のお酒テイクアウト
店内でお酒・アルコール類を提供している場合、お酒のテイクアウトには注意が必要です。
簡単に言えば、飲食店で提供しているお酒は、簡単にテイクアウト販売することができません。
お酒を販売する場合、
「酒類販売業免許」
という免許が必要になります。
この酒類販売業免許、個人の飲食店が開業の際に取得しているケースはなかなかありません。
なぜなら、取得するのがなかなか困難な免許のため、飲食店では取得しないのが通例です。
飲食店は酒類販売免許を持っていないですが、お酒を店内飲食のメニューとして提供すること自体は問題ありません。
ポイントは、封を切っていないボトルやビンを販売すること。
封を切らずに提供すると「お酒の販売」となり、違反をすれば1年以下の懲役または50万以下の罰金」を課せられることになります。
もちろん、どうしてもテイクアウト販売をしたい場合は、これからでもその免許を取得すれば販売できます。
今後、飲食のテイクアウトが定着していけば、持っていれば損になることはないでしょう。
テイクアウトで提供するメニューの考え方
テイクアウトをはじめるに当たって、「テイクアウト用のメニューを新たに作るべきか?」というような質問が、canaeruの開業サポートに寄せられているのですが、canaeruからの答えは「不要」。
理由は
●今はメニュー開発より「いち早く」テイクアウトを開始した方がよい
●テイクアウト用メニューを導入することによって新たな食材仕入れによる経費増
があげられます。
店内で提供しているメニューをそのままテイクアウトにするか、組み合わせの変更などによってテイクアウトメニューとするのがベスト。
例えば、
●定食的なセットメニューを提供しいているのであれば、テイクアウトハードルの高い「汁もの」を除いて、多少安価の価格設定にする
●揚げ物 + サラダ でお弁当型にする
などでテイクアウトメニューにするのがオススメです。
テイクアウトのために、店内飲食では提供していない「どんぶりもの」などを新規に作ろうとすると、どんぶりメニューのための食材が必要になったりするケースもあります。
何より、その新メニューの味は「突貫」で作ったものであり担保しづらい懸念もあります。
テイクアウトをはじめるに際して、テイクアウトメニューに絶対必要なことは
「お店と同じ味」
です。
冷めたりして全くの同じ味が出ないのは、食べる側には分かります。
「冷めてもおいしい」ものは「冷めてもおいしい」。
消費者はテイクアウトだからと言って「味が落ちても仕方ない」とは絶対に思いません。
少しでも味が落ちば、SNSに書き込みされて評判を落とすこともあります。
逆に、「冷めてもおいしい」となれば、それをネットに拡散してくれる消費者も。
テイクアウトを始めるのに必要なもの…それは「容器」
テイクアウトを始めるのに必要なものは「容器」です。
最近のテイクアウト容器はとても発達しており、冷めづらいものを始め、品質の劣化を防ぐもの、環境に配慮したもの、量産型でも見た目を重視したものさまざざまです。
どんぶり型
しっかりと深さがあり、どっしりとした印象のどんぶり型弁当容器。
質より量を重視する男性にはダントツで人気のある弁当容器です。最近は中身が美味しそうに見える黒い容器の需要が高いようです。
弁当容器の色を変えただけで、売上げがアップしたという飲食店もあるそうなので、店側にとっては弁当容器の色選びも重要なポイントになります。
紙BOX
流行に敏感な若者にウケがいいのが、この紙製のボックス型の弁当容器。
多くの飲食店、特にカフェやデリで採用されています。フタと一体化したもの、あらかじめ折り目がつけられた組み立て式のものなど、いろいろなタイプがあり、最近では100円ショップなどでも販売されるほどポピュラーな弁当容器となりました。
また、別売りのフタがいらないというのも、店側にとっては大きなメリットです。ボックス型の弁当容器の中でも特に女性からの人気が高いのが、持ち手付きの四角い紙のボックスです。
ごはんの上にハンバーグや目玉焼きをのせたロコモコ丼や、細かく刻んだ生野菜とひき肉を乗せたタコライスなど、“カフェ飯”との相性もよく、従来の丸いどんぶり型の弁当容器に入れるよりもオシャレで見栄えがいいのがポイントです。
カレー容器
カレーは和食店でも洋食店でもランチタイムの定番メニューです。
混み合う時間帯でも作り置きが可能なので、比較的対応しやすいメニューであり、ランチタイムはカレーのみにしぼって提供する飲食店もあります。
カレーの場合、弁当容器の大きさ次第で提供できる個数も大幅に変わってきます。
メインの客層は男性客なのか?あるいは女性客を増やしたいのか?など、店のイメージや方向性を意識しつつ容器のサイズを選ぶ必要があります。
男性客メインであれば、ご飯をいれるスペースが大きいものを、女性客メインならばコンパクトでオシャレな弁当容器を用意して対応しましょう。
汁漏れせず、しっかりとフタが閉まる容器を選ぶことも肝心です。
天重容器
うな重、天重、かつ重などに最適です。
定番メニューですが「どんぶり」に比べ、ご飯の量が少ない「お重」のスタイルは、量より質が期待されます。
質を重視して食材を選ぶのならば、弁当容器にもこだわりを見せたいもの。
また、この天重容器は、別売りのフタをしたあとに、上から「掛け紙」で包むことで見栄えがよくなり、高級感を演出できます。
仕切りあり容器
コンビニやまちのお弁当屋さんで使われている、オーソドックスな弁当容器がこのタイプ。
弁当容器の半分にご飯を詰めるスペースがあり、残り半分を主菜や副菜のスペースとして仕切った容器です。
ある程度深さのある弁当容器や、黒、赤など、料理の見栄えがよくなるよう着色された弁当容器も豊富に売られています。
また、保温性重視の発泡素材のもの、レンジ対応のもの、仕出し用に絵付けされたもの等、弁当容器の素材もさまざまです。
仕切りなし容器
仕切りのない弁当容器も多数のバリエーションがあります。
お祭りの屋台や、スーパーの惣菜コーナーで利用されている透明容器もそのひとつ。
密閉性がないため、汁気の多い食品には不向きですが、素材も薄くて軽く、積み重ねることが可能なため、保管場所にも困りません。
また、フタと一体化しているものであれば輪ゴムさえあれば、別売りのフタを用意する必要もなく、コストが抑えられる点も魅力です。仕切りのない弁当容器としてポピュラーなのが、角型や円形のトレータイプの弁当容器。
コンビニのパスタなどが入っている容器がそれに当たります。
メイン1品にトッピング少々というようなメニューならば、このトレータイプの弁当容器が扱いやすいです。
竹皮箱
竹の皮で出来た昔ながらの弁当容器。竹の皮を編んだもの、重ねて強度を出したものなどがあり、軽さが魅力です。
また、竹の皮は通気・吸湿にすぐれ、殺菌作用もあるので、古くからおにぎりやちょっとしたおかずを包む、包装材料として使われてきました。
あたたかみのある雰囲気は、自然素材ならでは。竹皮の弁当容器は木を曲げて作る「わっぱ」や、木を薄くスライスして作った「経木」とともに人気があります。
オードブル容器
パーティーやお花見などに欠かせないオードブル料理。
オードブル容器はいろいろなシーンや人数に対応できるよう、サイズもさまざまで、種類も豊富です。細かく仕切りがあるもの、中央にメインを盛り付けるスペースがあるもの、傾斜をつけて立体感を出したものなどがあります。
各容器の特徴をふまえ、料理がより華やかに見える容器を選びましょう。
テイクアウト容器の代替の値段も調べてみました。
標準的なサイズの各弁当・テイクアウト容器を例に、テイクアウトの際に必要なカトラリー(スプーン・フォーク・割り箸類)やおしぼりの単価とあわせてチェックします。
●仕切りあり容器
180円~350円
*フタ別
●仕切りなし容器
100円~250円
*フタ別
●竹皮箱
130円~150円
●紙BOX
100円~250円
●どんぶり型
130円~150円
*フタ別
●カレー容器
200円~300円
*フタ別
●天重容器
250円~300円
*フタ別
●オードブル容器
300円~500円
*フタ別
●スプーン・フォーク
2円~5円
●割り箸
1円~3円
*袋なし
●おしぼり
3円~5円
※すべて1点あたりの価格
※発注する数が多いほど単価は下がる傾向
※canaeru調べ
テイクアウト容器を入れるためのレジ袋が有料化!
テイクアウト販売に必要となる様々なテイクアウト容器について紹介してきましたが、その容器を入れるためのプラスチック製レジ袋が2020年7月1日より全国で有料化となりました。
プラスチック製買い物袋を扱う小売業を営む全ての事業者が対象となり、そこにはもちろんテイクアウト販売を行う飲食店も含まれます。
有料化の対象となるのは、持ち手のついたプラスチック製レジ袋で、持ち手のないビニール袋や環境性能が認められ、その旨の表示があるレジ袋については対象外となります。
【対象外となるプラスチック製レジ袋】
・プラスチックのフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの
・海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの
・バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
価格は意外にも事業者自ら設定することができるのは嬉しいが、1枚当たりの価格が1円未満になるような価格設定は有料化に当たらない等、少し細かい規定があるので、注意が必要。
詳細は国土交通省のサイトを確認してください。
飲食店テイクアウトのためのコストと経営戦略
テイクアウトをはじめるために必要な容器とメニューの考え方について見てきました。
テイクアウトを実施すればコストが発生します。
最後に、この「テイクアウトのコスト」の経営戦略についてまとめます。
テイクアウトでの商売について「店内飲食 + α」と考えず、粗くてもよいので売上計画を持ちましょう。
その「テイクアウトの売上予測」に対して、テイクアウト容器などのコストを
・販促費(集客費用、宣伝費用)
・これから開業する人ならば家賃
の代替と考えます。
そうすれば、テイクアウト容器に掛かるコストを、ただの「追加コスト」とせずに済むのです。
特に後者、これから新規に飲食店を開業する人であれば、例えばテイクアウトでの売上を店内と50%づつ、つまり半分と見積もった場合、想定していた席数・坪数よりも少ない条件の物件で営業しても同じ売上が見込めるのです。
減った家賃分をテイクアウトのコストに回せば、テイクアウト容器などは追加コストでは無くなるのです。
取材・執筆/canaeru編集部
監修/canaeru開業サポート
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